第5話 参加者と役柄
「くだらねェ」
椅子に深く腰かけ、足を投げ出し、机の上に乗っけている。
手を頭の後ろで組んで、椅子の前足を浮かせ、ふんぞり返っていた。
偉そうな態度だが、注意するには勇気がいる……、彼は最年長の三年生なのだ。
染めた金髪と、指定のシャツでなく派手な柄の私服の上にブレザーを羽織った、校則違反で固めたファッション。
ピアスにネックレスに、意味のないチェーンをベルトにつけていたりとこれでもかってくらい不良らしい不良だった。
スポーツでもやっていたのか、鍛えられた体が制服を小さく見せている。
他者を寄せ付けないその強面は、作ろうと思って作れるわけではないから……、生まれつきだろうか? 染めた金髪との相乗効果で、人を威圧する効果は絶大だった。
だからこそ、彼のその一言に、場の空気が固まった。
私立陽葵代学園は、それなりに偏差値が高い。つまり、この先輩も入学当時は学力も高かったはずで、根っからの不良ではない……はずだが。
となれば、簡単な話だ。
この学園で、堕落する原因があったということ。
「誰が犯人なんだ? 言えよ。それでお終いだろ、こんなゲーム」
彼の言葉には思わずぽろっと言ってしまいそうな強制力があったが、幸い、誰も口を滑らせたりはしなかった。
凍った空気で、口を動かせなかったのかもしれないが……。
「推理だ討論だ、情報のすり合わせだ? 回りくどいことしてねェで恐喝しちまえば犯人は口を滑らせるだろ。これは賢い奴が勝つゲームじゃねェ。力のある者が勝つゲームだ」
『……一応、忠告しておきますが、暴力は違反になりますよ』
念のため、運営委員が放送で注意をする。
「実際に暴力を振るえば、な」
先輩も脳筋のバカではないらしい。
いくつあるか分からないカメラに囲まれている状況下で、退学問題に繋がる事件は起こさない平静さはあるらしい。
「で、誰だ? オレを目の前にして嘘を吐いてんなら、ゲームが終わったあとで顔と名前が分かるからな? チャンスは今の内だぜ? 今ならオレも、許せる気分だ」
やがて、口を開いた生徒がいた。
「そんだけ強がってるってことは、先輩が犯人なんスか?」
「…………あ?」
へらへらと、先輩でなくとも逆撫でされるような口調で、軽薄そうな一年生が言う。
「先輩の威圧って凄い恐いんスよ。女子なら絶対に答えちゃいますし、おれたち一年も嘘でもいいから今にも言っちゃおうかって気持ちになっちまってますし。でも誰も吐いてないんスよね? そしたら消去法で、犯人は先輩になるんスよねー」
「オレじゃねえよ。じゃあ、そいつはどうなんだよ、二年の……林田はよ」
「……俺ですか?」
急に矛先が向いてきた。
一年でも女子でもない俺のことを、先輩の威圧で思わず口を滑らせない強靱な心臓があると買い被っているようだ。
「……俺も危なかったですよ。犯人だったら答えてました。でも、犯人じゃないんで、ないものを吐き出すことはできないんですよ」
「どうだかな」
まあ、そうなるだろう。
犯人が分からない以上、誰もが互いを疑っている。
誰が意図した流れかは分からないし、そもそも自然な流れでこうなったのだろうが……。
だとすれば俺も中々、尼園ほどではないが、運がない。
じゃあ、少しでも疑いの目をはずすためにも、俺から最初の提案に乗ることにしよう。
カードを一枚、机の上から取り上げ、
「二年、林田旅鷹。役柄は、『少女Aの親友である女子の兄』――だ」
それから順番に、それぞれが学年、名前、役柄を発表していく。
「二年、高科。『少女Aの友人の男』」
「二年、茜川陽葵! 役柄は、『少女Aの親友の女の子』だね!」
「現役JKアイドル、一年の尼園澄華ですっ。役柄はー、『少女Aの母親』ですよ!』
「同じく一年、
「一年の
「三年、
自己紹介に賛成していたメンバーが全員、カードを取っていったので、必然的に一枚が残ることになる。「ちっ」と舌打ちをしながら、先輩が残されたカードを取り上げ、
「三年、
出揃った役柄を踏まえ、改めて運営からの指示を見る。
『少女Aは、どうして学園を去ったのか?』
つまり、学園を去った原因である犯人が、この中にいる。
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