第6問(1人¥1000)
『愛鈴ちゃんを弄るのはここまでにして、第6問にいっちゃいましょう! こちらの問題は義務教育の内容である上、正解した人の数だけ賞金が増えるっすから、張り切って答えちゃってくださいっす!』
『よっしゃあ! ここでさっきの失態を取り返してやらあ!!』
即座に訪れた名誉挽回のチャンスに奮起する愛鈴は、鼻息も荒くモニターを見つめている。
賞金大量ゲットという好機に気合を入れているのは2期生全員がそうで、そんな5人に向けてしゃぼんは6問目となる問題を出題した。
【人間が
『……ねえ、確認なんだけどさ。この問題の答え、本当に義務教育で学んだ?』
『勉強したぞ。中学校家庭科の問題だ』
『そう……記憶にないわ……』
出題された問題の内容を聞いた愛鈴が、意気ごみを一瞬にして萎えさせた真顔で呟く。
顔面を青くしているのは家庭科(というより料理)が不得意な芽衣もそうで、料理出来ないシスターズである2人はお互いに相談をしながら答えを模索していった。
『甘味、酸味、塩味、苦味とあと1つでしょ? そんなのもう、あれしかないじゃない!』
『ですよね? でも、本当にこれでいいのかな……?』
『先に言っとくっすけど、わかってる人たちは発言禁止っすからね? この問題、何を言ってもヒントになりそうっすから』
『わかってますよ。でも、どうなるんだかなぁ……?』
家事スキルが万能な枢と普段から自炊をしているたらば、そして学んだ内容が頭に入っていたであろうリアはそんなしゃぼんからの注意に苦笑を浮かべつつ残りの2人のことを見守っている。
この問題、そもそも答えを知っていないと正解に辿り着くことなんて出来ないんじゃないかな……と、3人が同じようなことを考える中、遂にフリップに各々の考えを書いた芽衣と愛鈴が解答を終え、結果発表の時が訪れた。
『皆さん、解答を書き終えました! では、正解発表……の前に、気になる2人の答えを見てみましょう!』
そう宣言したしゃぼんが、正解発表に先んじて最後まで悩み続けた芽衣と愛鈴の解答を公開する。
そこには、枢たちの予想通りの答えが書かれていた。
【辛味!!】
【からい味】
これが私の答えだ! 文句あるか! と言わんばかりにビックリマークで強調し、口から火を吐く自分のイラストを余白に描いた愛鈴の答えと、それとは真逆に自信なさ気なひらがなで書かれた芽衣の答えを目にした人々が苦笑を浮かべる。
リスナーたちの中には彼女らと同じ答えを思い浮かべた者もいたようだが、芽衣たちを含む同じ解答をした者たちに対して、しゃぼんは高らかにこう宣言した。
『基本味の残る1つは辛味! 残念、不正解っす!!』
『ぴぇっ……そんな気はしてたけど、やっぱりだめかぁ……』
『でもこれ以外に味なんてないじゃない! あとはなに? 金属の味とか?』
『そもそも辛ぇって味じゃなぐで、舌が受げてる刺激らすいだよ。そう、家庭科の先生がしゃべってますた』
『あぁ~っ! 言われてみればそんな話を聞いたことがあった!! なんで今、思い出すのよ~!!』
ひっかけ問題というわけではないが、見事に誰もが考えるであろう解答を書いてしまった芽衣と愛鈴がリアの指摘に頭を抱える。
そんな彼女らをよそに、十分にその反応を楽しませてもらったしゃぼんが、残る3名の解答をリスナーたちへと公開してみせた。
『では、正しい解答をした枢坊や、たらばちゃん、リアちゃんの解答です! 基本味となる最後の1つの味は~……これだっ!!』
【うま味】
【うま味~っ!】
【うまみ(家庭科で習いました!!)】
『はぁ? うま味ぃ? 美味いって味なの?』
『美しい味じゃなくて、カタカナのヒに日って書いて旨味な? まあ、ひらがなの方が一般的だけどさ。表現しにくいけど、出汁の味っていえばわかるか?』
『うま味調味料とかがスーパーで売られてるの見たことない?』
『ああ……あれ、美味しい調味料って意味じゃなかったんですね……』
正解を教えられてもいまいちぴんとこないが、よくよく考えてみれば覚えがあるかもといった感じの答えにしみじみと頷く芽衣と愛鈴。
あのリアですら正解している問題に正答出来なかったことにショックを受ける2人であったが、そんな彼女たちを同期たちが優しくフォローする。
『人間得手不得手があるからね~! 料理に興味のない人はうっかり忘れてても仕方ないよ~!』
『なんだかんだで半数以上が正解して、3000円は獲得してますからね。十分でしょ』
『切り替えで次の問題にいぐべ! まだまだこぃからだど!』
『あったけえなぁ……! よっしゃ! 次こそは正解するぞ!!』
『目標金額の半分は達成してるわけだし、ここから挽回するためにも気を取り直さないと……!!』
『うんうん! これぞ同期の絆ってやつっすねぇ! あ~てぇてぇ、超てぇてぇなぁ……!』
お互いに励まし合い、支え合いながら問題に望む2期生の姿に胸を打たれたしゃぼんが涙を流しながら深々と頷く。
暫くこの感激に浸っていたいところであったが、自分にはMCと出題者という役目があったことを思い出した彼女は、名残惜しさを感じつつもその役目を全うするために気持ちを切り替え、次の問題を出題した。
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