PマンVS中毒怪獣リア・アクエリアス
『C-マートにお越すの皆さん、こんにぢは! 【CRE8】二期生、リア・アクエリアスです!』
「おっほっ! 津軽弁バージョンキターッ! リア様、今日もかわいいですぞ~……!!」
軽快な音楽をバックに流れる、特徴的な津軽弁。
普段よりも訛りを抑え気味にしている綺麗なその女性の声が誰であるかなんて、【CRE8】のファンならば一瞬でわかる。
ほんわかとした喋り方をするリアのかわいらしいナレーションによって一気にのどかになったコンビニ内では、大勢のファンや偶々店を訪れていた客たちがこぞって彼女の話に耳を傾けていた。
『現在、Cマートさんでは、わーたち【CRE8】二期生どのコラボキャンペーン開催中! 対象商品買うど、こごですか手さ入ね限定クリアファイルをプレゼントすてまります! 数量限定、速ぇ者勝ぢだはんで、欲すいふとがいだらお早めに! だよ!』
コラボキャンペーンを行った際の定型文とでもいえるナレーションを行うリア。
この辺りの台詞は基本的な部分は共通しつつ、各個人によって少しずつ雰囲気を変えているのだろうが……リアのそれは実に彼女らしさが出たものとなっている。
やっぱり方言は強いな、と自分たちだけでなく店にいる誰もがこのナレーションに聞き入っている様子を確認して頷いた界人は、彼らと同じように自分もまたリアの心地良い声に耳を傾けていった。
『わーのおすすめ商品は、Cマートさんオリジナルデザートのミルクレープ! 柔らがぐで甘ぇ生地どクリームのハーモニーがだまねんだ! 甘ぇもの食ってしょっぱぇものが欲すくなったっきゃ、パンコーナーのBIGサイズホットドッグがおすすめ! ボリュームたっぷりだはんで、男のふとでも満足でぎるど思います。まあ、わーにはわんつか物足りねんだげどね……』
「ああ、なんか、こう……いいですねぇ……!」
「そうですなあ……! かわいいが満ち満ちておりますぞ~……」
明るい雰囲気で自分が美味しいと思った商品をおすすめするリアのナレーションは、上手く形容できないが心がほんわかとする微笑ましいものがあった。
声を聞いているだけなのに、彼女がニコニコ顔でこのナレーションを収録しているであろう姿が想像できた界人が隣の男へと一気に乏しくなった語彙力で同意を求めれば、彼もまた思考が蕩けた笑みを浮かべながら首を縦に振ってみせる。
まるで孫娘のお遊戯会を見ているような気分に包まれる界人以下店内の人間全員は、リアのナレーションを聞きながら仏のような何か悟りを開いたような慈悲に溢れた表情を浮かべていた。
『こったごど話すちゃーら、お腹空いでぎでまりますた! わーも早速、Cマートさんでおすすめすた商品買ってくるべど思います! コラボキャンペーンについで詳すく知りたい方は、Cマートさんの公式サイトチェックすてけ! 以上、リア・アクエリアスですた! 次の放送は朝の九時四十五分頃、羊坂芽衣さんが登場すます! じゃあ、ばいば~い!』
最後まで明るくかわいらしい津軽弁でナレーションを行ったリアが、全ての宣伝と次の二期生にバトンを渡した後で放送を終わる。
彼女の声が途切れてからも数秒間は立ち止まったままの客たちであったが、不意に全員が動き出すと共にパンコーナーとデザートコーナーに分かれて商品をかごの中に放り込み始めた。
きっと今、リアがおすすめしたミルクレープとホットドッグを買おうとしているんだろうなと思いながら、二期生の妹分であるリアの購買意欲をそそらせる力に驚愕する界人。
その隣で拳を握り締め、天を見上げながら満足気な表情を浮かべてしきりに頷き続けていた男は、最推しの放送を聞いた感想を界人へと述べ始める。
「……実はなんですが、リア様の放送は二パターンあるんでござるよ。今のは方言バージョンでしたが、第一回目の放送はクールな無口キャラバージョンでおすすめしてた商品も他のものだったんです……!」
「それはそれは、一粒で二度美味しいって感じですね!」
「ふつくしいとかわいいを一人で担当できるだなんて、やっぱりリア様はいい……素敵……! 【CRE8】も二つ分のナレーションを収録してくれてありがとう……しゅき……一生ついてく……!!」
無口キャラと方言キャラ、どちらのファン層にも配慮した事務所のリアへの特別待遇に涙を流さん勢いで感激しながら感謝する男。
彼の気持ちが痛いほど理解できる界人もまた、うんうんと何度も頷きながら初のコラボ店内放送を聞いた感想を口にする。
「これは本当にかわいいし、無口バージョンのナレーションも聞きたくなりますね。他のメンバーもそうなんでしょうけど、リア様は特にお客さんの心をくすぐるのが上手いっていうか、ついつい甘やかす方向で動いちゃうっていうか……」
「うんうん、そうですな! 拙者、また明日もナレーション二つ分聞かなきゃ……! もう完全にリア様のナレーション中毒になってる……戻れないやばいやばい……!」
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