二期生・蛇道枢について
「炎上キャラ! 事務所という名のハーレムの主! 芽衣ちゃんのちっぱいとたらばのたわわなたらば! 奴さえいなければ、その全ては私のものだったのに……! おのれ、蛇道枢ぅ……っ!」
「安心しろ、あいつがいなくても炎上キャラはお前のものだし、他の二つはお前のものにはならないから」
「炎上……やっぱりそこが一番の印象になっちゃってたよね~」
ここまでの会話通り、ふざけたことを言う乙女にツッコミを入れるマコトの横で早矢がマイペースに自分の感想を述べる。
彼と顔を合わせたのも割と最近のことである彼女は、そこで枢に対して覚えた印象について語っていった。
「デビュー直後は本当に大丈夫かな? って感じだったね。事務所で初めての男の子でしょ? 仲良くしたくはあったんだけど、あの燃え方を見てるとそれも気が引けちゃってさ……」
「だよな。下手したら百万人近いファンたちがあいつを叩きに行くことになるわけだし、当初は絡みに行きにくかったな」
「ホント、今考えてみるとすごいよね。男の子がデビューしただけであそこまで燃えるんだ……って呆然としてた覚えがあるもん」
「でも私はファンのみんなの気持ちがわかっちゃうな~。いきなり推しの近くに男が出てきたら、そりゃあ不安だし嫌な気持ちになるもん。事務所もよくあいつのデビューに踏み切ったなって思ったわ」
蛇道枢がデビューしたすぐ後に起きた炎上……女性ばかりの事務所に男性タレントがデビューしたことで発生した、事務所でも類を見ない規模の炎上を思い返しながら、その時のことを語る三人。
枢に同情を示しつつもファンの気持ちもわかるという意見も出る中、早矢が最近顔を合わせた枢の印象について話し始めた。
「実際に顔を合わせてわかったんだけど、枢くんは実直って言葉が本当にしっくりくる子だよね。真面目で真っ直ぐな性格してるし、二期生だけじゃなくてしゃぼんさんとかしずくちゃんが信頼してる理由も会ったらすぐにわかったよ」
「それでいてあいつ、割と才能マンなんだよな。大体のことはできるから、性格だけじゃなくて仕事面でも頼りになるっていう」
「若干腹立たしいくらいだよね。でも、性格に嫌味なところがない、普通にいい奴なんだよなぁ……」
蛇道枢を敵視している(ムーブをしている)乙女ですらも認めなければならない性格の良さを振り返りながら、スタッフも含めたこの場の面々はうんうんと頷いていた。
絡んだ人たちの口から悪いうわさが一切出てこないということが、彼の真面目さを物語っている。
デビューからおよそ一年というこの期間で箱推しファンからの信頼を勝ち取ったことからもわかる通り、彼は……本当にいい奴なのだ。
「普通に先輩とか目上の人に対する接し方も丁寧だよね。例外は愛鈴ちゃんとしゃぼんさんくらいのものだけど、その二人に関しても普段の接し方は実にまともっていう」
「コミュ力高めで場をまとめることもその補佐をすることもできるしな。二期生のサブリーダーはあいつだろ? 実際、たらばも助かってるって言ってる」
「そんで異性に対するライン引きもしっかりできてるんでしょ? 私と違って、それ関連のヤバい発言で燃えたことってなくない?」
「……ないな。唯一の例外が芽衣との距離感がバグってる接し方が表に出た時か? でもあれは喜ぶ奴の方が多いからな……」
「むしろそこまでやらないと燃えないってすごくない? っていうか、実質それも燃えてないようなものだしさ」
「あとはたらばちゃんに燃やされるくらいか? でもこれは枢が悪いっていうよりかはたらばちゃんのノーガードっぷりがヤバいってだけだしなぁ」
改めて考えてみると、女性に囲まれた状態でVtuberとして活動しているというのに、それ関連で燃えることがここまで少ないというのは驚異的なのではないだろうか?
たらばの胸囲ネタの脅威に晒されることで燃やされることはあるものの、自分の発言が原因で炎上すること自体はほぼ皆無という枢の戦績(?)を振り返った三人が若干の戦慄を覚えながら顔を見合わせる。
「今のところは未成年だから酒でのやらかしもないし、ゲームをやってる時に人格が変わって暴言を吐きまくるとかもないし――」
「芽衣ちゃんとかしずくちゃんみたいな子たちが遠慮なく話せるくらいには性格がいい。リア様も方言のことを最初に打ち明けた相手って枢なんでしょ? 相手に心を開かせる技術高くない? コミュ強のレベル超えて、詐欺師になった方がいいレベルでしょ?」
「あれ? これ、もしかしてなんだけどさ……枢くんって、私たちが思ってる以上に優秀だったりする?」
改めて考えてみると、枢ってかなりすごいのではないだろうか?
事務所の代表格であるこの三人にそう思わせるくらいには長所が多い彼だが、唯一にして最大の弱点である炎上に巻き込まれやすいという欠点ともいえない欠点が存在している。
だが、しかし……その部分に関しても振り返っていくと、それはそれで逆に枢のすごさが浮き彫りになってきたりするのだ。
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