復活した零くんのご報告、死んだあいつからの忠告
「本当に……ご心配、ご迷惑をお掛けしました! 阿久津零、無事に復活しましたんで、今後ともよろしくお願いいたします!」
「うえ~い! お帰り、零くん!!」
「元気になってくれて本当に良かった……!」
【CRE8】本社、談話室。そこで自分の励ましに一役買ってくれた面子に囲まれた零は、彼女たちに頭を下げながら感謝の気持ちを伝えていた。
無事に復活した彼へと拍手を送りながら、そのことを心の底から喜びながら、沙織たちもまた笑顔で彼へと話しかけていく。
「巨乳好きのあんたがたらばのたわわなたらばに反応しなかった時にはもう終わったと思ったけどね……こうして元に戻って何よりだわ」
「そうだった! ちょっと零くん、そこで止まってて! お姉さん、どうしてもリベンジしなくちゃだから!!」
「急に何言ってんですか、あんたは!? っていうか、秤屋さん!? あんたの不用意な発言のせいで面倒なことになってるんですが、その件について何か言うことは!?」
「いいじゃない。デカパイに包まれて下半身も元気にしてもらいなさいよ」
「言い方ぁ!! あんたふざけてんじゃねえぞ!?」
「あわわわわ……! お、落ち着いて、落ち着いてぇ……!」
両腕を広げて抱き着こうとしてくる沙織を牽制しつつ、この事態を招いた天へとツッコミを入れる零。
陽彩はそんな混沌極まる状況に大慌てしており、有栖はその全てを見つめながらくすくすと笑っている。
「なんか、日常が帰ってきたって感じだね。ドタバタで楽しい、私たちの毎日って感じがする」
「本当にね! 火種があちらこちらに転がってる、一切油断できない日常だよ!!」
沙織の腕の中に天を送り込み、代わりにハグさせることで危機を脱した零が息を荒げながら言う。
たらばのたわわなたらばに密着している天は驚異の胸囲格差をこれでもかと教え込まれ、死んだ目をしながら天井を見上げていた。
「で、でも、本当に有栖ちゃんってすごいね。その、おっぱいにも無反応だった零くんをここまで立ち直らせたんだもの……」
「私一人の力じゃあないよ。陽彩ちゃんたちが手伝ってくれたお陰だって。ね、零くん?」
「まあね。陽彩さんたちにも本当に感謝してるよ。ありがとう」
「え、えへへ……! ぴ、ピンチの時には手を貸すよ。それが友達……でしょ?」
嬉し恥ずかしそうにはにかみながら、自分が友達の役に立てたことを喜ぶ陽彩が二人へとそう告げる。
二人もその言葉に大きく頷き、仲間として、友人として、助け合うことの素晴らしさを実感していった。
「……これからもさ、しんどいことがあって凹んだり、しょぼくれたりすることがあると思う。そんな時はまた今回みたいにみんなに甘えることにするよ。だから、有栖さんたちも凹んだ時には俺に甘えてね。助けられっぱなしとか、性に合わないしさ」
「うん! ……本当につらくなった時はちゃんと言ってね。また、ぎゅってしてあげるから……!」
今回の一件を経て、零はまた一つ成長した。
つらい時、自分一人でどうにかしようとせずに誰かに頼る。そんな強さを身につけることができた。
そして、それが弱さではないということを理解した彼は、自分のことを思いやってくれる有栖と微笑み合いながらそんな会話を交わす。
意味深なその会話と、二人の表情を見た陽彩は顔を真っ赤にするとあわあわといった様子で零たちへと問いかける。
「あ、あのっ、ぎゅ、ぎゅってするって、ど、どういう意味……? ままま、まさか、そ、そんな関係に……!?」
「ああ、いや、違うよ? そこまではいってないっていうか、陽彩さんが考えてるようなことがあったわけじゃあないし……」
「そ、そこまではいってないって、どこまではいったの!? ぼぼぼ、ボクを一人だけ除け者にしないで!」
「だ、大丈夫だから。別にそんなんじゃないから……落ち着いて、陽彩ちゃん」
「あうぅぅぅ……! これが仲良し男女グループの中で生まれるあれこれなんだ。カップルになった二人がイチャイチャするのを間近で見る羽目になるんだぁ……」
頭を抱え、その場に蹲って到来するであろう未来を妄想した陽彩が泣き言を口にする。
彼女を誤解させてしまったことを申し訳なく思いつつ、苦笑を浮かべてさてどうしたものかと零と有栖が考える中、そんな三人の下へ不穏なオーラを纏った何かが近付いてきた。
「オォォォォォ……! 匂う、匂うぞぉ……! これは坊やと嫁さんとその友人が奏でるてぇてぇのフレグランスだぁ……! クンカクンカ……!!」
「ぴ、ぴえぇっ!?」
「うおおっ!? か、加峰さんっ!? え、あ、か、加峰さん……ですよね……?」
聞き覚えがある(あり過ぎる)声に驚いて振り返った零だが、そこに立っている人物の姿を見た彼は、その人物が自分の心当たりと同一人物なのかどうかわからずに戸惑ってしまった。
見た目は間違いなく梨子なのだが……どうにも今の彼女は、立っているのも厳しいとばかりに弱々しく疲れ果てている。
梅干しを食べているかのように窄まった口と、しょぼくれた様子で閉じられた目をしている彼女へと零が質問を投げかけてみせれば、梨子はそのままばたりと談話室の床にぶっ倒れてからこんなことを言い始めた。
「お、おお、ぼ、坊や……自分はもうだめっす。ここでお終いっす……でも、最期に坊やに会えて、本当に良かった……!」
「な、なにがあったんですか!? こんなに疲れ果てて……!!」
「う~ん、多分だけど任された仕事が一切進んでなくって、ブチ切れた薫子さんに取っ捕まって今までカンヅメ状態にされてたんじゃないかなぁ?」
「ぐふっ、だ、大正解……! 久々に鬼になった薫子さんを見たっす……」
「あ、つまりは自業自得か。心配して損した」
「心配して、構って、一生懸命頑張った自分を褒め称えて、ひーちゃん……!」
弱ってはいるがノリは普段通りの梨子の姿に、多分こいつは大丈夫だろうと判断した三人が彼女を心配するのを止める。
そんな中、カッと目を見開いた梨子は、零たちに向けてこんなことを言い始めた。
「ぼ、坊やたちも他人事じゃあないっすよ。これから先、みんなも自分みたいになるんですからね……!」
「え……? それ、どういう意味っすか?」
締め切りをぶっちぎりまくったせいで限界まで仕事をする羽目になった梨子の意味深な言葉に首を傾げた零が彼女へとそう聞き返す。
その言葉を待っていたとばかりに口元をゆがめた梨子は……自分を見つめる三人へと、その答えを言ってのけてから息絶えるのであった。
「ね、年末年始がやってくる、っす……!! がくっ」
――――――――――
本来ならここで短編が終わって第六部に入る予定だったのですが、順番を変えたのでまだ短編が続きます(笑)
六部の開始をお楽しみに!
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