第21話 ねじれた感情
『ちょっとアイビー!! どうしてあんなこと勝手に決めたのよっ!?』
英語の授業中であるにもかかわらず、あたしはアイビーに頭の中で話しかけた。
『当然の権利だろ? あいつらどうせ、おまえに無理やりふでばこ買わされたとかって親に泣きつくのは目に見えてるよな? だから、こういう結論に達した。なんならヤヨイも呼んだ方が一方的にならなくていい』
ああもう、どうしてそう極端に考えるかなぁ? ママだって仕事でいそがしいってのに。
だけど、アイビーの言葉にも一理ある。その辺はやっぱり、大人にたすけてもらわなくちゃダメなやつだ。
あたしはしぶしぶうなずいた。
『まったく。いつのまにか親衛隊なんてできてるし、王子キャラが定着しつつあるし。これ以上目立つことはしないでよ? あたし、もう巻き込まれたくない』
たった一日でこの変化だもん。これ以上なにかあったら、あたしの心が壊れちゃうよ。
『それより、黒羽根の天使は見つかったの?』
ゆうべの夢の中に出てきた子の面影を思い出すと、ぶるっと身震いした。
たぶんおなじ年くらいの子だと思うけれど、おなじ学校に通っているとはかぎらない。
『それなんだけどな。守護天使はそっちこっちに見えるんだが、黒羽根の天使なんてどこにもいなかった。どっちにしても目立つ羽根だ。どうにかして、身分を偽っている可能性もあるな』
身分を偽る、すなわち人間のふりをしているということだろう。
あたしもおなじだ。さっきは少しだけ谷川先生に十字架のネックレスを渡したから、羽根と輪っかは見える人にしか見えないだろうけれど、あたしも天使なんだってことを、わすれないようにしなくちゃいけない。
夢の中とはいえ、黒羽根に変わりつつある天使に顔を見られちゃったんだから。
それに、もしあたしにできることがあるのなら、その子のたすけになりたい。だって、黒羽根の天使は、義理とはいえ、お父さんにひどい扱いを受けていたみたいだから。
『まったく。おまえはおせっかいだな』
アイビーに言われちゃったけど、いいもん。あたし、おせっかいでかまいません。
そんないろんな気持ちのまま、休み時間に突入。例の三人はアイビーに取り入ろうとするけれど、すぐにつめたく突き放されちゃっている。視界に入るなって、さっき言われたことなんてすっかりわすれちゃっているみたい。
そのたびにあたしに強い視線を送ってきた彼女たちだけど、アイビーのとどめの一言、ユイナにいじわるをするということは、親戚であるおれにするのとおなじことだからな、と言われてから、しゅんとなってしまった。
さすがに少しはかわいそうかなとは思ったけれど、こればかりはしょうがないのかな。
つづく
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