#22 初めてのライブ④

ライブが終わると、俺は都内の高級ホテルのレストランに訪れていた。

目の前に座るのは、スーパーアイドルの『星戸アリサ』改め、有瀬 聖奈。


この7日間の護衛任務の御礼に会社の方から高級ホテルをプレゼントされた。

正直行くのが面倒だったが、食事もご馳走してくれるとの事だったので、行く事にした。


日はとうに沈み、綺麗な東京の夜景が見える一室で、ディナーを楽しんでいた。


「とりあえず、おつかれさん。」


グラスを差し出し、乾杯をする。

飲むのは2人ともパイナップルジュースだ。

突然だが、彼女はパイナップルが大好きなのだ。


「えぇ、ありがとう。それにしても驚いたわ。まさか本当にあの御二方が見に来てくれるとは・・・しかも共演まで・・・本当にありがとう、樹君」


「俺は何もしてねーよ。やったのはあの二人だ。」


樹は少し照れてグラスを口に近付け、目を閉じる。


「ふふふ、私は知ってるわよ。貴方が私の事を影で助けてくれた事を。」


「な!凄いなお前は、絶対にバレない自信があったのだがな・・・」


まさか、気付かれていたとは、素直に感心する。

俺もまだまだだと実感する。


「実はね、これで2度目なんだよ・・・」


「え?」


聖奈は顔を下に向けると急にそんな事を言いだした。何が言いたいの困惑する。


「実は私たち、昔会った事があるのよ。」


「俺がお前と?悪いが俺は全く覚えていないぞ。いったい何時の話だよ。」


「6年前の大火災で、小さい女の子を1人救ったでしょ?」


「あぁ、あの時の・・・俺たしかその時殴られた思い出があるんだが・・・」


6年前に埼玉で起きた大火災、たまたま近くにいたため、俺も駆けつけたのだ。

その時、厄介な要救助者に出会ったの思い出す。


せっかく魔力障壁を展開しながら救ってやったのに、あろう事かそいつが殴って来たのだ。

幸い俺自身の魔力障壁があったため痛みなどは無かったが、それは鮮明に覚えている。

どうやら、鬼の仮面を被った俺を悪魔と間違えたのだと、後から救急隊員に聞いた時は、複雑な気持ちになった。


「そ、それはアレよ!若気の至りってやつよ。」


「それはちょっと意味が違くないか?」


「う、うるさい!そんな話はどうでもいいのよ!」


「じゃあ何だよ。」


「そ、その・・・ありがとう、樹君。」


「あ、うんどうも・・・」


正面から御礼を言われ、ドキッとしてしまった。

長く伸ばした茶髪に、可愛らしい黄色い目。

彼女はそういうと優しく微笑んだ。

相変わらず可愛いやつだ。魔法師とアイドル全く違うはずなのに彼女だけは少し近く感じた。



「あの、それで・・・ご褒美の事なんだけど・・・」


「ご褒美?そういえばそんな事言ってたな。」


ライブが始まる直前にそんな事を言われたのを思い出す。

こいつの事だ、どうせまた無茶ぶりをさせられるだろうと覚悟する。

先日やったトランプ勝負では、罰ゲームとして沖縄にパイナップルを買いに行かされたのを思い出す。

わざわざ沖縄まで行ったのだ。



「んで?何が欲しいんですか?お嬢様」



「私が欲しいのは・・・・・・よ。」


少し顔を赤らめながら、まっすぐこちらを向いて彼女はそう言った。

嘘のついていない真剣な目で。

突然の事で黙り込んでしまう。


「好きなの・・・まだ話し始めてから1週間しか経っていないけどでも!私は貴方が大好きなの、いつもいつも貴方を考えてしまう。」


緊張と不安、期待と興奮、その全てが同時に襲ってくる。

告白なんて色々なアニメや漫画で何度も見た。

想像の100倍、いや1万倍は緊張する。うるさい心臓の音が聞こえる。


「まじで言ってんのか?」


「う、うん・・・///」


少しの沈黙の後、樹は答えを告げた。


「いいぞ。」


「え?」


まるで天からお告げを貰ったかのような間抜けな声が出てしまう。

そして、今のこの状況を理解出来ずにいた。


イイゾ?


イイゾ?


いいぞ?


私、確か勢い余って彼に告白して、それで・・・


「い、いいの?!」


「あぁ、そのーなんだ。俺もその・・・好きになっていた。人を好きになったのはこれで初めてだから少し自信が無いが・・・俺も好きだ。認める」


「じゃあ、その〜これからもよろしくお願いします・・・」


「あぁ、こちらこそ・・・その、よろしく」


樹は恥ずかしくなって慌ててグラスを飲む。

その様子を見て少し顔がニヤけてしまう。


「うふふ。」

「なんだよ。」

「いや別に、なんでもないわ。ちょっとね・・・」


嬉しさ半分、何を話していいのか分からず、出された料理を口に運ぶ。

その後も他愛ない話をしているうちに少しずつ話せるようになった。

恥ずかしさより、彼と話したいという気持ちが勝ったのだ。

食べ終わると2人は席を立った。


「はい、これ。部屋の鍵よ。」


「あぁ、ありがとう。会社の人にもありがとうと伝えて置いてくれ。」


今回、会社の方から用意された部屋のキーカードを渡す。

樹はルームキーを受け取ると、ポケットにしまった。


「それじゃあ行きましょ。」


「へ?どこに?」


「どこってそりゃ、あんたの部屋よ。どの部屋なのか知らないでしょ?」


「あぁ、ありがとう。ならついて行く事にするよ。」


「こっちよ。」


私はそう言うと、エレベーターに乗った。

そして最上階にたどり着くと、1つの部屋の前で止まった。そして振り返る。


「ここよ、開けてみて。」


「あ、あぁ」


樹はポケットからキーカードを取り出すと、パネルにかざしてドアを開ける。

私も彼に続いて中に入った。


「おい、どうしてお前も入って来るんだよ。」


「部屋をよくみてちょうだい。」


「部屋を?」


部屋を見回しても特に不審な点はない。

強いていうならば少し広い事と夜景が綺麗に見える事と・・・

あるものを見つけた樹は振り返る。


「お前!まさか!」


「正解よ、。」


「はー?!まじで言ってんのか?」


樹は思わず本日2度目の大声を発してしまう。

私は後ろに手を回し、鍵を閉める。

そして、顔を真っ赤にしながらこう言った。



「私、初めてだから優しくしてね♡」



我ながら急すぎたと思う。だけど、自分の欲望には勝てなかった。



「な?!」




樹は戸惑い、少し後ろに下がる。

とても可愛い。


「貴方に捧げるわ。」



ドキドキしながら別々にお風呂に入った後、2人は同じベットに入った。


ちょっぴり痛かったけど、彼に包まれる感じがとても気持ち良かった。



____________________________




だいぶ、ぶっ飛んでいますね。

自分でもこれでいいのか少しアレですが、ここは納得して下さい(笑)


聖奈と瀬奈が少し名前が似ているなっと思ったのでどうしようかなと考えたのですが、桜木瀬奈の方は多分もう出てこないのでこのままいこうと思います。

(もしかしたら出てくるかも)

キャラクターをたくさん書くと名前が1番面倒ですよね。

次話から第3章のフィナーレが始まります!



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