#15 お仕事のお時間①
イチャイチャ回です。
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「あの~咲夜さん?カレーなのにスプーンが1つしかないのですが・・・」
初めての授業を終えた2人は結人の手料理を食べようとしていた。
結人の両親は現在ドイツで魔法師として活動しているため学校に入るまでは姉である茜と2人で暮らしていた。
しかし、茜は家事全般がまったく出来ない為、結人が毎日ご飯を作っていた。そのため結人は料理が得意だ。
夕食を作ってそれをよそるところまでは順調だった。しかしここで、大きな問題が発生する。
カレーのためのスプーンが1つしかないのだ。ここに来た時はたしかにおそろいのスプーンが2つあったはず・・・
「これですか?学校で出来なかった食べさせ合いをしようと・・・ダメでしたか?」
そう顔を赤くしながら言った。
食べさせ合いならば普通にしていた気がするが気のせいだろう。きっとそうだ・・・
「姉さんに何か吹き込まれたの?・・・」
茜は咲夜が義妹になることを応援してくれている。そのままそっと見守ってくれていればいいのだが、時々恋愛についての知識が全くない2人に余計なアドバイスをするのだ。ありがた迷惑な話だ・・・
「ちっ、違いますよ。全然、全く、これっぽっちも!!!」
咲夜はそう否定するがバレバレだ。むしろ気づいてほしい、と言っているようなものだった。
「わかったよ・・・いいけどスプーンは二つにしてほしいな・・・これじゃあ日が暮れちゃう。じゃあ行くよ、あ~ん。」
結人はゆっくりとスプーンを咲夜の口元に運ぶ。咲夜はそれを嬉しそうに食べた。
「美味しいです、結人さん。お返しです、口を開けて下さい。」
結人が口を開けると咲夜も同じように手に持ったスプーンを結人の口に運ぶ。いつもと同じように作った普通のカレーだったが、いつもよりも数百倍も美味しい。これなら100杯食べられそうだった・・・
「そういえば結人さん、昼休みの件ありがとうございました。」
「気付いていたのか、やっぱり咲夜も僕たち以外の友達を作った方がいいと思ってね、まぁ樹の意見だし、最後の方は結局来ちゃったけどね・・・」
「おかげさまで良いお友達ができました。最初はちょっと不安でしたが皆さん優しくしてくれました。S級魔法師の話題をされると少し恥ずかしかったですが・・・」
「それは良かった。実は少し心配してたんだ、でも杞憂だったね。」
「はい、結人さんのおかげです。さぁどんどん食べましょう。」
「うん、じゃあ、あーん。」
普段なら20分ぐらいで食べ終わるのだが、食べさせ合いを続けた結果、いつの間にか1時間が経過していた。
まぁその結果としていいものを得たのが・・・
夕食を食べ終えた2人は片付けをし、ソファーに座ったのだが・・・
「いいですか結人さん、私は心配なのです。女の子の友達も作ってもいいですが、あんまり作りすぎて私を困らせないでくださいね。」
何故か説教が始まった。僕悪い事してないのに・・・
「は、はい、すみません。」
咲夜に怒られると何故か自分が悪い事をしたと錯覚して謝ってしまう。
「私は心配なのです。結人さんがよくわからない泥棒猫に騙されないか・・・結人さんは優しすぎるんですよ!!!勘違いする子が出てきたらどうするんですか?」
「咲夜・・・その〜もしかして・・・その・・・嫉妬?」
「ダメですか?いけませんか?私は結人さんの恋人であり婚約者、当然嫉妬をする権利はあると思います!だいたい結人さんが悪いのですよ?どの子にも見境なく優しくするせいで私がどれだけ心配になっているか・・・聞いてます?」
「ご、ごめん、咲夜が嫉妬してくれてその嬉しくて・・・」
「・・・」
まるでりんごの様に2人の顔がだんだんと赤くなっていく。
結人はゆっくりと手を動かし咲夜の頭をそっと優しく撫でる。
突然撫でられたため、咲夜はビクッと飛び跳ねた。そしてその至高の幸福に身を委ねる。
結人は咲夜の方に近づく、彼女の耳元で甘い言葉を囁く。
「嫉妬している咲夜もとても可愛いよ。」
「もしかして撫でて甘い言葉を囁けば許されると思っているんですか?」
「じゃあやめようか?」
「う~。結人さんの意地悪・・・」
昨夜はもう離さないと言わんばかりに結人を強く抱き締める。
結人も優しく包み込む。
「落ち着きます。ずっとこうしていたい・・・」
「僕も・・・」
そして抑えきれなくなった2人は顔を見合わせるとゆっくりと顔を近づける。口と口が合わせた。
「久しぶりですね、こうして結人さんとキスするの・・・」
「そうだね。」
「もう一度したいです。」
「いいよ。」
そして再び口と口が合わせようとしたその瞬間、まるで2人を邪魔するかのように電子音が鳴り響いた。
「プルルルルッ」
慌てて顔を離すと咲夜は"いいところだったのに"と呟いて結人の胸に頭を擦り付ける。
テレビ電話なんだけど・・・
丸見えなんだけど・・・
まぁ相手は姉さんだからいっか・・・
〔こんばんは〜お姉ちゃんだよ〜ってあれ?もしかしてお楽しみ中だった?ごめんごめん。ちょっと厄介な事件が起きちゃってね・・・2人で解決してきてくれない?〕
「僕はいいけどこれじゃあ咲夜が動かないよ?」
普段は容姿端麗、清廉潔白の二つが似合う咲夜だが、結人と二人っきりになると少し・・・いやだいぶ性格が変わる。
甘えん坊になってしまうのだ。
過去にも同じようなことが何度かあったが世界最強である結人でも太刀打ちできなかった。
世界最強はまったく関係のない話だが・・・
〔そっか・・・残念だなぁ例の『アレ』を義妹ちゃんに譲ってあげようと思ったのになぁ~〕
例の『アレ』という言葉に咲夜の身体がびくっと震える。
そして咲夜は小さな声で答える。
「その話、詳しく聞かせてもららえませんか?お義姉様」
〔言葉の通りだよ、この前言ってた『アレ』を私の可愛い妹ちゃんにプレゼントしたいと思ってね。〕
「わかりました。引き受けましょう。」
〔ありがと、2人とも、でも契約は守ってね咲夜ちゃん〕
「わかってますよ、お姉様」
それから、事が決まるのは一瞬だった。全ての段取りを一瞬で終わらせた咲夜は結人をせかす。
「パッといってサクッと倒してきましょう。ほら結人さんも早く着替えて下さい。」
着替えを終えた2人はいつもの魔法を自らの身体にかける。
「零式<ゼロ・ノート>起動・・・」
起動と同時に白銀のオーラが流れ出し、結人の黒髪が真っ白に変わっていく。
これが本来の世界最強の姿、無敵と謳われた人類の希望となる少年の真の姿だった。
零式<ゼロ・ノート>は結人の作ったオリジナル魔法。
圧倒的な力をもつ結人専用の身体強化魔法。
そして結人の数多あるオリジナル魔法の基本であり元となる魔法。
戦闘をする時は必ず使っている魔法だ。
「
咲夜は自身の固有魔法を唱える。真紅のオーラを放ち、白銀の髪の毛が真っ赤に染まる。そしてこの焔を司る女神のような姿こそ咲夜の本来の姿だ。
2人は顔を見合わせ、手をつなぐと高速で現場に飛んだ。
*
「そういえば茜様、先ほどの例の『アレ』とはなんだったんですか?」
「あ~あれね、写真だよ写真。」
「写真?何のですか?」
「幼い頃の結君の写真だよ。ほんと愛されているよね~私の可愛い弟は・・・」
「な、なるほど、愛されてますね」
「ただ問題があってね、もうストックが残り少ししかないんだよなー」
「それは大変ですね、あのお姫様を動かすとなると・・・」
「ま、今考えても仕方ないか。それよりひと仕事しなきゃだね!」
「わかりました、茜様」
そう雑談を交えながら2人は結人たちに指示を飛ばした。
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