短編・蛇道枢のマシュマロ配信
クソマロ配信、開始
『……は~い、お前らよく来たな。うん、なんと言うか、うん、ね……』
ある日のこと、22時から枠を取った零は、予定ぴったりの時間から配信を開始すると共に、待機していたリスナーたちへとなんとも言えない声で挨拶をしていた。
声だけでなく、表情もどこか浮かない……というか、疲れている雰囲気の彼は、爆速で流れるコメントを確認した後に改めてリスナーたちへと今夜の配信内容を説明していく。
『え~……今日はですね、前々から告知していたとおり、俺宛のマシュマロに回答していくって配信をするんだけれども、さ……いや、もういい。取り合えず始めよう。そうすりゃあ、お前らも大体察するだろ』
そもそもお前ら、この時点で大体何が起きてるかわかってるだろ?
という心の声を必死に飲み込みながら、PCを操作して厳選した(せざるを得なかった)マシュマロを表示する準備を整える零。
溜息を吐きたくなるのを我慢して、配信を開始してから間もない状況とは思えないほどに低いテンションを見せる彼は、早速1通目のマシュマロを画面に表示し、それをリスナーたちへと披露しながら読み上げてみせた。
『オブジェクトクラス Euclid
特別収容プロトコル SCPー813は火に耐性のある部屋に収容されています。
SCPー813は外出が許されています。
SCP-813に取り付けられた追跡装置は取り外しません。
SCPー813には嫉妬心を抱いてはいけません。
説明 SCPー813は日本の10代後半の男性のような姿をしており、手首に蛇を思わせるブレスレットを装着しています。
SCPー813は定期的に飲食をする必要があります。基本的に人が食べるものは食べれます。
SCPー813は蛇道枢を自称し、基本的には誰にでも礼儀正しく接します。
とても仲間思いで、困ってる友達が居れば進んで助けに入ります。
SCPー813は周りの人間がSCPー813に嫉妬すると体が燃え上がり、嫉妬する人間が増えると炎もそれに比例して大きくなります。
SCPー813が生み出す炎はとても熱く、温度は3000度にもなりますが、その炎によってSCPー813が苦しむことは有りません。
いつから身体が燃えるようになったのか質問した際には詳しく答えることはなく、デビューした時からと一言だけ言いました』
初っ端から長文&怪文書じみた内容のマシュマロを読み上げながら、零がリスナーたちの反応を確認する。
思った通り、この内容に驚くこともなく笑っていることを表す『
『おかしいだろうがよ!? なんかもう、ツッコミどころのオンパレードじゃねえか! 参考にしようと思って芽衣ちゃんとかたらば姉さんのマシュマロ配信観たけどさ、こんなんじゃなかったぞ!? もっとこう、楽しくわいわいやっていこう~……みたいな感じだった!!』
【これはこれで楽しいじゃん。わいわいやろうぜ、枢!】
【いや~、濃い! 想像の200%は濃いね!!】
【これでこそ枢の配信なんだよなぁ……!】
『やかましいわ! なんだこの差は? 明らかにおかしいだろ!? お前らも無駄にセンスいいクソマロ送ってくんじゃねえよ! 採用するしかなくなるじゃねえか!!』
【やったぜ。この調子でクソマロ量産していこう!】
【枢に突っ込んでもらうためにクソマロ制作の仕事に就くことにしました】
『今すぐにそんな仕事辞めちまえ! っていうか、何が1番恐ろしいかって、これが1発目なんだよ! 勝負を決めるアッパーとかストレートとして採用されたクソマロなんじゃなくって、試合開始のゴングが鳴った直後に取り合えずの牽制で打たれるジャブなんだよ、これ! それでこの濃さってヤバくねえか? お前らどんなハードパンチャーだ?』
初手、大濃度のマシュマロを紹介しておきながら、後続にはこれに負けず劣らずのクソマロが控えていることを示唆する零の反応にリスナーたちが歓喜する。
お前たちは嬉しいだろうが、こっちは死ぬほど疲れるんだぞ……というツッコミも無駄だと理解している零は、その代わりに今度こそ大きな溜息を漏らすと共に彼らへと恨みがましい口調でこう告げた。
『もう二度とマシュマロ配信なんかしねえ。送られてきたクソマロ全部、焼却処分してやっからな!!』
――――――――――
このお話では、皆さんからいただいた零(枢)へのマシュマロ案を沢山採用させていただきました。
ご協力、本当にありがとうございます! 全部は出せないとは思いますが、バンバン枢に突っ込ませていく予定なので楽しみにしていてください!
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