第2試合、代表選定



『月見ぃ? ロマンチックではあるけど、難易度高くない?』


『これは、代表者選びを慎重にしなくてはいけませんね……』


 発表された2つ目のお題に対して、口々に感想を呟く両チームのメンバーたち。


 先の海を舞台とした設定と違って、静かな夜を2人きりで過ごすというムード溢れる状況の中で相手を口説くというのは、簡単そうに見えて意外と難しい。

 少なくとも、1つ目のお題は自分でかなり幅の広い設定を組み上げることが出来たが……こっちはこっちで、月見というシチュエーションとロマンチックな舞台を崩さないようにするという2つの制約が存在していることが厄介だった。


『……誰が行きます? ちなみに私は、全く台詞が思い付かないんですけど……』


『はぁ~……しゃーない。ここは私が行くわ。これでも声優志望だし、演技力ってやつを見せてやるわよ!』


『お、お願いします、愛鈴さん! けっぱってがんばって!!』


 この難題に対して、【CRE8】チームは演技力に定評のある愛鈴を代表者として選択した。

 2期生ウィークの茶番台本を書いている彼女ならば、こういった難しいシチュエーションにも対応出来るだろうという尤もな理由で立候補した彼女に倣うように、【SEASON】チームも代表者が自ら前に出る。


『では、こちらは私が代表を務めさせていただきます。流石に名誉挽回をしておかないと、【SEASON】がイロモノ集団だと思われてしまうでしょうから』


『うぐっ! ご、ごめんって……取り合えず頑張って、すすき!』


『君なら安心して見ていられるよ。なぎさの失態をカバーしてやってくれ』


 【SEASON】チームの代表は、さくらと同じくASMR配信を定期的に行っている秋月すすきだ。

 お淑やかな大和撫子としての振る舞いを見せる彼女だが、経験者としてこの勝負には負けられないという意地があるのか、闘志を燃やしているように見える。


 先のなぎさの失敗のせいで【SEASON】全体に降りかかっている不名誉な状態を払拭すべく戦いに臨むすすきと、難しいシチュエーションに加えてあのたらばの直後というダブルコンボという重圧にも負けずに代表者に立候補した愛鈴。

 第2試合の選手として名乗りを上げた両名を確認したさくらは、軽く呼吸を整えてから戦いの始まりを宣言した。


『両チーム、代表は決まりましたね? では、試合開始です! 先攻後攻を決めた後、『バイカムⅡ』に向けて演技をお願いします!』

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