もういくつ寝ると、お正月
「年越し、みんなで一緒に過ごそうよ~!」
クリスマスも過ぎ、年末における大体のイベントが終わって、ほんの少しだけ時間の余裕ができた頃、零は沙織からそんな言葉を投げかけられていた。
もういくつ寝るとお正月……という歌もある通り、あと何日かすれば今年は終わり、また新しい年が訪れようとしている。
その瞬間を同期たち全員で迎えたい沙織は、零をその集まりに誘おうとしているようだ。
「別にいいですけど、どこに集まるんですか? やっぱ喜屋武さんの家っすかね?」
「やっさー! こういう時に集まるのは私の家っていうのが定番化してきたね~! いいことだよ~!」
からからと笑う沙織に釣られて笑みを浮かべる零。
男性である自分が女性陣と深夜まで一緒にいるというのは若干焦げ臭い雰囲気がしなくもないが、年越しという記念すべきイベントなのだからリスナーたちもその辺のことはわかってくれるだろう。
Vtuberとしてデビューしてから初めて迎える年越しには、零自身も多少なりとも特別な感情を抱いている。
今年の総括的な話はクリスマスの配信でやったし、年越しは純粋に友人たちと騒ぎながら新しい年を楽しく迎えたいなと考える彼へと、同じ気持ちであろう沙織が言った。
「零くん以外のみんなからも参加の返事をもらってるし、大晦日は全員で楽しく過ごそうね~! 年越しそばはお姉さんお手製の沖縄そばを振る舞っちゃうから、楽しみにしててよ~!」
「おお、いいっすね! 期待してます! ……そういえば、喜屋武さんは地元に帰省したりしないんですか?」
「一応、その予定はあるよ~! 正月衣装のお披露目とかもあるし、一日と二日は普通に配信して、三日から少しお休みをもらってうちなーに帰るつもりさ~! スイちゃんもその頃には地元に帰るって言ってたし、ちょうどいいかな~、って!」
なるほど、と零が小さく頷きながら呟く。
この頃になると正月に【CRE8】公式チャンネルにて投稿が予定されている動画の収録も終わって、現在は新年一発目の新衣装お披露目配信の準備に大半の面子が取り掛かっている時期だ。
一月一日のタイムスケジュールも運営主導の下で作られているし、そこが実質的な年末年始のゴールだろうなと考えた彼は、沙織へと言う。
「んじゃ、帰省組がのんびりしてる間は居残り組で配信を盛り上げますかね。ご家族と過ごすのも久しぶりでしょうし、のんびり羽を伸ばしてきてください」
「ありがとうね~! 私たちが戻ってきたら零くんたちが入れ違いで正月休みに入るだろうし……それまではよろしくお願いするさ~!」
「はいはい、任せてくださいね。んで、話を大晦日に戻すんですけど、その日は配信ってやる予定ですか?」
「う~ん……やるとしても普段のプラットフォームではやらないかな~? ほら、SNSの機能でスマホでやれる音声だけの配信があったと思うから、やるとしたらあれを使うと思うよ~」
折角の年越しカウントダウンなのだからリスナーたちと一緒に過ごしたい気持ちもあるが、たまにはそういうのを抜きに仲のいい友人たちだけで過ごしたいという気持ちもある。
先輩や他事務所のVtuberたちがカウントダウン配信をやることもあるだろうし、自分たちはSNSで呟くなりなんなりして五人だけで過ごすのもありかなと、そういった意味合いを含む沙織の言葉に了解の返事をしつつ、零は時計を見て時間を確認した。
「ああ、すいません。ちょっと今から薫子さんとの面談があるんで、一旦抜けます。詳しい話は帰ってきてからでも大丈夫ですか?」
「うん、平気だよ~! 今年最後の面談だし、叔母さんと色々話してきなね~!」
「ありがとうございます。じゃあ、また後で」
そう挨拶をしてから沙織との通話を切った零は、少し急ぎ目に出掛ける準備を始めた。
デビューしてからおよそ八か月、自分をこの業界に招き入れてくれた薫子には色々と話したいこともあるし、今日はちょうどいい機会だ。
それに、おそらくは今年中に彼女と会うのは今日が最後になるだろう。
目前にまで迫った事務所初の3Dライブ配信の準備も最終段階に入っており、薫子が目が回るほどに忙しい日々を送っているのは明白だ。
そんな中でも所属タレントたちに直接会って、今年の総括や来年の抱負などの話をしつつ、年末の挨拶をしようとしてくれる薫子の熱心さに感心しながら、零は外出用の靴を履く。
トントン、と足踏みをしてから玄関の扉に手をかけた彼は、叔母と今年最後の面談をすべく、ドアを開けて寒い冬の街へと飛び出していくのであった。
――――――――――
新年あけましておめでとうございます!
正月に大晦日の予定を話すお話を投稿するのってどうなんだ……?
まあ、それはさておき、昨年は格別のお引き立てを賜り、本当にありがとうございました!
今年も『Vtuberってめんどくせえ!』及び烏丸英をよろしくお願いいたします!
2023年は今も並列で投稿してる『忍者と姫』をはじめ新作も書いていきたいですし、更新がストップしている過去作もどうにか復活させたいですね。
とにもかくにも、今年も皆さんに楽しんでいただけるような物語を書けていけたらなと思っております!
改めまして……どうぞ今年もよろしくお願いします!
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