異国の女王とスカイ・バースト
#0 プロローグ
第1印象は可哀想、だった。
人間に必要な何かが欠けている。
言われた事は何でも淡々とこなし、文句1つ言わずに行動していた。
話しかけても基本無視、どこか遠くを見つめながらただ黙って座っている事が多かった。
当時の私は、新しく弟が出来た事を嬉しく思い、どんどん話しかけた。
「ねえ、何処から来たの?」
「何歳なの?」
「好きな食べ物は何?」
私は、しつこく追っかけ回して会話を試みた。初めて会話が成立したのは彼がここの家に来て1ヶ月ほど経ったある日の事、私の「このお茶をお父様の所に持って行って」という発言に対して「分かりました。」とだけ素っ気なく言って運んでいった。
自分から要望を言うことは全く無く、ただただ周りに流されていく存在。その後ろ姿に、私は可哀想と思ってしまった。今になって思えばそれは初めて見た自分より可哀想な存在に対する哀れみだったのかもしれない。
私は幼い頃から父に教わりながら魔法という物理法則を無視した超現象について学んだ。
しかし、5歳になった頃に人生を大きく左右する出来事が起こった。父の友人の研究所で受けた『魔力適正検査』の結果がとても悪かったのだ。
一般の人よりは高いが、藁科家にとって肝心な空間魔法適正値が低すぎたのだ。
その日から父が魔法を教えてくれる日は極端に減った。今にして思えば、娘を戦場に出したくないという親心だったのかもしれない。だがそれは、幼い私の心にヒビを入れた。
藁科の基本の魔法である『絶縮』がどう頑張っても2秒を切れなかったのだ。
魔法師における2秒というのはものすごく大きい。展開するのに2秒かかるという事は並列で魔法を使わない限り、2秒間敵に隙を作るという事だ。
『絶縮』の時間短縮は諦めて、並列起動の練習もしたがまるでダメ、どちらかが疎かになってしまうのだ。
次第に分家の人達は影で私の事を『無能』と呼ぶようになった。
私は同年代の中でみたら決して弱く無かった、むしろトップレベルの実力だ。でも、藁科家の最高傑作とまで呼ばれた父の1人娘というハードルを私は越えられなかった。
*
ある日を境に結人は変わった。
大きなきっかけがあった訳ではない。
ただ一言、真人に「たくさん本を読みなさい。」と言われたのだ。
その日から常に本を読む子になった。
恐らく1日の半分以上は本を読んでいただろう。朝起きて本を読み、朝ご飯を食べた後も本を読む。
夜も私と結君の部屋の隅で光魔法を使いながら夢中で本を読んでいた。
「結君、何を読んでいるの?」
「ま、魔法の本です。お父様から魔法の本を読むように言われたので・・・・・・」
「ふ〜ん」
そう、興味が無さそうに返事をしたが、実際は興味深々だった。私には1度も本を読むことを勧めなかったお父様が、この可哀想な子には勧めるのだ。
ある日気になって、結人の本を開いてみた。そして絶句した。
たまにある魔法式を除いて文字がびっしりと敷き詰められており、1冊500ページぐらいある。しかも、所々鉛筆で書き込みがされている。
「こ、こんなに!!!」
後で聞いて、分かった。
この本の大半は間違いだらけで、それを全部直していたそうだ。他にも自分なりに魔法陣を改良、構築し、実験をしていたらしい。
もちろん、たった7歳の子供にそんな芸当が出来るわけがない。つまり彼も向こう側の人間という事だった。
結人は自分とは別の理由で、お父様から魔法を教わらなかった。もともと独特な魔法センスであったこともあるが、初めて出来た男の子の孫に喜んだお爺様が付きっきりで魔法を教えたのだ。
結人は、どんどん魔法の腕を磨いていった。そしてすぐに、S級魔法師である父を追い抜いた。
まだロボット感はとれないが、だんだんと人間らしくなっていく。
そしてこの年、少年は人生を変える1人の少女と出会った。
*
「それで出会ったのが私ってわけです。」
「へ〜そ〜なんだ〜。私とわかれた後そんな事があったんだね〜」
「はい、その時から結人さんはとてもかっこよくて素敵なお方でした。」
「小さい頃のお兄ちゃんか〜確かにかっこ良かったよね〜。あの狐の面がなかったらファンの数も今の2倍ぐらいになるんじゃない?」
「当たり前です、結人さんの美貌に振り向かない人類なんていりません!」
「でも、それだとファンが殺到しちゃうよ?」
「だから狐の面を付けているんですよ、私だけの結人さんでいるために♡」
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ちょっとヤンデレを感じる。
良かったら星を下さい!
明日、いい事が起こります!
多分
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