第11話 山田 アイビー爆誕

 あたしがおどろいてわたわたしていると、アイビーがゆっくりと深呼吸してみろ、とアドバイスしてくれた。ママもあたしの背をさすってくれる。


「心配するな。おれは天使のままだ。ただ、みんなから輪っかと羽根が見えなくなっただけで、実際天使からは正体が見破られてしまう。ためしに十字架をはずしてくれるか?」


 あたしは、アイビーの言う通りに十字架のネックレスを首からはずした。なるほど、アイビーの輪っかと羽根が見える。


「あら? あたしも見えるわ?」

「それは、ヤヨイが特異体質だからだ。でも、普通の人間には見えない。そして、この時点で、おれは山田 アイビーとなり、ユイナの遠い親戚で、現在親の都合で居候させてもらっているという設定ができあがった」


 おおー!! と、あたしとママは拍手をする。おおげさだな、と、アイビーは照れ笑いを浮かべた。


「とにかくこれで、明日からおまえといっしょに学校に行けるから、そのつもりでな」

「はい? どういうこと?」

「親の都合設定とはいえ、子供が学校に通わないってのは不自然だろうが。あとは明日、学校に行って、みんなの記憶を操作して、それで完璧だ」

「ちょっと待って。みんなの記憶を操作って、そんなことまでできちゃうの?」


 途方もない計画に、あたしは目を見張った。


「できるさ。おまえがそれを望んだのだからな」


 なんだかあたし、アイビーの手のひらで踊らされているような気がしたけれど、これで少し安心できた。


「さぁ、ネックレスをつけたらもうやすみな? 明日も学校だぞ」

「うん」


 なんだろう? アイビーに頭をなでてもらったら、安心してきてすぐ眠りについちゃった。


 きっとなんとかなる。うん、ぜったいに。がんばる。


 明日も、きっと。


 つづく

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