大会参加の、意思表明
【かわいい(かわいい)】
【かみかみウオミーかわいい】
【カミミーかわいい】
大事なところでポカをやらかした陽彩であったが、リスナーたちからの受けはむしろ上々であるようだ。
だがしかし、彼女の愛らしい部分にばかり目がいってしまったせいで本当に伝えたい部分が注目されていないことに気が付いた零は、苦笑を浮かべると共に陽彩の跡を継いで再度告知と補足の説明を行っていく。
「うん、まあ、はい。っつーわけでね、1か月後に開催される【ペガサスカップ】に俺と魚住先輩がチームを組んで出場させてもらうことになりました。既に主催者にも出場の申し込みは済んでて、参加チームの1つとしてカウントされてる状態です」
【えっ!? ウオミースタバトの大会に出場するの!?】
【こういう大会にしずくが出るの初めてじゃない? これまで参加拒否ってたのに、急にどうして?】
【ウオミーのかわいさに脳がやられてたが、改めて聞くとこっちも結構デカい告知だった】
大人気FPSゲームである【THE SUPERSTAR BATTLE ROYALE】は、リリース後間もなくして開発元の会社提供の下に賞金付きの大会が開催され、それ以降も増加する競技人口に応じて様々なイベントが催されている。
オフライン、オンライン問わずに開催される大会もその1つで、特にプロゲーミングチームが主催する公式大会は、定期的な開催頻度も相まって高い注目を集める人気コンテンツの1つだ。
そんな大人気ゲームであるスタバトの、日本における最も有名な公式大会が【ペガサスカップ】……プロゲーミングチーム【ペガサスゲーミング】が主催する、人気ゲーム実況者、配信者等を集めた大イベントである。
1回の開催から人気を博した大会は、現在に至るまで年に数回の頻度で開催され続けており、その度に注目と盛り上がりを増し続けている。
その【ペガサスカップ】に、我らが【CRE8】から魚住しずくと蛇道枢が代表として出場すると聞いたファンたちが早くも熱狂と興奮を滾らせる中、零から再度話のバトンを受け取った陽彩が、更に詳しい解説をし始めた。
『み、みんなも知っての通り、これまで【ペガサスカップ】には何人ものVtuberさんが招待を受け、参加してきました。【ペガサスゲーミング】さんはボクのことも招待してくれてたんだけど、ボクがこんな性格だからって理由で辞退し続けてたんだ。でも、今回はちょっとルールが変わって、選ばれた20人の代表者が条件を満たす2名のメンバーを誘ってチームを作って、そのチームで大会に参加する形になった。これならいきなり見ず知らずの人と話さなきゃいけないなんて事態は避けられるから、コミュ障なボクでも参加できるかなって思って、それで――』
「チームメンバーの1人として、俺を誘ってくれたってことっすね。こりゃあ結構な重役を任されちまったなぁ……」
『【ペガサスゲーミング】さんの方でもついさっき公式SNSアカウントの方で代表者20名の発表があったから、このタイミングで出場することをカミングアウトさせてもらいました。残るもう1人のメンバーに関しては、また別の機会に発表させてもらいます。1か月後の大会に向けて調整を重ねていくから、応援をよろしくお願いします! ……やった、噛まずに言えた!』
【おおお! ついにウオミーもペガサスカップ出場か!! CRE8の代表として、鍛え抜かれた腕前を披露してやってくれい!】
【確かに枢ならしずくにないコミュ力で補佐ができるし、配信を観る限りセンスも抜群だからな。いいところに目を付けたよ】
【しずくが大きな大会に出場してくれるだけで嬉しい。くるるんも、まずは初めての大会を楽しむことを考えてスタバトをプレイしてね】
とりあえずの報告ではあるが、配信自体のいい雰囲気のお陰かリスナーたちはこのニュースを大喜びで受け止めてくれているようだ。
彼らの反応に安堵した2人は、今度こそ配信の枠を落とすために締めの挨拶を行う。
「これで告知も終わったんで、配信を締めさせてもらうぞ~! 今日も観に来てくれてありがとうな。魚住先輩も、本当にありがとうございました」
『こちらこそ、誘いに乗ってくれてありがとうね。……これから1か月間、よろしくお願いします。リスナーのみんなも、応援よろしくね』
【了解&お疲れ様でした! 1か月間のスタバト配信、楽しみに観させていただきやす!】
【楽しかった! 枢も優勝おめでとうな! 大会での活躍も楽しみにしてるよ!】
【3人目のメンバーが誰になるのかも含めて、期待してます!!】
こうして楽し気な雰囲気のまま、無事に魚住しずくをコーチとして迎えた蛇道枢のゲーム配信は終了した。
完全に枠が落ち切るまでの数分間、熱狂の余韻に浸るリスナーたちは配信の感想とこれからの期待をコメントとして2人に送り、1か月後の【ペガサスカップ】へと期待を募らせている。
そういった反応を確認しながら、配信の緊張感から解放された零は、水分補給のために席を外した陽彩が席を外している間に、彼女の誘いに乗って大会に参加するまでの経緯を思い返していた。
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