没クソマロ、その2
『そのレベルのマロが届いてるのかよ……? やっぱエロ系が多い感じ?』
『うん、そんな感じ。枢ならまあ大丈夫だろうけど、200%悪い影響しかないだろうから止めといた方がいいと思うわ』
どうやら、たらばの下に送られているクソマロは性的なものが多いようだ。
仕方がないといえば仕方がないだろうが、あの愛鈴がドン引くレベルのクソマロが大量に届いているという事実と、その上でそのことを全く気にしていないたらばのメンタルに枢は軽く驚嘆していた。
『これとかどうかな~? 配信乗せられると思う?』
『いや……これはギリアウトかな……?』
『う~ん、こっちは絶対にだめだろうし、これもね~……』
『うっわ、えっぐ!? 放送禁止ワードがこんなに並んでるところ、初めて見たわよ!?』
【たら姉、やっぱそういうマロが多いんやな……】
【クソマロっていうよりセクハラマロだよな、これって】
【愛鈴の屁のマロでも結構ヤバかったのに、それが雑魚扱いされるレベルなのか】
愛鈴と相談しつつ、丁度いいレベルのクソマロを選定するたらば。
2人の会話を聞いた者たちは、逆に彼女の下にどんなマシュマロが届いているのかが気になってきた。
自分宛てのクソマロを探していた芽衣も若干気になっているようで、その手を止めて2人の話に耳を傾けている状態だ。
ややあって、ようやく大丈夫そうなマロを見つけたたらばが、それを自ら声に出して読み上げる。
【おぎゃ~っ! おぎゃ~っ! たらばママ、おっぱい飲ませて! バブちゃんにおっぱいちゅ~ちゅ~させて! 僕、お腹ぺこぺこだよ! ママのミルク飲ませてほちいよ~! バブーッ!】
『……枢、なんか一言』
『ッスーー……読まされなくてよかった、かな。これを朗読するのはマジでキツい』
【ガチやん。ガチのクソマロやん】
【これがギリ配信に乗せられるレベルってどういうこと……?】
【おめでとう、バブちゃん。君がクソマロ杯優勝だ】
幼児退行&セクハラという2つの反則技が合体したクソマロの衝撃に空気が一気に静まり返る。
思っていたよりもヤバい……というより、ひどいにも程があるたらば宛てのマロに枢ですら解説を放棄する中、トリを任された芽衣が不安気に口を開いた。
『私、このマロに勝てるレベルのやつがないんだけど大丈夫かな……?』
『勝だねで。勝だねでくれ、羊坂さん。わー、こぃ以上にひどぇものがあるだなんて思いだぐね……』
『むしろ普通のクソマロが欲しいところだから! ホント、クソだね~で終わるマロを頂戴!!』
『大丈夫、どんなマロでもしっかり突っ込む準備は出来てるよ! どんとこい、どんと!!』
唐突に氷河期に突入したかのような寒気を漂わせ始めた配信の空気を払拭すべく、オチとなる芽衣には普通のクソマロを用意してくれと逆に懇願する枢たち。
リスナーたちもまた、たらばレベルのクソマロが連発されては心が耐えられないと、ほどほどのマロが欲しいという要望をコメントとして送っており、それを見て芽衣も安心することが出来たようだ。
『じゃあ、あの……これでお願いします』
ということで、自分が選定したクソマロを取り合えず同期たちへと確認してもらう芽衣。
彼女のスマートフォンに映されている画像を目にした2期生たちは、小さく声を出して笑ってみせた。
『ああ、うん。クソマロだわ。正真正銘、俺たちが求めてるタイプのクソマロ』
『いいねえ、いいねえ! 今、この瞬間だけはこのマロを送った奴のセンスを褒めてやるよ!!』
『ぷっ、ぐぐっ……! ふ、ふふふふふ……!』
『やっぱこういうのって笑える内容な方がいいよね~! しみじみ思うさ~』
それぞれに反応を見せる2期生たちは、おかしなことにクソマロに対して好意的な反応を見せている。
1つ前のマロがあまりにも酷過ぎたということもあり、感覚がバグっている5人が愉快気に笑う中、代表して愛鈴が普段よりも低い声でそのマロの内容を読み上げた。
【芽衣ちゃんがBカップなのは、くるるんに揉んでもらって大きくなったからですか?】
『……というお便りが届いていますが、そこんところはどうなの? 枢くん?』
「ええ、まあ、そうっすねえ……俺が1つ言うとすれば――」
待ち望んでいた(そう言うと語弊があるが)……クソマロの到来に呆れながらも笑みを浮かべた枢がたらばからの問いに応える。
深呼吸を行い、肺に空気を溜め込んだ彼は、それを吐き出すと共にクソ極まりないマシュマロへの回答を吼えた。
『んなわけねえだろ、バーーーーカッ!!』
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