#17 お仕事のお時間③

長期休暇の時以外に特別な理由無しにこの人工島から出ることが許されない東京校だが、1ヶ月の内、第2土曜日と日曜日の2日だけは外に出ることが許されている。

そのため今日は多くの東京校の生徒は日本最大の都市ー東京へと足を運び、羽を伸ばした。

例にもれず、結人と咲夜も買い物を楽しんでいた。


「やっぱり苺大福は最高だよ・・・美味しすぎる・・・この世界を守る理由がまた1つ生まれた気がするよ・・・」


「相変わらず結さんは苺大福が昔から大好きですよね。」


「こればっかりはやめられないよ。たとえ世界が滅んでも、咲夜と家族と苺大福だけは守る!」


「また今度作ってあげますね。楽しみにしていて下さい!それと、私も家族に含んで構わないんですよ。」


「ありがとう咲夜、楽しみにしてるよ。」


2人はせっかくの休日ということで東京にある大きなデパートを訪れていた。UCとの戦闘の日々から解放され休日が貰えるという生活は、とても新鮮だった。

こういう時、よく事件が発生するものだが一切起きていない。

その理由は簡単で咲夜が魔法で事件を未然に防いでいるからだった。ついさっきも万引きを未然に防ぐために拘束魔法を放っていた。どうやら、この買い物を絶対に邪魔されたくないみたいだ・・・


「次はあのお店に行きませんか?結人さん」


「うんいいよ、行こう。」


2人は洋服屋に入っていく。結人としては軍服と学校用の制服そして戦闘服があればそれで満足だが、咲夜は違う。


「どうですか?結人さん、この白いセーターと緑色のセーターどっちの方が似合ってます?」


これは・・・外したら怒られると言われている究極の2択!・・・


ふふふ、甘いな咲夜、僕にはその対処法を既に考えてあるのだ!

その最善の選択肢はこれだ!


「うーん両方ともいいと思うよ。咲夜に似合っている。」


「真面目に答えてくださいよ、結人さん。」


作戦失敗・・・まぁこうなるか・・・


「いや、本心だよ。僕はどっちの服を着ても可愛いと思うよ。」


「 う〜それじゃあ両方買うしかないじゃないですか〜予算は無限でも結人さんに選んでもらうことに意味があるんですよ!今度同じ答え方をしたら下着を選んでもらいますからね。」


「そ、それは困る、次からはちゃんと選ぶよ。でも、本当に両方とも思わず抱きしめたくなるほど可愛いんだよ。」


「あ、ありがとうございます。」


顔を赤らめた咲夜に思わずドキッとする。ほんとに可愛い・・・          

すぐに気を紛らすために話題を変える。


「そろそろ暗くなってきたし帰ろか。あ、でも先生に飲み会に誘われていたんだっけ。」



現在の時刻は19時、2人はかれこれ9時間もデートを楽しんでいた。


「もー少し一緒にいたい気分ですが仕方ないですね家に帰ったらいつも通り甘やかして下さいね」


「うん、いいよ。でも血の掟は守ってね。」


「安心して下さい、守りますよ。それがお姉様との約束ですから。」



血の掟ーーそれは藁科家に代々受け継がれているもので、『男の子が生まれたらそれ以上子を産んではいけない』とか『遺体は先祖代々の土地にある墓に埋める』などがある。その内の一つに『年齢を問わず結婚した相手以外と交わってはならない。』といものがある。藁科家の血縁者であり、次期当主でもある結人もそれに従っているのだ。


「ごめんね・・・」


「いえ、気にしてませんよ。私は結人さんと一緒に居られればそれでいいんですから。それ以上は望まないですよ。」


「ありがと。じゃあ行くか。」


「はい。」









「こんばんはー、立川さん。」


「こんばんは立川さん、お誘いありがとうございます。」


「お久ぶりです。"黒白様"、"紅焔様"、来ていただきありがとうございます。」


一度部屋に戻り、いつもの狐の面に赤色の日本の軍服を着替えた結人と咲夜は立川千春に誘われて東京都港区にある小さなバーに訪れていた。飲み会が好きな千春は数ヶ月に一回ほど結人たち2人を誘っていた。


