こいつもこいつで、武器になる!
【わくわく、わくわく!】
【今日の配信楽しみにしてた! 全裸待機!】
【いつもより人多くね? 注目されてるんだなぁ】
そして迎えた新企画始動の日、マリの配信には普段の倍近い視聴者が集まっていた。
といっても、普段が200名程度であるからそれを倍にしたとしても大した数にはなっていないのではあるが……それでもいつもより多くの人たちが配信を観に来てくれていることは間違いない。
程良い期待と注目にいい感じの緊張を抱きながらマイクをONにしたマリは、集まってくれているリスナーたちへとお決まりの台詞での挨拶を行う。
『はいはい、こんアルパ~! アルパカ系Vtuberのアルパ・マリで~すっ! 今日も配信観に来てくれてありがとうね~!』
普段よりも多くのリスナーがいることを考えて丁寧めな自己紹介を行った後、呼吸を整えるマリ。
この企画が吉と出るか凶と出るかはわからないが、自分は準備してきたものをぶつけるだけだと考えながら、彼女は本日の配信企画を始めていく。
『で、だ……今日は告知していた通りの新企画をやっちゃうよ! 題して、【しくじりVtuber! 私のようになるな!!】で~すっ!』
【イエーイ! 新企画ー!】
【パクリじゃねえか!! いや、どこも似たような企画やってるけどさ!】
【攻めた配信やってる&思いっきりやらかしたマリちゃんだからこその企画だわwww】
どこかで聞いたようなタイトルの新企画だが、リスナーたちはこれを面白いと思ってくれているようだ。
キャッチーさとわかりやすさが両立されているこのタイトルは明らかなパロディなのだが、この程度ならば十分に許される範囲だと考えていたマリはその予想が当たったことに安堵する。
掴みは上々だと確かな手応えに小さな笑みを浮かべた彼女は、そこから明るい雰囲気で企画内容についての説明を行っていった。
『え~、この配信の内容だけどね……何故だかみんな、なんとな~くわかってるんじゃない? やらかしたVtuberに失敗談を語ってもらうと共に反省点を挙げてもらって、この配信を観てくださっている皆さんが同じ失敗をしないような講義を行う配信となっておりま~す! わかりやす~い! 第一回の講師はチャンネル主兼企画立案者の私、アルパ・マリです! よろしくぅ!!』
【本当に何故だか聞いたことがある内容だwww でもマリちゃんらしいっちゃらしいよねwww】
【第一回の講師を超えるやらかしをやってしまった者は現れるのでしょうか……?】
【自ら黒歴史を掘り返していくのか……(困惑)】
説明を受けたリスナーたちの反応も悪くはない。ツッコミを入れたり戸惑ったりしているものの、大半がいい感じに乗ってきてくれている。
流れるコメントを確認しながらそう考えたマリは、自分の考えが間違っていなかったことを確信して心の中で大きく頷いた。
(思った通り! こいつはデカい武器になる!!)
マリのVtuber人生を変えてしまった炎上だが、見方を変えればこれもまた一つの武器となる。
反省期間を経て、しっかりとそれを償った上で自分の過去を反面教師として提供するこの企画なら、話題性も注目度もばっちりだ。
もちろん、多少は荒れることを覚悟していたが……想像よりもずっとリスナーたちからの印象は好意的であるように思えた。
『じゃあ、早速だけど解説していくね~! 私が何をやらかして、その結果どうなったのか? これはVtuberだけじゃなくってインターネットに携わる全ての人の参考……というよりかは反面教師になるだろうから、しっかりと見ていってちょうだい!』
集まったリスナーたちへとそう言いながら、用意してあったイラストや原稿を表示してわかりやすく自分のやらかしとその結果を解説していくマリ。
普段の配信よりも早く流れるコメント欄を見つめる彼女は、この企画内容に確かな手応えを感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます