別の話題、そして違和感
『……次のニュースです。先日、大手芸能事務所【ワンダーエンターテインメント】からCDデビューが発表されたアイドルユニット【SunRise】。当番組ではメンバーに取材を敢行し、日本中からの注目を浴びる彼女たちの魅力に迫りました』
最近話題になっているアイドルグループに関する特集を放送する昼のニュース番組が、そのグループの概要とメンバーを紹介し始める。
美少女揃いの6人組アイドルグループのプロフィールを紹介する映像が終わると共に画面が切り替わり、女性リポーターが彼女たちにインタビューをする様が放送されていった。
「あのアイドルたち、最近結構名前を聞きますよね。何人かはバラエティー番組にも出てるみたいですし」
「そうなの? 私、あんまりそういう話に疎くって……」
「あ~……まあ、俺もそんな詳しいってわけじゃないんだけどね。ただちょっと、よく顔を見るな~……って、思っただけで」
話題を切り替えるべくアイドルグループの話を出した零であったが、その話に花を咲かせられるまで彼女たちのことを詳しく知っていない彼はここからどう話を広げていこうかと悩みながら有栖へと答えた。
この様子から察するに、彼女の方は自分よりもアイドルに詳しくなさそうだし……と、出す話題を間違えたかもしれないと後悔し始めた零に、沙織が助け船を出す。
「【SunRise】……大手芸能事務所である【ワンダーエンターテインメント】が、全国にある養成所から集めた精鋭メンバーを集めて結成された6人組のアイドルユニット。結成自体はもう5年くらい前の話で、表舞台に出るまで結構時間が掛かったみたいだね~」
「へ、へぇ~、そうなんすね! 5年、5年かあ……俺が中学に上がった頃に結成されたんだなぁ……」
「上が24歳、下が18歳だから、最年少の子は零くんと有栖ちゃんと同い年だね。み~んな可愛くて、素敵な子ばっかりさ~」
「私たちと同い年なのに、もう5年も芸能活動を……!? 凄い子なんだなぁ……」
きゃぴきゃぴと騒ぎ、アイドルらしく振る舞いながらインタビューを受ける【SunRise】のメンバーを観ながら有栖がしみじみと言う。
大手芸能事務所が全国から選りすぐった精鋭らしく、それぞれの特色を見せながらリポーターの質問に答えていく彼女たち。
インタビューが終わると、最後にメンバーを代表して1人の少女が前に出て、ユニットと曲の宣伝を行った。
『私たちのメジャーデビューアルバム、【Sunshine!!】がもうすぐ発売されます! 聞いてくれた人たちを元気にする曲が満載ですし、メンバーのソロ曲や新規楽曲も収録されているので、是非是非買って、聞いてみてください! よろしくお願いします!!』
「うわ~……綺麗な子だなぁ。私とは大違いだよ……」
「そんなことないよ。有栖ちゃんも十分可愛いって」
「んぇ……? あ、ありがとう……」
自分を卑下する有栖へと零が率直な意見を申し上げてみせれば、彼女は顔を赤らめて嬉しそうにはにかみながら俯いた。
そんな有栖の様子に気付かずにいる零は、最後に宣伝を行った【SunRise】のセンターと思わしき少女について語る沙織の話へと耳を傾ける。
「
「この人も5年続けてるって考えると、15歳から活動してたんすね。高校入学と同時くらいってことか、すげえな」
「……うん、本当に凄いよ。5年も頑張ったんだもん、アイドルとしてはちょっと遅咲きかもしれないけど、報われてほしいよね」
少し、感情を込めた声色で語った沙織が、TVに映る【SunRise】のメンバーが歌って踊る様子を見つめる。
その表情と、妙に彼女たちについて詳しい沙織の様子に何かを感じ取った零は、思わずその疑問を質問としてぶつけていた。
「喜屋武さん、アイドル好きなんですか? なんか、【SunRise】について詳しいみたいですけど……?」
「……ううん、全然詳しくないよ~! 偉そうに解説したけど、あれ全部あの番組の中で言ってたことだしね~! アイドルのことなんて、これっぽっちも知らないさ~! あはははははは!!」
「あ、そ、そうっすか。俺が聞き逃してただけなんすね……」
「有栖ちゃんと仲良くお喋りしてたからね~! 2人とも可愛かったから、見ている側としてはほっこりしたよ~!」
「あぅ……あんまりからかわないでくださぁい……」
「およ~! 有栖ちゃんはやっぱり可愛いね~! お姉さんの妹にならないさ~?」
「ひゃうぅ……ひぃん……」
零の質問にそう答え、有栖を可愛がり始める沙織。
そんな彼女の回答に一応は納得した零であったが……同時に、何か違和感のようなものを沙織の態度から感じ取ってもいた。
先程まで【SunRise】について話していた時と今の彼女の声色は、明らかに違いがある。
もっと言うならば、今の沙織は本来の彼女の明るい雰囲気を無理に作り上げているようにも思えた。
だからなんなのか? と聞かれればそれまでであるし、無理に突っ込みを入れる必要性も感じられなかった零はそのことを口に出したりはしなかったが、この時確かな違和感を覚えたことは間違いない。
だが、そう大したことでもないし、まだ良くも知らない沙織の態度に違和感があると自分の勝手な感覚で判断するのもおかしなことであると、零はそう結論付けると、このやり取りを忘れることにした。
……ので、あるが……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます