座談会、お疲れ様でした!

「どうも、こんちわ~っす。料理のお味はどうでしたか~?」


「えっ!? あれっ!? ええ~っ!?」


 おどけた様子の男性の声に続いて、早矢の悲鳴にも近しい驚きの声がスタジオに響く。

 その反応に満足したかのようにスタッフたちが笑みを浮かべる中、料理を運んできた者たち……二期生の面々もまた、先輩たちのリアクションを楽しそうに笑いながら見つめていた。


「あ~、いいっすね~! その反応、私たちが求めていたリアクションそのものです!」


「これだけでごちそうさま、って気持ちになるよ~! やったやった~!」


「え? なんで五人がここにいるの!? なんで!?」


「ははっ、そういうことか。なんかそんな気がしてたんだけど、全員で来るとはなぁ……!」


「……あっ! もしかして、これまで出てきた料理って、全部二期生のみんなが作ってたの!?」


「はい、そうだよ!!」


「騙すような真似しちゃってごめんなさい。スタッフさんたちからドッキリ企画を提案されて、面白そうだなって思って、つい……」


 ぺろりと舌を出して謝罪する芽衣の言葉を聞いて、ようやく事態を完全に理解したビッグ3が苦笑を浮かべる。

 どうやらこれは、3Dライブのお疲れ様会であり、三人の緩い座談会であり……自分たちがドッキリを仕掛けられる場でもあったようだ。


「待って、パエリアとかローストビーフとかも全部手作りだったってこと!? あれ、お店のものと比べても遜色ない出来栄えだったんだけど!?」


「そう言っていただけて嬉しいです。ローストビーフに関してはクリスマスパーティーの時に作ったんですけど、中には初めて作る料理もあったんで、お口に合うか不安だったんですよね」


「私たちは心配してなかったけどね。あんたとたらばが作る料理、大体美味いもの」


「私たちがやったことはちょっとしたお手伝い程度でしたけど……それでも、先輩たちに喜んでもらえて、本当に嬉しいです」


「楽すいお話もいっぱい聞げだすね!」


「ああ~……やっぱり聞かれちゃってた、よね……?」


「やっさー! 最初から最後までばっちりと聞かせてもらっちゃいましたよ~!」


 料理を褒めることで話題を逸らしていた三人であったが、自分たちが語った二期生への印象についての部分に触れられて、ようやく観念したようだ。

 気恥ずかしさと、苦笑と、若干の不安を感じている彼女たちの前で、枢が頬笑みを浮かべながら口を開く。


「色々とツッコみたくなる部分もありましたけど……先輩たちが俺たちのことを高く評価してくださってることとか、よく見てくださってることがわかって嬉しかったです。本当、いい先輩だなって思いました」


「私の総評に関しては異議を申し立てたいですけどね。なんでしゃぼんさんか清川先輩の後継者(悪い意味で)がほぼ確定してるんですか!?」


「いや、妥当だろ。お前以外の全員が頷いてたぞ?」


「それが嫌なら家事の腕を磨くことだね~! このままじゃ、しゃぼんさん二世が誕生しちゃうよ~!」


「あの、地味にしゃぼんさんにダメージがいってるような気がするのは私だけなのかな……?」


「こったふうに気遣ってけるふとが少ねどごろも、しゃぼんさんそっくりだね!」


 自分たちの二期生に対する評価を、リアルタイムで本人たちに聞かれていたことを知った三人が恥ずかしそうに苦笑する。

 スタッフが仕掛けたドッキリに見事なまでに引っかかったことを悔しく思いながらも、早矢はこの場にいるタレントたちの代表として、動画を締めにかかった。


「まあ、そうだね。色々と恥ずかしいことを聞かれちゃったりしたけど、私たち全員、二期生のみんなのことはすごいって心の底から思ってるよ! 先輩として、みんなに負けてられないな! って常々思わされてるね!」


「一期生にないものをいっぱい持っていて、アタシたちと同じく自分の夢に向かって真っすぐ進もうとしてる。そんな連中が後輩として入ってきてくれて、すごく嬉しいよ」


「んで、今度はみんなが先輩になるわけだ! もう新人Vtuberの肩書は外して、一人前になんなきゃね! 慣れるまで大変かもしんないけど、頑張るんだぜ~!」


「はい! 先輩たちのお言葉を胸に、これからも頑張っていきます!」


 配信を締める流れにしつつ、後輩たちへのエールも兼ねた激励の言葉を口にした三人へと、元気よく応える枢。

 流石に配信慣れしているなと思う彼の前で、早矢が視聴者たちへと別れの挨拶を述べていった。


「それじゃあ、三人でやる座談会はここまで! 残る料理はスタッフさんと二期生のみんなと美味しく食べて、楽しんじゃおう!」


「おい、枢~! お前、追加の料理作ってこいよ~! スタッフは酒買ってこい、酒! 女の子たちはお酌をお願いね~! ぐへへへへへ……!!」


「……枢、お前、ラリアットできるか? アタシは前から決めるから、お前は後ろ側からキツイのぶち込んでやれ。ツープラトン制裁でこいつをシバこう」


「ちょっ!? 待って!! 飛ぶ! 首が飛ぶから! 流石にそんなクロスボンバー的な技をかますのはやめっ! ぎゃああああっ!?」


 元気な悲鳴と明るい笑い声が響くスタジオの雰囲気は、実に和やかだ。(一人を除く)

 ここからも楽しいパーティーが続いたんだろうなということを見るものに感じさせつつ、ビッグ3による座談会はこうして終わりを迎えた。


 その後、この収録で出てきた四川風唐揚げの味をいたく気に入った乙女が料理を習得するために『くるるんキッチン』の収録に参加するかどうかを検討し始めたようだが……それはまた別の機会に話すとしよう。


 デビューからもうじき一年、数々の出来事を経験してきた二期生たちは先輩たちからの自分たちに対する評価を知ると共に、今度は自分たちが彼女たちと同じ先輩になることを再認識して、心構えを固めていくのであった。

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