#13 2人の世界②


「と、言われてもですね・・・なんとお答えすれば・・・」


「もうエッチはしたの?」


質問の意図が分からず、困った顔をすると、エリーナさんから直球が来た。


「し、してないですよ。当たり前じゃないですか!」

「そ、そうですよ、お母様。そのような事は結婚してから・・・」


2人は顔を真っ赤にしながら首を振る。

しかし、追い討ちは止まらない。


「週何ぐらいで戦闘しているんだ?結人」


「い、い、いつからそんな・・・」


真人はついにか!という思いで尋ねる。

一方の優夜の方は2人の関係の進歩に対して嬉しい反面寂しい、複雑な気持ちになっている。


「だからまだですよ、父さん!」

「私として今すぐ結人さんと一夜を共にしたいところですが・・・藁科家には”血の掟”というものが私たちの邪魔をして・・・」



「「”血の掟”だと(ですって)?」」



<血の掟>

藁科家に伝わる家訓。

争い事を避けたり、藁科家としての風格を保つためのもの。

一族たるもの絶対厳守、その重みはとても重い。

もちろん結人、そして藁科家に嫁入りをする咲夜もそれに遵守していた。


「は、はい。第9条 『年齢を問わず結婚した相手以外と交わってはならない。』がありますので・・・。」


「ムムム・・・確かそれは・・・」


「はい、確かあれですよね。」


「あぁ、あれだよな。」


2人は顔を見合わせた後、笑顔で応えた。


「「それ抜け道があるぞ(ありますよ)」」


「え?!」「そ、そうだったんですか!」


2人は驚く。

結人は素直に慌て、咲夜は目を輝かせた。


「ぜひともその方法を教えて下さい!、お義母様」


「いいですけれも、お二方は既に条件を満たしておられますよ。」


「えっと~それはどういう・・・」


「”婚約”する事ですよ♪」

「あぁ、『第10条 婚約と婚姻は同義とする。』で通り抜けれるぞ?」


「え?!」

「そんな画期的なものがあったんですか?!私が以前、茜さんに見せて貰った際はなかったと思うのですが・・・」



結人も第10条があったなんて聞いていない、ずっと第9条までだと思っていた。

まさか間違って認識していたなんて・・・


「普通にあるよ、咲夜ちゃん。だってほら俺も結婚する前に琴音とやってたし。」

「真人さん!子供達の前でそのような事は・・・」

「おっと、すまんすまん・・・」


顔を赤くした琴音に注意された真人は素直に謝る。

そして、咲夜はこのような事を招いた犯人に理由を問いただす。



「ところでお姉様、どうしてこのような嘘を?」



その声は万物を凍らせる冷たさ。

そして、万物を貫く威圧。

結人も一瞬本能が恐怖を感じていた。



茜も顔を真っ青にしてガタガタと震えている。

ご愁傷さま・・・


姉さん今までありがとう、永遠に忘れないよ・・・


姉さんの悲鳴が聞こえる気がするが気のせいだろう。


うん、きっとそうだ。




「この反応・・・本当に結人君も咲夜さんも嘘をついていなかったですね・・・」


「琴音ちゃん、今から予約しとく?」


「いいですね、是非お願いします!」


「じゃあ俺はっと・・・空間魔法<絶収ぜっしゅう>」


<絶収>

藁科の魔法の1つで範囲内の全ての物質を亜空間に収納する魔法。

発動までに時間がかかる事と魔力の消費量がものすごく高いかわり、亜空間に収納する事ができる。ただし生物は収納出来ない。

収納魔法より燃費が悪い代わりに超強固だ。


真人はこの魔法で結人の部屋を丸々1つ消した。

つまり、結人の寝床を無くした。


結人ならば、打ち破る事ができなくはない。

が・・・



「おっと、動くな結人!どうやらお前の部屋は今日からリフォームするらしい。というかリフォームする!だからお前は今から2人で旅館に泊まり、2人で温泉に入り、2人で寝るんだ!そして、間違いを犯せ!」


「息子にそんな事を言う親がどこにいるんだよ!」


盛大なツッコミを入れる。

なんて父親だ。しかもよりにもよって咲夜の前でそんな事を言うだなんて・・・

恥ずかしすぎて死にそうになる。


一方の咲夜は母エリーナからの指導を受けていた。



「いい?咲夜。必ず仕留めるんだからね。私の娘に生まれた以上、この大きなチャンスを絶対にものにして絶対に既成事実を作りなさいよ。」

「は、はい!お母様!」


「攻撃あるのみだからね!」

「はい!お母様!」



いやだから、ここで言うなよとは言えない結人であった。







その後の対応は迅速だった。

直ぐに2人きりで泊まる用の旅館が用意され、家を追い出された。



「えっと〜とりあえず向かうか・・・」


「は、はい、そうですね///」


しばらく歩くと今日宿泊する旅館が見えてきた。

とても大きく、結人もその名前を聞いた事があるほど有名なものだった。

この旅館の目玉はなんといっても一日数組限定の露天風呂付き客室。

普段は予約でいっぱいだが、真人のコネとお金の力で無理やり特別室を抑えたらしい。


案内された部屋はとても広くて綺麗な部屋だった。

床はもちろん畳で、扉は障子、典型的な旅館だ。


一番大きな部屋の中央に置かれた和菓子と日本茶を2人で堪能する。

正直、気まずい以外のなにものでもない。

今までは咲夜の事を相棒だったりパートナーのように見ていた。

しかし、衝撃的な事実を聞き、咲夜を1人の女として見るようになっていた。



「えっと~どうするか、咲夜・・・」


それは咲夜も同じだった。

このような展開を予想していなかった訳ではない。

むしろ同棲が決まってから、こんな展開を何度も妄想していた。

しかし、いきなりの展開で脳が追い付いていない。


「そ、そうですね・・・お風呂」


「ん?」


「結人さんお願いします、私と一緒にお風呂に入って下さい。」


「い、いいよ、入いろっか、咲夜」




2人は数年ぶりに一緒に入浴する。


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