祝福と、不安と

『【ペガサスカップ】優勝おめでとうございます!! 今後他の方とコラボする予定はありますか?』


「こういう感じのマシュマロ、結構送られてきてるよね。優勝おめでとう! も、これから別のVtuberさんとコラボしたりチーム組んで大会出たりするの? も、どっちもいっぱいボックスに入ってる」


「前者に関しては本当にありがとう! の一言に尽きるよね。マシュマロとしては、後者の方がメインになるのかな?」


「やっぱこれからの活躍に期待されてるんだよ。特にしずくちゃんはバンバン大会に出て、活躍してほしいと思われてるんだと思う」


【それはそう。ウオミーはFPS以外も上手いから、色んなゲームの大会に参加してほしい】

【チーム戦じゃなくてソロでもいいからね。格ゲーとかレースゲームとか、そういう大会ちょくちょく開催されてるし】

【大会に出ずともコーチとして他のVtuberさんと絡むってのも面白そうだと俺は思うな!】


 続いてのマシュマロは、三人が出会うきっかけになった【ペガサスカップ】で優勝したことへの祝福と、その成績を加味しての今後の活動についての質問だった。

 前者に関しては感謝の気持ちを伝えることで回答を終えた三人は、続いて後者の方について話し合っていく。


「枢くん、【VGA】の人たちとコラボしようって誘われてたよね? あれ、どうなったの?」


「あ~……あれね。割と真面目に話を進めようとしてたんだけど、話が出たコラボの直後に夕張さんたちめっちゃ炎上したじゃん? そのせいで絡めなくなったから、見送りになりました」


「あれに関しては夕張さんと三三さん凄く反省してたよ。枢くんにセクハラした上に炎上に巻き込んじゃって申し訳ないって言ってた」


【くるるんフルーツバスケット事件かwww ごく最近のことなのにすげー懐かしく感じるwww】

【メロン、スイカ、レモンに囲まれたと思ったらパイナップルが全て蹴散らしたでござる、ってやつねwww】

【でも結果として燃えたルピアたちの尻拭いを復帰直後の穂香がやったお陰でいい感じに丸く収まったし、穂香のフォローをするっていうくるるんの役目は果たされたともいえる】


 割と直近の出来事であるその事件について語りつつ、同じく【ペガサスカップ】にて親交を深めた他事務所のタレントたちとの絡みについて語っていく一同。

 そんな中、しずくの発言を受けた芽衣がふとあることに気が付くと、彼女へとこう問いかける。


「あれ? その口振りから察するに、しずくちゃんって【VGA】の人たちと連絡取ってたりするの?」


「あ、うん。そんなに親しいってわけじゃあないけど、ゲームのことに関してちょくちょく話す程度には仲良くなった……かな?」


「凄いじゃん! 大会で生まれた絡みをしっかり活かしてるじゃん!」


「う、うん……コラボとかもしようって話にはなってるけど、さっき話した通り、夕張さんたちも結構炎上したし、緑縞さんも復帰してまだ間もないじゃない? だからもう少し状況を見てからやることになると思う」


【ウオミーに友達ができてる! やったぜ!!】

【ええやん。別事務所のお友達とか素敵やん】

【よかったねぇ、ウオミー……!】


 初出しの情報となる、【VGA】所属タレントとのコラボが計画されているという話を聞いたリスナーたちがしずくの成長と交友関係が広がったことを喜ぶ中、芽衣は親友のおずおずとした態度からちょっとした違和感を感じ取っていた。

 嬉しさよりも不安の方が勝っているしずくの様子から何か良くないものを感じ取った彼女は、友人に対してこう問いかける。


「しずくちゃん、ちょっと緊張気味かな? やっぱり一対一で誰かと話すのは不安だったりする?」


「あ、いや、その……そういうわけじゃあないんだけど……えっと、夕張さんたちとコラボしたすぐ後から、こういうマシュマロが届くようになって……」


 芽衣からの促しにも似た話の振られ方をしたしずくが、やや迷いながらも抱いている不安の元凶を友人とリスナーたちへと開示する。

 カチカチというクリック音が響いた後、画面に表示されたのはあまり笑えない内容のお便りであった。


『うおみーこれから男プロと絡み出したりしないよね? うおみーにはVの範囲でやってほしい。』

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