草生えすぎてwwwwwww草から出られないwwwwwwwwwww

ちびまるフォイ

草むらのこやし

「密林の調査と聞いていたが、これは……」


そこにあったのは2階建ての家ほどもある草むらだった。

調査隊と一緒に中に入ると、まるで自分が縮んでしまったような感覚に陥る。


「おおい、はぐれるなよ!」


草陰の向こうから隊長の声が聞こえた。

数歩進むと、草に視界を遮られてもう見えなくなる。


「なんだってこんなに背の高い草が生えたんだろう」


興味深くなって土や草のサンプルを回収する。


「先生、今日は植物探索じゃないですよ。行方不明者を探さないと」


「そ、そうだった」


草に太陽が遮られて昼間なのに、影ばかりでひんやりとしている。


もうどれだけ依頼者の家族を探しただろうか。

空からでは草陰で何も見えないからと、調査隊が繰り出されたものの非効率極まりない。


「隊長、隊長! 今日はもういったん休みましょう」


先頭を歩いているであろう隊長に声をかけたが反応はない。


「隊長、そこにいるんですよね?」


草を押しのけても誰もいなかった。

自分以外にいた調査隊の姿も見えない。


「うそだろ。はぐれちゃったのか……!?」


大声を出してもたわんだ草に反響して自分のもとに戻ってくるだけ。

コンパスはおろか、あらゆる通信手段も草で阻まれて使えない。


「おーーい!! おーーい! みんな!!」


叫んで、草を揺すってみても反応はない。

そのとき地面が急に盛り上がって、鋭い草の先端がトゲのように突き出した。


「わっ!? なんだ!?」


急に生えだした草はぐんぐん伸びて、他の草と同じ高さまで一瞬にして成長。

あと一歩踏み出していたら、地面から生えた草に突き刺されていた。


「あんな草もあるのか……恐ろしいな、ここは」


目線を高いまま振り返ったときだった。

探していた調査隊たちが視界に入る。


「た、隊長……!」


自分以外の調査隊は地面から急速成長した剣山のような草に体を貫かれ、

そのまま成長した草により上空へと運ばれていた。


「ここはやばい……早く逃げなくちゃ!」


人間が足を踏み入れてはならない場所だと悟った。

持ち込んでいたサバイバルナイフで周囲の草を切りながら進んでいく。


草は切った部分からすぐに再生してしまう。

切り開いたはずの道も数秒後にはもとの草垣ができあがっている。


もはや自分がどう歩いてきたのかすらわからない。


広大な草むらをあてもなく歩き続けるしかないのか。

寝ている間に地面から急に生える草に体を貫かれるかもしれない。


「どうすればいいんだ……」


すると、頬に水滴があたる感触があった。

草で遮られていたが、それでも間をぬって水が地面まで落ちてきた。


「雨か?」


降り注ぐ雨は地面をぬかるみへと変えていく。

ずぶずぶと底なし沼のように膝が地面に埋まっていく。


「うあああ! た、助けて!」


近くの草に昆虫のようにしがみついて地面から這い出した。

草の先端まで登っていくと、この広大な草むらを見渡すことができた。


どこまでも続く緑の風景に絶望しかなかった。

コンパスもきかないこの草むらを突っ切るのは不可能だ。


ピロン♪


この絶望的な状況に合わない軽い音が聞こえた。

ポケットに入っていたスマホが通知を表示していた。


高い草に登ったことで電波が入るようになっていた。


「助かった!!」


すぐにレスキュー隊へ電話して救助を求める。


「巨大な草むらに囚われているんです! 救助ヘリをよこしてください!」


『し、しかし……その場所は救助には難しいんです』


「はあ!?」


『近づきすぎれば草にヘリが絡まって墜落してしまう。

 離れすぎると今度は縄バシゴをおろしても届かないんですよ』


「だったら超長い縄バシゴでも作って持ってきてーーあっ!」


不安定な草の上でヒートアップしたのが運の尽き。

持っていたスマホは草むらの中へと落としてしまい、沼のようになった地面に吸い込まれた。


もうただ助けを待つしかない。

体力の限界がじりじりと近づいているのに、いっこうに助けは来ない。


「遅すぎる……なんで助けに来ないんだよ!」


草の先端にしがみついて助けを待つのも限界がある。

もしかして、異常に広いこの草むらのどこにいるのかわからなくなっているのでは。


探す側になって見れば草むらに隠れているアリ1匹を見つけろと言っているようなものだ。


「なんとか見つけて貰う方法はないか……」


発煙筒でもないかとかばんを探した。

出てきたのは最初の頃に回収した植物のサンプルエキスくらいだった。


助けを呼ぶのに使えそうなものはないと思ったが、

限界まで追い詰められた頭があるアイデアをひらめいた。


「そうだ! この草だけを一気に成長させれば気づいてもらえるかも!」


草むらの中に1つだけ異様に長く、天にそびえる草があったらひどく目立つ。

救助ヘリにもすぐに気づいてもらえるだろう。


すぐに草の調査をはじめた。エキスを分析して急速成長の原因を解き明かした。

草から抽出された成長養分を自分が乗っている草に注射する。


自分の乗っている草だけは急激な成長を促されて、みるみる空に向かって伸びていく。


「やった! 大成功だ!!」


同じ高さの草むらの中に1本だけひとまわり高くそびえる草。

これに乗っていれば確実に見つかるだろう。


自分の狙いはぴたりハマったようで、草むらを当てもなく探していたヘリがこちらへ向かってくる。

すでにヘリが飛んでいる高さよりも自分の草のほうが高くなっていた。

ヘリを草の上から見下ろすなんてことは考えことがなかった。


「こっちだーー! おーーい! おーーい!!」


高層ビルほどの高さの草の上からヘリに対して合図を送る。

ヘリは自分に気づくと合図を送ってくれた。


「助かった……!!」


ほっと安心した。

一瞬だけ、ピカッと白い光があたりを包み込んだ。



落雷は電流というより衝撃で自分の体を貫いた。

避雷針となった草は一気に燃えて、あたりの草を巻き込みながら燃え尽きていった。



最後に残ったのは草の燃えカスと、人間だったものの残骸だった。

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