みかんの森
みかんの木
海色学園ミュージカル部~潮風に吹かれて~(現代ドラマ)
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私の通う
ミュージカル部はそこにある。ミュージカル部。珍しいでしょ?その名の通り、ミュージカルをするんだけど、
「それってつまり何するの?」
と聞かれそうなので先に言っておくと、ダンス部と合唱部と演劇部が混ざってる感じ。それでいて技術的にはその三つの部活に引けを取らない。
そんなミュージカル部に入って早一年。ほら、ちょうど今から部活が始まる。みなさんもぜひ見学していってね。
「はい、部活を始めます。」
部長の声が響く。おしゃべりをしていた私たち中二は、慌てて先輩のもとへと集まった。この先輩、すごく声が高くて、その上いつも笑っている。それに、技術も部活一で、歌声は宝塚レベル。顔も可愛い。だからこそ私たちは、
「この先輩怒ったら怖いやつだ、、、」
と、密かに警戒している。まあ実際に怒られたことはないので真相は分からない。ちなみに私は、先輩意外と優しいのでは?と思っている。そしてその横で顧問が今日もボーっと空を仰いでいる。運動部などは結構顧問がかかわってくるらしいが、ミュージカル部の顧問が必要なのは入部届を出すときくらい。笑
「学年ごとにオーディションの練習をしてくださーい。」
オーディション。そう。ここミュージカル部にはオーディションがある。毎年秋に行われる海色祭。元々この学校は部活がそんなに盛んではないから、ミュージカル部は海色祭の見どころの一つ。だからこそ先生も気合いが入るんだろう。毎年盛大なオーディションを開催している。そのオーディションが来月、ある。
中1のときはほぼ雑用で、オーディションにはそもそも参加権がなかったから、実はオーディションを受けるのは初めて。説明しなくてもわかると思うけど、うまい人はセリフを多くもらえるどころか、歌のソロもダンスももらえるし、下手だったらセリフすらない。意外とシビアな世界だ。と私は思う。それなのに…
「でんっでんっでんっでんでん♪」
「ヘイッ!」
同輩はみんないつでもハイテンションで、今も
「ねえ、先輩に睨まれてるよ!」
先輩に聞こえない程度の声で、私はみんなに伝える。見渡すと、先輩たちはみんな鋭い目つきでこちらを見ていた。
「アハッ、やばいねうちら」
アハハハハ、とみんなが笑う。先輩の目つきは更に鋭くなっているけど、それでも楽しい。学校に来る意味は部活にある、と言っても全然過言ではない。むしろ、生きているのは部活があるから、と言ってもいいくらい。
「静かにしてください。今日は学年ごとにオーデションで歌う曲のテストをします。じゃあ中2、でてきて?」
「先輩、私達を先輩の前で歌わせて恥をかかせようとしてるな?」
と友達が言った。
とは言いつつも、内心はみんな聞いてほしくて仕方がないと思う。私達は、やれとも言われていないのに度々廊下で歌練をして、上の階にいる中3の先輩に睨まれている。
みんな本気なのだ。ふざけているだけではない。
終わったあと、
「絶対私達先輩よりうまかったよね?」
と誰かが言った。誰も相槌を打たなかったけれど、否定もしなかった。
しばらくして、部活が終わった。終わってからも私達にとっては終わりじゃない。
「みんなで帰ろ〜?」
「イェーイ!」
方面が同じ人は、みんなで帰っている。楽しいのはいいのだけれど、自分たちでやっていてこれかなり近所迷惑だよね、クレームくるんじゃない?と言っている。(まだ来たことはないので良しとしよう)何しろ、合唱をしているのだから。しかもミュージカル部の合唱だからみんな声量が結構あって、車の音も聞こえないくらいだ。違う部活の先輩がかなり引いている目でこちらを見ている。それすらもなんだか楽しくなってきてしまうから不思議。
もし海色学園に入る予定があったら、是非ミュージカルに入ってね♪
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「っていうパンフレット作ってみたんですけど、どうですか?」
貴重なお昼休みを削って、私たちは顧問にパンフレットの下書きを見せた。そうか、こういうときにも顧問って必要か。
「却下。」
顧問のしわがれた声が廊下に響いた。
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