第2話 那月の場合
それは、1月の半ばに突然始まった。
「俺、好きな人ができた!」
那月からの突然の告白に3人はぽかんと口を開ける。
「誰よ。」
ようやく言葉を噛み砕いた薫が、那月の想い人が誰なのかを聞く。
「3年の雨宮先輩って人。最近学校来る時のバスん中で一緒になるんだけどとにかく美人なんだよ!清楚を着て歩いてるっていうか。もう優しさが溢れてる!好き!」
「でも、もう登校日半月しかないだろ。」
聞いてないことまでベラベラと語り出す那月に、現実を修弥が突きつける。
うちの学校は、3年生の2月になると受験のための選択授業で自由登校になる。雨宮先輩がいつ登校するのかは誰にもわからない。
「なんだよ。もう会えないならなんもできないべや。」
翔也が言うと、那月は待ってましたとでも言いたそうな顔で、考えてきたのであろう計画を話しだした。
「そう、3年生に会えるのはこの半月とあとはせいぜい卒業式くらいだ。だからこれからの半月で仲良くなり、卒業式の日に告白をしようと思っているのだよ。」
「卒業式に告白とか青春かよ。…青春じゃん!いいじゃんやっちゃえやっちゃえ!」
青春というワードに反応した翔也が、悪ノリをする。どうやら仲良くなるための作戦はすでに実行しているらしく、挨拶はできる仲になっていたらしい。
「そこでだ諸君、どうにか俺と先輩が2人きりになれるよう良い案をだしたまえよ。」
「なんでお前は上からなんだよ。」
「単純に呼び出せばいいじゃん。告白するんだから連絡先ぐらいまず聞いてこい。」
「それができたらもうやってますー!できないからみんなの知恵をね、ありがたぁく頂こうかと思ってたんですぅ。」
盛り上がる3人をよそに、1人黙り込む修弥。おもむろに口を開くととんでもない事実が発覚した。
「おれ、雨宮…先輩の連絡先知ってる…。」
「「「は!?」」」
「いやいやなんで?え?付き合ったったったん?そんなの俺悲しくて泣いちゃう。いろんな意味で悲しくて泣いちゃう。」
「日本語を喋れよ。でもなんで知ってんの?」
「あー、中学の時の部活の先輩で、、。というか家が近所で昔よく遊んでたりしちゃったりなんかしてた」
那月は心底羨ましそうに修也を眺めていた。そんな那月を置いて、翔也はここぞとばかりに修也を質問ぜめにする。
「じゃあ、幼馴染ってやつじゃん?雨宮先輩彼氏いるとか知らんの?好みのタイプとかは?」
「彼氏はいないとは思うけど高校入ってからは接点ないし知らねえ。好みのタイプとかも興味なかったからしらん。ただ、おれが知る限りでは彼氏はいたことない。はず。」
「なっちゃんがフリーズしてまーす!先生ヘルプです。」
すると突然、那月は修也に向かって話し始めた。
「頼む一生のお願い。卒業式の日、先輩を呼んでくれないか。俺の一世一代の頼みだ。なんでもするから!お願いっ!」
「別にいいけど、結果がどうなっても俺は責任とらないからな。」
「全然!2人きりにしてくれるだけでありがたい!好き好き大好き愛してる!」
「きもいやめろ。」
といった感じで、那月の告白大作戦が先輩たちの晴れ舞台、卒業式に決行されることとなった。
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