「こんばんは店主マスターいつものお願い。」


「私も同じのでお願いします。」


2人はアルコール度数の比較的低いワインを頼む。


「かしこまりました。」


「マスターもずいぶんと2人に慣れましたね、最初に会った時の顔を今でも覚えてるよ。」


「ホッホッホ、立川様、私もいつまで驚いてばかりではありませんよ。確かに最初にお会いした時は度肝を抜かれましたが、流石の私ももうお2人に慣れてしまいましたよ。」


ここのマスターとは2年近い付き合いになる、とは言ってもお互いの本名は知らないし、いつもの狐の面を外したことがないので素顔さえも知らないだろう。

最初に来た時は驚きのあまりマスターが手に持っていたワインの瓶を落として割ってしまったのを覚えている。

今日は立川先生が貸切にしてくれたので安心だ。


2人は出されたワインを少しずつ口にする。まだ未成年である2人はもちろん本当に飲んでいるわけではない。口に入れる直前に超高度な分解魔法を使って誰にも気付かれずにアルコールを分解しているのだ。この技は姉である茜に教えてもらったもので、以来2人も愛用している。


「今年の生徒は面白いのが多いんですよ。一度あなた様にも合わせてあげたいです〜」


「へ〜どんな人がいるんですか?立川せ・・・さん」


「そうですね~まずはやっぱりあの水篠さんの息子とあの和良楢さんの娘ですね。いや~強いですよ。魔法なしとはいえ一本取られてしまいました~」


もちろん知っているというか最近とても仲良くしてもらってる・・・結人は仮面の裏で笑いをこらえていた。しかし、その壁を一気に決壊する発言をする。


「さらにですね、あの藁科 真人まさとさんの息子と思われる人が入学してきたんですよ。すごくないですか?私今のうちにサインをもらおうと思ったほどですよ・・・って何笑っているんですか”黒白様”?」


「いやすみません、あの人の息子さんがですか・・・」


ここにいるんですよねーその息子かつ序列1位が・・・


【結人さん、口元が笑ってますよ。立川さんには別に正体を知られても構わないとの事でしたがなるべく正体を気付かれないように努めてください。】


【はい、すみません】


咲夜に注意され、顔を素顔に戻るように努める。しかし人は簡単には表情を直せないものだ。

まぁ仮面があるためバレてはいないだろうが・・・


「はい!!是非ともあなた様方に会わせてあげたいと思っているんですよ!」


「いいですね。私も今の年代の実力を知ってみたいですし。」

咲夜は賛同の声をあげる。今の年代の実力を知らない事をアピールして結人=黒白の線を潰す上手な手だ。


「そうですか、時間があったら是非とも会いたいですね。やはり強いのでしょうか?」

結人も続く。


「それはもう、おそらく数年後にはA級になると思いますよ、人間離れした魔力制御能力と魔力操作技術を持っているんですよ。そうですね、どことなくあなた様に似ている感じがします。」


似ているのは当然だ、なんせ同一人物なのだから・・・


【結人さんの魔力には強い癖がありますからね、気付かれるのも時間の問題かも知れませんね。まぁ序列1位の世界最強魔法師が15歳の少年だなんて誰も思わないと思いますが・・・】


【そうだね、僕は絶対にバレない自信があるよ!】


【気を付けて下さいね、結人さん。以前桃さんに聞いたのですが、そういうセリフって"フラグ"というものになって実際に起こることが多いそうですよ。】


【へ〜そうなんだ、僕は聞いたことないな】


「それは楽しみですね。」

「私も興味が湧きました。ところでそろそろ本題に入ってはいかがですか?」


「あ、すみません、つい私のクラスの話をし過ぎてしまいました。話を変えましょう、やはり最近強くなってきいるという噂は本当ですか?」


「えぇ最近特に特級以上のUCが増えてきている気がします。気をつけて下さいね、東京の守りは任せましたよ。」


「東京をお願いします。立川さん。」


立川千春を何故東京校の教師にしているか、その理由はいざという時の東京防衛を任されているからだ。特級を単独討伐することができる、貴重な戦力として彼女が採用されている。



「はい!任されました!"黒白様"、"紅焔様"!!!」



3人はこの後も今後の計画についての話を進めた。



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本当はもう少し2人のデートを描きたかったのですが文字数が・・・

すみません

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