地獄のような、配信
そんな咆哮を上げながら、次なるクソマロを準備する零。
先の長文怪文書に続いてリスナーたちの前に表示されたのは、それとは真逆の至ってシンプルな文面であった。
『お使いメモ・へびの丸焼き』
『いや、なんだこれ!? 色々と突っ込みたいところはあるけど、まず困惑するわ!』
短い文面だからこその情報不足に陥る零がうんざりとした声を上げる。
そうした後、一呼吸おいた彼は、ご丁寧にもこの短いクソマロへと突っ込みを入れていった。
『まずな、人のマシュマロにお使いメモを貼るな! 次に、へびの丸焼きなんて何処に売ってるんだよ? 最後に、へびつかい座の俺にそれを送ってきたら、それはもうお使いメモじゃあなくって発注書になるんだよ! 今から取りに行きますんで、この品物用意しといてくださいって意味になるんだっつーの!!』
【最悪くるるん焼いときゃ用意出来るもんな】
『そう、それだ! お前ら1つ勘違いしてるってことも言わなきゃなんねえ! 次のマシュマロの突っ込みも併せて、そのことについて言っておくからな!!』
リスナーからのコメントに反応しつつ、次なるクソマロを表示する零。
3つ目のマシュマロも1つ前の物に続いてシンプルな内容で、短い文面を読み上げたリスナーたちがその意味不明さに画面の前で噴き出していく。
『湿ったチワワVSヌメったヘビ』
『これはもう純粋に訳がわからん! 理解不能!! ヌメったヘビは俺だとして、湿ったチワワって誰だよ!?』
【芽衣ちゃんじゃね? 少なくともたら姉はチワワでもなければ湿ってもないじゃん】
【たら姉は人懐っこい大型犬って感じ。芽衣ちゃんは確かに湿ったチワワ感ある】
『おい、地味に芽衣ちゃんを馬鹿にするの止めろ! そこだけ切り抜かれたらまた俺が炎上するだろうが!!』
怪文書に対してのリスナーたちのコメントに火の気を感じた零が大慌てで彼らを止める。
湿ったチワワという単語の話題で燃え上がるだなんて洒落にもならないと思いながら、零は改めて彼らの勘違いを訂正すべく言葉を発した。
「あとな、お前ら何か勘違いしてるけど、俺はへびじゃなくてへびつかい座な? へびそのものじゃあなくって、それを使う側の人間だから! そこんとこしっかり覚えとけよ!!」
【言われてみれば確かにwwwでもどっちにせよ燃えることは変わりないよなwww】
【今から担当星座変えてもらえば? 鳳凰座がいいんじゃない?】
【炎上しても幾度となく立ち上がる男、
『そもそもお前らが俺を燃やさなきゃいいだけの話なんだよ! 人が好き好んで炎上してるみたいに言うんじゃねえ!!』
時々は自分から燃えに行くこともあるが、大半はリスナーたち(と沙織)によって燃やされている零が根本的な突っ込みを入れる。
どこかのアニメキャラクターのような二つ名は確かに格好いいが、その由来が由来だけに拒否感しかない零はそこでジェットコースターのような配信のノリを一度落ち着かせると、自らもクールダウンして静かな(疲れたともいう)声で言った。
『違うだろうがよ。もっとこう、マシュマロ配信っていうのはきゃっきゃしてるようなもんだろ? 普段は聞けないような質問とかさ、リクエストなんかを送ったりしてさ、みんなでわいわい楽しむのがこういう配信の趣旨ってもののはずだろ? どうして俺のところにはこんなのしか来ない? なんだこの地獄のようなノリは?』
そこで言葉を切り、タンブラーを傾けて飲み物を飲む。
マイクが微かに拾う喉が鳴る音に歓喜するリスナーたちが少額のスパチャを投げる中、零は新たなマシュマロを画面へと表示した。
『え~……今しがた届いたマシュマロです。うん、一緒に読み上げていこうな……『初めまして、いつも配信楽しく見させて頂いています。今回はマシュマロ配信を行うとの事で、僭越ながら台詞を考えてきました。もし宜しければ配信で読んで頂きたいです。よろしくお願い致します』……そうそう、これだよ。こういうのが欲しかったんだよ、俺は。いや~やっとまともなマシュマロが来たわ。よっしゃ! それじゃあ、リクエストに応えて台詞の朗読やってみるか!!』
意外にも、実にまともなマシュマロが届いたことに喜んだ零は、咳払いをしてリスナーからの要望に応える構えを見せた。
が、しかし……マシュマロが途中で区切られていることと、画面にも半分しかその文章が表示されていないことを目にしているリスナーたちは、絶対にこの後に何かがあることを察すると共に、このトラップじみた文章への期待を募らせる。
彼らからの期待を一身に背負い、喉の調子を整えた零は……テンションを高めにしつつ、マシュマロの続きに書かれていた台詞を大声で読み上げた。
『くるる、くるくる、くるくるぱー! 炎の業火で燃え尽きる! マジカルCRE8 No.13 蛇道 枢 見☆参!!』
【www】
【草しか生えねえwww】
【やっぱなあwww 絶対にクソマロだと思ったよwww】
【上げて落とす分、他のマロより質が悪いなwww】
思ったよりも全力で馬鹿馬鹿しい台詞を読み上げた零の対応にリスナーたちが湧き、コメントの流れが目に見えて加速する。
それを見ながら、大きく溜息を吐きながら……何もかもがどうでもよくなったかのような表情を浮かべた零は、本当にぐったりとした声で悪態交じりの呻きを漏らした。
『……くるくるぱーなのはお前の頭だ、この馬鹿野郎が』
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