さあ、幕開けだ

 ――声劇コラボの準備期間は、瞬く間に過ぎていった。

 細部までしっかりと詰め、効果音やBGMのタイミングまで記載された台本が仕上がり、それを元に練習が行われ、その間に裏方組が各キャラクターのイラストや使う音楽を作っていき……急ピッチで行われていく作業の中で、劇の完成度は飛躍的に高まっていった。


 活発に意見を出し合い、より良い表現を模索し、その中に自分の色を込める。

 初心者も経験者たちにアドバイスをしてもらって技術を向上させていき、短期間で磨いたとは思えないほどの演技力を身につけた。


 劇自体には参加しないが、しゃぼんやマコトのようなイラストや音楽の提供者たちも含めれば、このコラボの規模は相当なものといえるだろう。

 参加者たちを取りまとめる立場にある紗理奈は大きなプレッシャーを感じているだろうが、それにも負けじと彼女が頑張ってくれている。


 そして、発起人兼脚本担当である枢もまた、自身の役目を果たすべく努力を続けていた。

 ナレーターとして声劇を進めていくというのがそれだ。


 劇の始まりを告げる第一声を担当することになった彼もまた、結構な重圧を感じている。

 ボイス収録すらしたことがなかった枢にとってはナレーションという役目はかなり大変で、一から十まで出番のあるそれと悪戦苦闘していた。


 あまり感情を込め過ぎず、されど無感情にはしない。その塩梅を調節するのが、本当に難しい。

 ぼそぼそという声になってもいけないし、はっきりと喋った上であまり大きな声にならないようにするというのも地味に難易度が高いものだ。


 こういったことに慣れているであろうライルならばあっさりとこなしてくれるのだろうが、彼にはもっと難しい本番時の裏方を任せている。

 どのタイミングでどの音楽を流すとか、立ち絵を表示させるとか、そういったナレーターと同等かそれ以上に困難な仕事を任せているライルにこれ以上の負担をかけるわけにはいかない。

 他のVtuberたちも各々の役を一生懸命に極めようとしているのだから、自分だって頑張るべきだと……そうやって枢は自分を鼓舞し、役目を果たすために努力を重ねていった。


 一日、また一日と時間が過ぎ、本番が近付いていく中、ファンたちの反応も日に日に大きくなっていく。

 キャストとその立ち絵、役が公開される度にSNSやスレッドで騒ぐ彼らは、このコラボに多大な期待と不安を抱いているようだ。


 その間に逮捕された【トランプキングダム】のメンバーの有罪が確定し、罰金刑が課されたというニュースが駆け回ったお陰でまたしても騒動が過熱してしまったこともあり、彼らと同じ事務所に所属しているライルたちの下には非難の声が幾つも投げかけられている。

 それでも、声劇のメンバーは彼らを庇い、仲間として扱い、共にコラボを成功させるために手を取り合って歩み続けた。

 事務所の代表である剣山一聖の行方がわからないという火種となり得る部分もありはしたが、それでも枢以下一同はただ前を向き、進み続けた。


 そういった努力の結晶が今日、この場で披露されようとしている。

 声劇コラボ本番、配信開始まで一時間を切った頃、全ての確認を終えて演者も裏方も揃った通話チャンネルの中で、発起人である枢が代表として演説を行っていた。


「……ついに、本番の日を迎えました。決して長いとはいえない準備期間の中、全力で作業や練習に当たってくれた皆さん、本当にありがとうございます。呼びかけをした時にはここまで大勢の人たちが集まってくれるとは思いませんでしたし、こんな大規模なコラボになるとも思っていませんでした。こんなにも沢山の人たちに協力してもらえて、嬉しかったです」


 枢の話を、集まったメンバーは黙って聞いている。

 芽衣も、ライルも、澪も、二期生たちも……過酷ながらも得るものも多かった日々を駆け抜けた彼の思いに耳を傾けていた。


「こんなふうに話してますけど、まだ終わったわけじゃなくって……ここからが本番、始まりなんですよね。あとはもう、全力で今まで積み重ねてきたものを舞台の上で出すだけです。演者さんたちは楽しむことを忘れないで、裏方さんたちも一緒に祈りながら見守っていてください。やってやりましょう。俺たちならできる、そう信じています」


 まだ慣れない様子ながらも自分の想いを言葉として伝えきった枢へと、一同からの拍手が飛ぶ。


 刻一刻と近付く本番。最終確認を終えた面々が待機し、それぞれの反応を見せる中、全員からの準備完了の報告を受け取った枢は、最後にこう告げた。


「さあ、幕開けだ。見ている奴らの心を、震わせてやりましょう!!」



――――――――――――

お話の最中に本当に申し訳ないんですが、ちょこっと書籍についての話をさせてください。

二巻出せないかも!という話は以前にさせていただいたと思いますが、そこから皆さんに協力していただけたお陰で一歩前に進むことができました。

まだ決定したわけでもなく、厳しい状況であることには変わりませんが、可能性が生まれたのは皆さんのお陰です。本当にありがとうございます。


その上で、厚かましいお願いだとは思っているのですが、もしよろしければもう少しだけご協力いただけると嬉しいです。

ここまで読んでくださっている方は既に書籍を購入してくださっていると思いますので、もっと買って!とか言うつもりはありません。お金は大切にしてくださいね!

自分が馬鹿みたいに宣伝すると思いますので、よければそれを拡散していただけると嬉しいです。


……あ!まだ買ってない人はどうか買ってやってください!

Amaz○nさんも紀伊○屋書店さんも地味に売れて再入荷を繰り返してるので、こういう実績が積み重なればワンチャンが通るかもしれないんです!

大したお礼はできないと思いますが、また短編を書くことでどうにか恩返しをできたらいいな……と思っております。


以上、烏丸からのお願いでした。お目汚し、申し訳ありません。

※お詫びとして18時にもう一話投稿しますね! またこんな感じの宣伝をするかもしれないんで、そしたら同じようなことします(笑)


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