くるるんの、ホワイトデーボイスについて
「はい! ここらであたしたちの話は終わりにして、男性陣の話を聞かせてよ! 意識したこととか、裏話とかさ~!」
「そうっすね。いい感じに話もまとまったみたいですし、次は俺たちの番ってことで……オリオンさんからお願いします」
「了解。そうだね……今回は僕と枢くん、二人分の台本を書く時に意識したのは、手堅くいくんじゃなくて少し冒険してみたって部分かな?」
「左右田先輩とは逆なんですね。私、まだ聞いてないんですけど、どういう感じで冒険したんですか?」
今回、二人分のホワイトデーボイスの台本を担当したオリオンが、自身が意識した点について軽く触れる。
そこから一歩踏み込んだ芽衣の質問に対して、彼はこう答えていった。
「普段とは違う一面を出す内容にしてみた、って感じかな。内容も一応、女性を相手にしてるシチュエーションを考えて書いたね」
「じゃあ、色んな意味で左右田先輩とは逆なんですね。それで、どうしてそういう形でいくことにしたんです?」
「ホワイトデーだからね。やっぱり、甘いシチュエーションを期待する人が多いと思ったんだ。だから、あまりこういうのは得意じゃないけど、少し挑戦してみようと思って」
【出たばかりだからまだ俺も買ってない! ちょっとこの話を聞いて想像を膨らませようと思う!】
【逆に俺はもう買って聞いたわ。オーディオコメンタリーじゃないけど、台本とかの話を聞いて色々と楽しめるのが気分いい】
【どちらにせよ結構お得よな! ちなみに俺は男だが、くるるんのもオリオンのも買ったぞ!!】
発売開始されたばかりのホワイトデーボイスについて、リスナーたちもまた様々な楽しみ方をしながら話を聞いている。
これを聞いてからボイスを聞くもよし、ボイスを聞いてから配信を楽しむもよし、といった感じでリスナーたちが見守る中、オリオンが話を進めていく。
「例えば枢くんの場合、料理が上手で誰に対しても優しいでしょ? 普通に考えると、そんな枢くんのホワイトデーの過ごし方は、バレンタインにチョコをくれた人たち全員に丁寧にお返しをする……みたいなものになると思うんだよね」
「まあ、実際そんな感じでしたね」
「それこそオリオンと二人でフォンダンショコラを作って配ったバレンタインみたいな一日になりそう」
「別にそれが良くない、ってわけじゃないんだけどさ。どうせならもっと違う枢くんの良さを引き出してみたかったんだ。全員に優しくするんじゃなくて、誰か一人だけを特別に扱う……そんな枢くんを見てみたい人もいるんじゃないかな? と思って書いたのが、今回の台本です」
【ほう? ……ほう? 続けて】
【つまりボイスを聞いた奴はくるるんに特別扱いされてメスにされるってわけですね!?】
【PマンニキがPマンネキになっちゃう……】
「言われましたね~。こう、台本貰った時はうぉぉ……っ!? ってなりましたもん。俺、こんなこと言えるのか~? って感じでした」
オリオンが台本を書く時に意識したことを話し、それを受けて枢もまた苦笑気味に台本を初めて読んだ時の印象を語る。
続けて、既に彼のボイスを聞いていた紗理奈が、その感想を述べていった。
「良かったと思うよ~! 女の子を特別扱いする枢くん! 結構甘々というか、慣れてる感じが普段とのギャップを感じさせつつも枢くんならこういうことしそうだよな~! って自然に思えたしさ!」
「そこは僕の台本よりも枢くんの演技のお陰だね。というより、実は少し慣れてない雰囲気の台本も用意してあって、どっちも収録したんだ。その上で、良かった方を選んだ感じ」
「うっそ!? そうなの!? え、そのデータ残ってる!?」
「ちょっ!? オリオンさん!? その話をするのはいいけど、この場でデータ公開とか止めてくださいよ!? 公開処刑以外のなにものでもないんですから!」
「あはは、わかってるよ。これはお蔵入りってことで。まあ、配信が終わった後に枢くんに頼めば、二人なら聞かせてもらえるんじゃないかな?」
「やりぃ! というわけで芽衣ちゃん! 実際に発売されてる方のボイスと聞き比べて、遠慮せず意見を申し上げてやりなさい!」
「ぴえっ!? わ、私、そんなことできませんよぉ……!」
【俺たちも聞きたい!!(血涙)】
【つまりオリオンはこの後、嫁である芽衣ちゃんによるジャッジを受けるということですな?】
【一生懸命頑張ってエスコートするくるるんもパーフェクトなくるるんもどっちも解釈一致できるから困る……】
裏話として出されたもう一つのボイスの存在……それを聞ける出演者たちと、お預けを食らうリスナーたちの反応は両極端だ。
しかし、それすらも楽しむ猛者たちのコメントもちらほらと目立っており、男性陣によるボイスのトークもなかなかの盛り上がりを見せている。
「あんま聞かれたくないな……ボイス出すのに慣れてないってのもあるんですけど、内容が内容なんで……」
「ダメだよ。枢くんだって私のバレンタインボイス聞いたんだし、同じ目に遭ってもらわないとね!」
「芽衣ちゃん、イキイキしちゃって……! でもそれだと没ボイスを聞く分、芽衣ちゃんが得してるじゃん! それはズルくない?」
「あ~、確かに! じゃあここはあたしが枢くんのために新しい台本を書きおろして、芽衣ちゃんに読ませるしかないか!!」
「ええっ!? そ、それは流石にやり過ぎじゃ……!?」
「ダメだよ。芽衣ちゃんだって俺と同じ目に遭ってもらわなくっちゃね」
「うぅぅ……! 枢くんのいじわる……!!」
【唐突にイチャつくな。繰り返す、唐突にイチャつくな(いいぞもっとやれ)】
【攻め芽衣ちゃんは即座に受けに回る。やっぱくるめいだな】
【めいくるも悪くないのでどうか書き下ろし台本の方はそちらでよろしくお願いいたします。金なら出しますから】
こんなふうに(内容が内容ではあったが)ちょっとしたやり取りですらも盛り上がってしまう配信の空気の中、コメント欄の勢いは加速を続けている。
くるめいの供給に湧き立つリスナーたちであったが、中にはもう一つのCPに関する尊さを求める者もいるようで、不意にこんな質問がコメントとして投げかけられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます