翌日、オリオンの配信にて
「こんばんは。声とBGMの音量は大丈夫かな?」
【大丈夫よ~! 聞こえてるし問題ない!】
【もーまんたいです!】
【おっすおっす! 音量問題ないよ~!】
「協力ありがとうございます。じゃあ、今日も配信をやっていきましょうかね」
翌日の夜、三期生オリオン・ベテルギウスの雑談配信には、普段よりも大勢の視聴者が訪れていた。
やはりというべきか、自身や同期の身に降りかかったトラブルが良くも悪くも知名度を上げ、注目を集めたということなのだろう。
この騒動を機にオリオン=ライル・レッドハートであることを知ったかつてのファンも集まる中、彼はリスナーたちへと自身も巻き込まれた炎上についての話をし始めた。
「まずは、色々と騒がれていることについて、みんなに話をさせてもらうね。まあやっぱり、僕自身のことについてからお話をさせてもらおうかな」
【サソリナとの件ね。別にいいんじゃない?】
【色々と騒ぎになっちゃってるし、軽く触れておくのも悪くないと思う】
【あれはちょっと……というかかなりCP厨が騒いでるだけみたいなところあるわ】
深夜に二人でゲームをやっていることがバレたせいで噴出した紗理奈との交際疑惑について、恐れず話をし始めるオリオン。
彼がこの件についてどう反応するのかをリスナーたちが見守る中、オリオンは事務所に所属しているタレントとして、実にまともな回答をしてみせる。
「左右田先輩とは普通に仲のいい友達……って言うとまた変な誤解をされそうだけど、色々と活動の方向性が合うから話がしやすい人なんだよね。だからまあ、同期があんな形で燃えた時もどうしようかって相談して、あんまり真面目になったせいで暗い雰囲気にならないようにってことで一緒にゲームをした結果、あんな感じになったんだけど……そのせいで沢山の人たちに迷惑をかけることになって、反省してます」
【別にいいじゃん! オリオンのことを責めたりはしないよ!】
【あれでオリオンとサソリナが炎上するのわけわからん。男女でゲームやってる=付き合ってるなら、くるるんは十股くらいしてることになる】
【タイミングが悪かっただけなんだよ。オリオンがそこまで気にする必要はない】
「ありがとうございます。ただやっぱり、みんなが言ってくれてるみたいにタイミングが良くなくて、そういう雰囲気の中で僕も迂闊な行動を取ってしまったんじゃないかなって、そこの部分は多いに反省すべきだと思うから……本当にごめんなさい。以後、改めさせていただきます」
Vtuber、並びにタレントだって一人の人間で、当然ながらプライベートだってある。
明らかにモラルに反している行動を取っていない限りはそこについてファンである自分たちが口出しするのは良くないとオリオンをフォローするリスナーたちであったが、彼はそれを踏まえた上で自分にも責任があると言い、頭を下げた。
この炎上のせいで彼が色々とやりにくくなってしまったら嫌だなと不安に思うリスナーたちへと、オリオンは改めて口を開く。
「ただ安心してほしいのは、この件があったから左右田先輩と絡まないようにするだとか、気まずくなってるだとかの心配は一切ないってことだね。これからも色々と相談させてもらうと思うし、一緒に遊ぶこともあると思う。左右田先輩に限らず、そういうふうに裏でお話させてもらう人っていうのはいると思うから、これで僕が委縮して活動しにくくなるってことはないってことを明言させていただきます」
リスナーたちが感じていた不安を払拭するような力強い声でそう断言するオリオン。
彼の前世からしてもこの程度のことで心が折れるような人間ではないということはわかっているが、それでもそう明言してもらえると聞く側も安心できるというもので、リスナーたちもほっと一安心しているようだ。
【それがいいと思う。これでオリオンが周囲と関わらなくなったりする方が応援する側としては嫌だもん】
【オリオン自身に非があるわけではないし、別にこれでとやかく言うつもりもない。相手がサソリナってこともあるし、むしろガーガー言う方がおかしい】
【CP厨じゃないけど、付き合っててもいいと思うよ。オリオンにだって幸せになる権利はある】
「温かいお言葉をありがとうございます。そう言っていただけて本当に嬉しいけど、こういう女性が大半の事務所の中に男性タレントとして入ったからには、それに相応しいムーブってものがあると思うんだよね。僕はそれがよくわかってなくって、そのせいで炎上を加速させちゃったって自覚があるから、やっぱりそこは反省しないと」
【そこは先輩であるくるるんも探り探りだったし、オリオンもこれから覚えていけばいいよ】
【その辺のことはくるるんが詳しいから、相談してみるといいと思う】
【男同士で話をして、協力体制を作っていけばいいんじゃね?】
「あはは、やっぱそうだよなあ。蛇道先輩が一番詳しいだろうし、この辺についてはきちんと話を聞かせてもらおうっと」
明るくそう言ったオリオンが一旦、間を置く。
ここまでは彼一人だけの問題について話をしてきたが……話すべきことはもう一つあるはずだ。
リスナーたちもその件について敢えて触れていないが、しっかりとここで話す必要がある。
静かに息を吸って、吐いた彼は、少しだけ気持ちをざわつかせながらその話をし始めた。
「それともう一つ、みんなが不安に思ってるであろう僕たち三人、三期生の炎上についての話だけどね……」
噴出している不仲説、『トライヴェール』の関係性はどうなのかという疑問を解消すべく、その話題に自ら振れるオリオン。
リスナーたちが固唾を飲んで見守る中、彼は静かにこう告げた。
「……ちゃんと、お話してきました」
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