#2 出撃②

11月24日


出撃の1週間前となった今日もジルトレアの本部であるニューオリンズ基地は大忙しだった。



参戦予定艦


航空母艦10隻

強襲揚陸艦15隻

輸送揚陸艦10隻

巡洋艦10隻

駆逐艦20隻

空中戦闘艦6隻(米5、ヨ1)


人員・・・約11万9千名

内、ハワイ基地1万8千名



人類史上最大の戦力を持った艦隊が、ニューオリンズの軍港へと並ぶ。

艦隊の中に潜水艦が見られないのは、最近の情勢を踏まえて、潜水艦の数が縮小されたからである。


そして強襲揚陸艦が多いのは言わずもがな、陸での戦闘がメインだからだ。

その他にも、結界魔法で身を包んだ戦闘機や爆撃機、戦闘ヘリなどが準備されている。


また、今回参戦せるのは、何も軍人だけでは無い。

南米の地理に詳しい専門家なんかも参加している。何しろ、あの流域面積世界一のアマゾン川があるのだ。

他にも砂漠があったり山脈があったりと割と地形が複雑だ。そういう知識に乏しい軍を支えるため、色々な大学の教授などが選ばれた。


ジルトレア本部では、連日激しい議論が続いていた。

しかし、その内容はお世辞にもいいものとは言い難いかった。

上層部の誰もがこれほど大きな作戦には参加した事がない人間ばかり、過去の資料を見ても得られる事が少なく、的外れな意見や議論の質を下げるような質問が飛び交った。また、次期最高責任者の座を狙う人達がなどが意図的に議論を後退させていた。


おかげで、結人と咲夜ももちろん参加していたのだが・・・・・・


【眠い・・・】


【寝ちゃダメですよ、結人さん。いくら12時間ずっと議論をしていとは言え、結人さんが寝てしまったら余計にややこしい事になってしまいます・・・】


円形に座った会議の最中に、隣に座った想い人に愚痴る。

途中で休憩があったとはいえ12時間は長すぎる。こっちはご飯だって食べて居ないんだぞ?

後ろに座っている茜とグレンとスカイラは既に寝ているし、反対側の隣に座っているゼラストさんも目をつぶっている。(多分寝ていない。)ちなみに美月とレネは真面目に後ろの方で座っている。


【せめてセランさんが終了を宣言してくれたらな〜】


【そうですね、あちらさんも大変そうですもんね・・・】


セランと朝日奈は、中央にある地図の上で何度も駒を動かす。戦力的には五分五分か、六四ぐらいで人類の方が有利。ただしそれは何事も起こらなければの話だ。

無人偵察機や人工衛星を使って入念に偵察を行っているとはいえ油断はできない。例えば破滅級UC同士に呼び合う能力があり、海の中や地獄の門から新たな破滅級UCがやってくる可能性だってある。ミス1つで、何か1つで戦況がひっくり返る、そんな状況だ。

おらかじめ緊急事態への対処法を一通り検証していた。


「よし、それじゃあ一旦休憩だ。1時間後に、最終チェックを行う。」


「「「了解!!!」」」



セランの休憩の合図とともに50人以上いる会議の出席者がいっせいに立ち上がり、退散した。


全員が退散し終わった後、残された結人と咲夜は、茜を起こす。


「あれ?もう終わったの?」


「4回目の休憩だって、姉さん。」


「まだやるのか〜相変わらず長いよね〜」


「姉さんはずっと寝てたじゃん」


「聞いてたって〜多分〜」


「・・・・・・はぁ」


何を言っても意味が無い事を悟り、咲夜の手を握ると退散する事にした。後ろの方から「待ってよ〜結君〜」って声が聞こえる気がするが気のせいだろう。





「美味しいね、この店。」


「そうですね、結人さん。ですが私としては2人きりで来たかったです。」


「ひどいよ〜咲夜ちゃん!私だけ仲間外れにするなんて〜!」


ニューオリンズにある小さな肉料理屋に入り、2人で美味しくディナーを味わうつもりだったが、1人増えてしまった。ちなみに美月はレネと2人で女子会をするらしい。まぁこればっかりは仕方ない、姉さんもセランさんと朝日奈さんに挟まれてのディナーは勘弁だろう。


そして今日は、咲夜との最後の夜でもある。



と、いうのも今回咲夜は結人とは別の部隊に配属される事になった。

咲夜は、正面の主力部隊。結人は、側面からの遊撃部隊となっているため、明日結人はハワイへと向かうからだ。


「ほんの数日というだけなのにずいぶんと寂しく感じますね。」


「そうだね・・・・・・咲夜の方はセランさんが直接指揮をとるんだよね。」


「はい、そのようになっています。」


今回の作戦に、ジルトレア最高指導者であるセランもだいぶ気合いが入っているらしく、セラン自ら戦場の指揮をとるらしい。

戦地に降り立つような馬鹿な事はしないが、ジルトレアの航空母艦に乗って一緒に戦うと言っていた。


「無茶しないといいんだけど・・・」


「確かに少し心配ですね。でもきっと大丈夫ですよ。生きた亡霊に襲われるみたいな悪夢を見ない限り冷静でいられるお方です。」


「あはは、確かにあの人怖がりだもんね。」


セランが実はお化けや亡霊が苦手というのは知る人ぞ知る笑い話。

本人は否定しているがバレバレだ。


はははと、笑い合うが次第に静かになる。

このような会話もこれが最後になるかもしれないのだ。


お互いに何も言えなくなる。

何と声をかけてよいのか分からない。

今までも戦場には何度も出てきた。だが、今回の作戦が間違いなく最難関である。



「気をつけてね、咲夜」


「結人さんも、気をつけて下さいね。」




それしか言えない。

ただ、お互いの無事を祈る事しか・・・・・・


再び2人でグラスを掴むと、カチンとぶつけた。





____________________



宣誓!


結人と咲夜は死にません。安心して下さい!


佐々木サイ

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