第18話失意のどん底から

 ぼーーーーーー。


 俺はベットから外を眺めていた。


 コン コン


「……………」


 コン コン


 俺から返事がなかった為、もう1度ドアがノックされた。


「………入れ」

「失礼致します」


 白髪混じりの髪の執事長のディオールが部屋に入ってきて、テーブルに少ししか量が減ってない朝食を見て、ガックリと肩を落とした。


「ガルフォン様。せめて半分ほどでもお召し上がりになりませんと…」

「……………」

「……ご無礼を承知で申し上げますっ。私も旦那様が18歳の時から仕えさせて頂いてる身です。ガルフォン様が旦那様と奥様を亡くされてお辛いのは分かります」

「……………」

「ですがこのままではリディエール公爵家はっ、ガルジェダ様にっ!」


 ディオールの口はパクパク動くだけでその先は言葉にならなかったが、俺にはその先に続く言葉セリフが想像出来た。


(きっと『』だろうな。

がどうの』とかって言っていた気がするけど…、ディオールは昔からとお父様が言っていた)


(お父様とお母様が亡くなって1ヶ月も部屋に閉じ籠っている俺よりは叔父様が相応しいと思うんだけどな…)



 この時の俺は【オーラ】がどういったモノかも知らなかったから、ディオールの瞳からがどう見えているかも全く気にならなかった。




 コン コン ガチャ


「兄さまー。ご機嫌どう?」


 弟のガルダが湯気が立ってる真っ白なマグカップを持って部屋に入って、俺の近くへやって来た。


「はい。兄さまが大好きなハチミツがたっぷり入ったホットミルクだよ!」


 そう言うと俺にマグカップを差し出した。


「兄さま。ガルダがね。父さまと母さまの分もずっと兄さまの側に居るからね。早く元気になって」


 両親が亡くなった直後は泣き喚いて大変だったガルダが現在いまではすっかり立ち直っている姿を見て俺は…。


「ガルダは強いな」


 俺はまだ弱いな。


 でも、いつまでもこのままじゃダメだな。俺も早く両親ふたりの死を受け入れないと。


「兄さま?」


 俺は久しぶりにガルダの頭を撫でた。


「うっ、うわ~ん。やっと兄さまが笑ったよー」


 ガルダはぽろぽろと泣き出した。


「ガルダっ!?」

「うっうっ、兄さままでいなくなったら、どうしようかと思ったー」


 ガルダは次から次へと零れる涙を手で拭いながら俺にしがみついた。


「あっ!」


 俺はこの時やっと分かった。ガルダは強いんじゃない。まで失うと思ってだけだった。


 俺だって弱いのに、まだ15歳の弟ガルダも弱くて当たり前だった。


「ごめん。ごめんね」

「兄さま」


 俺はギュッとガルダを抱き締めた。


「ごめん。ガルダ」

「兄さまぁ、うっうっ」


(ガルダの為にも叔父様ともこれから先の事リディエール家について話し合わないとな)


 そう決心した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る