続★姫物語

粋田 椿 monger171

第1話 誰もが知る話を覆すために

~プロローグ~

「おお、美しい姫よ、この私と結婚して…」

「いや。」

 物語はこんなところから始まる。


 昔々、あるところに森があり、細い道が二本あり、その道の合流点があった。

 道には一人ずつ、若い女性が歩いていた。

 一人は両側にスリットの入った青い長いワンピースを身にまとい、ブロンドでロングウエーブの髪にはっきりとした派手な瞳で見るからに、高飛車。

 一人は少々大きめのかばんにベージュの上下を着た、薄茶色のセミロングの髪にたれ目で見るからに、おっとり。

 もう一人は短いズボンに両肩に甲冑をつけた、黒髪のポニーテールに褐色の肌、小柄で見るからに、おてんば。

 さて、ここまで読んだ人は気づいただろう。道二本に対し、女性は三人だ。実は三人目は道の間の草むらを無心で突っ切っていたのだ。

 そして、三人は同時に合流点についた。

当然ぶつかる。三人はもと来た道に少し吹っ飛んだ。

「ちょっとどこ見て歩いていますの?!」

 高飛車が二人を睨みつけるとおてんばがぶつけた腰を抑えながら睨み返す。おっとりは特に何もせずスカートについた砂埃をさっさととっていた。

「そんなこと言われたって、今まで草ばっかで前が見えなかったんだよ!!こっちのことも考えてよ!!」

「すみません、どうも明後日のほうを向いていたらしく…」

 おてんばからは喧嘩を売られ、おっとりからボケられ、高飛車は喧嘩を買うのが先か、ボケにツッコミを入れることが先か悩んだ。

 悩んだ末、強行に無視して歩き出すことにした。しかし

「ワタクシ、お先に。」

「はぁ!やだね。私が先。」

「じゃあ、間をとりまして私が…」

 事態は先ほどと変わらなかった。

 高飛車はじれったくなって叫んだ。

「お黙りなさい、民間人!」

「うっさいな!!」

 おてんばと高飛車が取っ組み合いの喧嘩をし始めようとしたとき、突然おっとりが道の真ん中にランチョンマットを敷いてお茶の用意をし始めた。

「さぁ、二人とも。座ってください。喧嘩などで体力を消耗するよりは、この豊かな春の日を体感しながらゆっくりお話をしたほうが有意義です。」

 おっとりはそういうと春日に負けないぐらいの暖かい笑みをふりまいた。

 二人はその笑顔につれられて笑い返すとさっさと座らせられ、紅茶を持たされた。

 そしておっとりはまた口を開いた。

「お二人のお名前を…あ、人に聞くときはまず自分からですね。故郷ではこう呼ばれていました。シンデレラと。」

 二人は思い切り噴出した。

「「シンデレラぁ!!」」

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