第2話 産まれたのは

子どもの頃、自分の出生を両親にインタビューする宿題があった。


まず初めに父に聞いた。わたしはどこで産まれたのか。父は答えた。『千葉県』と。


次は母に聞いた。わたしはどこで産まれたのか。母は答えた。『大阪府』と。


当時の私は生まれた違和感に目をつぶった。関東と関西を行き来していた転勤族の両親だから、記憶が定かでは無いのも仕方がないことだと。


今の私は理解している。時間を掛けて、少しずつ育ててきたしこりの根元はこれなんだと。


血の繋がりが全てではないけれど、実の両親に出生を間違われた事実は、小さな心に根を張った。それは本人ですら気付かない、小さくて丈夫な種だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る