三期生の物語は、まだまだこれから

「……詳しくは話せないけど、二人とは色んなことを話させてもらったよ。うん、しっかり話ができたと思います」


【オリオンがそう言うのなら本当にいい話し合いができたんだと思う】

【デビュー後は色々と慌ただしくって大変だったもんね。ここで自分たちを振り返るいい機会になったと考えれば、逆に良かったのかもしれない】

【雨降って地固まるじゃないけど、そういう状況にできたならよかった】


 同期との話し合いを振り返りつつ、その中で感じた手応えは勘違いなんかじゃあないと再確認したオリオンが色々と掻い摘んでそれをリスナーたちへと伝える。

 三期生も今回の騒動を反省すべき点だとは考えているが、深刻になり過ぎて関係がおかしくなったりはしていないということを確認できたリスナーたちが安堵する中、彼は更にこう続けた。


「コミュニケーションエラーがあったとか、関係がおかしくって掛け違っちゃったとかよりも、単純にやる気が空回っちゃったっていうのが今回の騒動の原因だったんだと思います。僕たち全員が全員、もっと頑張らなくっちゃって気合を入れ過ぎて、前のめりになり過ぎていた。そういう時に肩を叩いて落ち着かせるだとか、責任感を分け合えるような感じじゃなかったんじゃないかなって、そう思う」


【デビュー直後はそういうもんだよ。一番波に乗るけど、その分不安定でもある】

【グループとしても個人としても見られるからね。色々大変だ】

【三人とも自分のことで手一杯になっちゃう時期でもあるもんね】


「そうかもね。僕も世話役としてそんな二人のことをフォローしようと思ってたけど、その気持ちが行き過ぎていたんだとも思う。余計なお節介じゃないけど、なんでも気にし過ぎていたら二人にとっても負担だし、信用されてないんじゃないかなって思われて当然だ。助け合いはするけど、好意の押し付けはしない。相手のことをしっかりと見て、手を差し伸べるか否かを見極めるってことも必要なことだったんだよね」


【オリオンが良い人過ぎたから逆に頼りにくくなっちゃったか……】

【オリオンが嫌いだからハブったんじゃなくって、自分たちで何かしたいって思った結果がコラボ配信をやろうってことだったんだね】

【オリオンはもう少し放任主義でも良かったし、ハウンド姉妹はもっとオリオンに甘えても良かった。そういうことやな】


 囁かれている不仲説を払拭するように、あるいは真の問題点を解説するようなオリオンの話を聞いたリスナーたちがそれぞれの感想をコメントとして打ち込む。

 それを見ながら、彼は瞳を閉じ、何度も頷き、再び口を開いた。


「あとは……単純にまだ僕たちは出会って間もない人間同士で、一期生、二期生の先輩たちのようにはいかないってことがわかったよ。でも、だからこそ、僕たち三期生は僕たちなりの関係を作っていけるんじゃあないかとも思う。先輩たちとは違う、『トライヴェール』なりの関係を作って、お互いの夢を応援し合いながら歩いていけたらいいなって、そういう話もしました」


【そうだね。それも大事だ。無理に先輩たちみたいになる必要もないよ】

【メグちゃんとか先輩に憧れ持ってたからそう考えてる節もあっただろうけど、メグちゃんはメグちゃんだもんね。自分らしさが大事】

【オリオンも同じ箱の男性Vだからって、くるるんみたいになる必要はない。オリオンらしく、二人と関係を進めていってくれ】


「ありがとう……デビューしたばっかりだから当然といえば当然なんだけど、僕たちはまだまだ未熟です。ただ、そこから手探りで少しずつ前に進んでいくために頑張ってもいます。今回みたいに色々と不安にさせちゃうこともあるだろうけど……温かい目で見守ってくださると嬉しいです」


 そう呼び掛けるオリオンへと、リスナーたちからの了解のコメントが寄せられる。

 枢とはまた違うが、彼も同期たちの盾として自分たちが伝えるべきことを代表して発信する役目を担い、事態の解決に奔走していた。


 この話だけで全てが解決するわけではないだろうが……きっと心配する必要はない。

 全てはきっと、時間が解決してくれる。他力本願のように思えるかもしれないが、こうして一つの方向性を示した以上、自分たちがすべきことはもう終わっているのだ。


 あとは騒動が収まるまでの間に同期として距離を縮め、関係を作り上げ……三人でのコラボに備えればいい。

 それがきっと、自分たちが本当にすべきことなのだろうと考えながら、オリオンは改めてリスナーたちへと言う。


「今、二人とも三期生の初コラボについて色々と話し合ってるからね。もう少しだけ時間が必要かもしれないけど……三人で楽しく、面白い配信ができるように案を出し合ってるところだからさ。期待して待っててください。正式な告知ができる日を、僕たち三人も心の底から楽しみにしてます」


 その話に対して、【了解】や【期待してる】等のコメントが大量に送られてくる。

 ファンたちからの応援を形として受け取った彼は、口元に笑みを浮かべながら自分たちを支えてくれる存在へと強い感謝の気持ちを抱くのであった。

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