エピローグ
「お疲れ様でした。東京校秋イベントーMTFはこれにて終了です。」
イベント終了後は再び集まる事はせず、イベント開始前に配られた端末もしくは部屋に備え付けてあるモニターを使いリモートによる結果発表が行われる事になった。
理由は簡単、そっちの方が断然効率がいいからだ。
イベントを終えた結人も自分の部屋の画面を眺めていた。
咲夜に設定をしてもらい、大きなスクリーンに画面を映すと、いつものソファーに座る。
隣には当然、咲夜も一緒だ。ちなみに茜と美月もいる。
2人用のソファーなので少し狭く、協議の結果咲夜は結人の膝の上に座る事になった。
「当初の予定では、最終的な順位をイベントを元に順位を決める予定でしたが、惜しいところで脱落してしまった人の救済のため、脱落直前に持っていたポイントで点数を計算する事になりました。代わりに、最後まで生き残った参加者には3000ポイント支給する事となりました。」
生徒会長である朝日奈雫は少し残念そうな顔をしながらルールの変更を告げる。
恐らく自分が結構早い段階で脱落してしまったからだろう。
リモートにした理由も文句を受け付けないようにするためなのかもしれない。
「では、報酬の対象者である20位から11位を発表します。」
なんというか、淡白。まるで機械のように淡々と読み上げる。彼女が読み終えると画面が切り替わり、10名の名前とポイントがずらりと並んだ。
・・・
19位 朝日奈雫4261(3年Aクラス)
・・・
17位 丹羽啓一5011(3年Aクラス)
・・・
12位 和良楢桃8776(1年Aクラス)
11位 桐山雷華8952(1年Aクラス)
「あ、皆さんランクインしていますね、結人さん。」
友人の名前を見つけ、テンションを上げた咲夜か振り返る。
正面には結人の顔。自分が今、想い人の上に座っていた事を再認識する。
それにしても・・・
・・・かっこいい
・・・可愛い
結人も急に振り返った自分の想い人にドキンとしてしまう。昔からずっと一瞬にいるが、誰かの前でこっそり触れ合うのは初めての経験だ。
互いに目を逸らすことが出来ず、見つめ合う。このまま時が止まってしまぅじゃないかと思うほど静かだった。
自然と手が咲夜の頭の上に伸びる。
優しく撫でると表情が綻んだ。
たまらなく愛おしい。
「えへへっ♡」
【後ろから激しく抱きしめて下さい、結人さん。】
頭の中に声が聞こえる、どうやら他の2人に聞かれたくないらしい。咲夜は、そう言うと再び前を向いた。
そして、身体を後ろに倒してくる。
んっ・・・・・・!
御要望通り優しく抱きしめると、可愛く喘ぎ声を出した。恥ずかしくなったのか、両手で顔を隠した。
隙間からは少し赤くなった顔が見える。
めっちゃ可愛い。
「では続いて10位から4位の発表です。」
朝日奈雫がそう言うと、再び画面が切り替わる。
・・・
8位 水篠大和10854(1年Aクラス)
・・・
6位 有瀬聖奈18569(1年Aクラス)
4位 藁科結人20000(1年Aクラス)
4位 嘉神咲夜20000(1年Aクラス)
結人が黒白モードになった後、みんなでチームを組んで狩りをしたらしくポイントが加算されていた。
「やりましたね、結人さん。私たち揃って4位入賞ですよ。」
「まぁ僕は途中から抜けちゃったけどね。」
「ふふふ、お姉様の演技結構似ていました。桃さんに疑われている様子が少し面白かったです。」
「そうなんだ。少し見てみたかったかも。」
そう2人で笑いあっていると、ついに上位3名が発表される。
もちろん、予想通りそして想定通りのメンバーだった。
「それでは最後にMTFの上位3名を発表します。」
3位 仙洞田樹25898(1年Aクラス)
2位 黒崎 空26747(2年Aクラス)
1位 藁科美月34011(1年Aクラス)
「やった〜!!!優勝したよ、お兄ちゃん。」
自分の名前が呼ばれた瞬間、両手を広げて結人の方へダイブ。
だが、そのような行為を僕のお姫様が許すはずが無く・・・
「ぶへっ!痛〜い!ちょっと咲夜お姉ちゃん、魔力障壁は酷いんじゃない?しかも不透明だし!」
咲夜は結人と美月の間に3重の壁を作る。しかもご丁寧に不透明だ。
「美月さん、いくら妹とはいえ結人さんは私の物です。近づけさせません!」
「あ、分かった〜お姉ちゃん悔しいんだ〜私に負けて悔しいんだ〜」
「違います、結人さんを剣で切るような方を近づけさせたくないだけです。」
と、言い訳しているが、実際満更でもないらしく少し顔が赤い。
「時間魔法ー」
「火炎魔法ー」
「ストップだよ、2人とも。この部屋で魔法はダメだよ美月。2人が帰ったらいっぱい愛してあげるから落ち着いて咲夜。」
さすがにこれ以上は部屋が壊れかねないので止めに入る。すると、2人とも落ち着いて魔法をおさめる。
こういう時の対処法は実に簡単である。話題を平和な方向に持っていけばいい。
「義理とはいえもう少ししたら姉妹になるんだから仲良くして、2人とも。」
「はい、結人さん。」
「うん、お兄ちゃん」
結人は2人の頭を優しく撫でながら画面を見つめた。そして、今後の動向について本気で考えるのであった。
*
同刻ーー???
「女王陛下、報告があります。」
「なんだ、メルリア」
玉座に座る1人の女性に対して、その配下と思われる女性が1人頭を下げながらそう言った。
彼女は事故によって開いてしまった穴の向こう側の世界を調査する任務についている者だった。
「かの星の者どもが『奪還作戦』を行うらしいです。」
「奪還作戦だと?!それは本当か!」
珍しく声を上げて聞き返す。待ってましたと言わんばかりの返事だ。
「はい、世界中に向けて発信されました。恐らく間違いないと思います。それと、以前報告した精霊使いの名称が判明しました。」
「あぁ、私に匹敵する精霊使いという話だろ?」
「はい、その者のコードネームは『黒白』。既に<キング・クラス>の討伐に成功したという噂もありました。」
「<キング・クラス>だと?!という事は我が国の軍隊の3分の1の力を1人で持っているというのか!」
「おっしゃる通りでございます。」
「不味い事になったな、だが上手くいけばいい方向に転がるかもしれん。お前の部隊を全員連れて行く事にする。メルリア、みんなに知らせてくれ。」
「了解。」
部下が立ち去ったあと、1人で酒を飲む。これだけは辞められないのだ。
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