#14 入学への実感⑦

タイトルを変更しました。



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「すごい魔力操作技術だな。私も全く気がつかなかった・・・魔法の組み合わせ、動き、連携全てが素晴らしい。さすがあの人の息子だな、これからも励むといい・・・」


<魔力撃>はためればためるほど威力が増していく。それを先生に気付かれることなく、試合開始時からずっとため、放った一撃・・・

長い時間ためれば学生のレベルで固有魔法を使わずに先生の張った魔力障壁を貫けるぐらいの威力が出せる魔法だった。


「「ありがとうございます!」」


たくさんのクラスメイトによる拍手を後に2人は観覧席に戻る。


「おつかれさん、結人、咲夜。それにしても相変わらずの魔力操作技術だな、すごかったぜ。」


「自分も魔法を隠蔽していることに全然気がつかなかったです。いずれ自分とも戦ってほしいです。」


「ありがと、2人とも。」


「ありがとうございます。」


2人は観客席に戻るとクラスメイトから質問責めを受けた。


「全然、<魔力撃>に気がつかなったよ、藁科君」

「最後の<魔力撃>もすごかったけど途中の立ち回りも完璧だった・・・思わず見惚れちゃうほどだったよ!!!」

「あんなの絶対無理俺には無理だ、どうやってやったんだよ。」

「ねぇ2人は付き合っているの?」


一つ魔法とは関係ないのが混ざっていた気がしなくもないが落ち着いて1つずつ返答する。


「魔力操作の練習をずっとやっていたらいつのまにかできるようになったんだ。でもこの技術は対人にしかならないから覚えてもしょうがないと思うけど。」


下・中級のUCは魔力の流れについてとても敏感だ。そのため、中途半端な技術では隠蔽することができない。仮に隠蔽できたとしても隠蔽できるほどの技術があるのならわざわざ隠蔽をしなくても余裕で討伐できるだろう。

だから魔法を隠蔽する練習する人はあまりいない・・・


返ってきた言葉はこのぐらい誰でもできると思っていた結人にとって予想外のものだった。


「「「普通できるようにはならないから!!!」」」


全員が口を揃えて突っ込んだのだった。



           *




10分間ぐらい続いた質問責めから解放された2人は樹たちの元に戻る。そして、お目当てだった試合を見るために再び視線を舞台に移した。


「おい見ろ、例の和良楢さんの番だぞ一応見て置こうぜ。」


「自分も精神系の魔術は見たことがなかったのでとても楽しみです。」


精神系の魔術ーーー使える人は10万人に1人と言われているほど珍しく、相手の精神を操ったり、幻覚を見せたりすることができる非常に強力な魔法だ。結人たちが普段お世話になっている、和良楢 大吾さんもその1人で、よく魔法のレジストの練習に付き合ってもらっている。支援特化で、実際の肉弾戦は出来ないが非常に強力だ。

とはいってもこっちは同じ和良楢でもこちらは娘のほうだが・・・


「和良楢さんのペアは"雷帝"か、近、中距離のペアを選んだのは正解だな。」


樹はそう評価する。たしかに悪くない選択だ。支援特化のペアは前衛でないとそもそも試合にならないからだ。

考察をしていると咲夜からあるお願いの通信がきた。


【結人さん、私、あの二人と仲良くなったんですよ。それでその・・・部屋に呼ぶのは難しいかもしれませんが今度、結人さんを2人に紹介したいのですが・・・】


【いいよ。でも僕も部屋の紹介は遠慮させてほしい・・・その・・・色々とまずいから・・・】


自分たちの部屋を見られてまずい点は2つ。

1つ目は他の生徒に比べて部屋がとても豪華だからだ。何かと疑われると面倒なのでなんとしても避けたかった。

2つ目はベットが1つしかない点だ、これはバレたら非常にまずい。結人の目指す平穏な学校生活が消えてしまう。廊下を歩くたびに嫉妬の目を向けられるのは勘弁してほしい。とにかく、部屋への招待は避けなければならない課題だった。


【わかりました。それでですね・・・その時にその・・・婚約していることは・・・】


【せめて恋人にしてほしいな、僕の胃がもちそうにない・・・】


【は、はい。わかりました。】


咲夜と話をしている間に戦闘が始まった。


結人たちの予想通り訓練開始と同時に和良楢さんは後方へ桐山さんは前衛を担当していた。

そして、和良楢さんによる数多の魔法陣が展開されていき、一つずつその効果を発揮していく。


雷華に向かって<加速><身体強化><電気伝導率上昇><威力増強><自動回復><魔力集約><魔力効率化>

の7つが

そして先生の方には<減速><幻覚><幻聴><魔力遅延><感覚麻痺>

の5つが付与される。


「すごいな予想以上だ。一度に12個とは・・・」


「いえ14ですよ樹さん」

「14だね、本人に<思念伝達>と<身体強化>が施されている。上手に隠蔽もされている。すごいな。」


「・・・見ただけでそれが何の魔法か一瞬で判断する事ができるすごさに気付いた方がいいかと・・・自分には無理です。」



先生は自身にかかる魔法を勝負を始める。おそらく先生は自分にかかっている魔法を解かないというルールで始めたのだろう。ただそれはハンデにしては大き過ぎた。


結人の予想通り決着はすぐについた。5つのデバフに侵されながらも懸命に戦う先生であったが14個分の魔術の差は大きかった。


第一段階ファースト・スパーク<エレクトロ・ヒューズ>」


桐山さんの前に出現した電気の塊は一気にはじけ飛び先生に直撃した。結人のような例外を除き、1年生の中で最高の火力を誇る彼女の一撃に7つのバフが重なったこの固有魔法は恐ろしいほどの威力を持っていた。



会場は静まり返ったいた。実際の戦場を見たことのない生徒にとっては今まで実際にみた魔法の中で一番威力があったであろう一撃はフィールドに半径10mほどの大穴が空いてしまうほどの威力だった。


大和は「第一段階にバフが加わるとこれほどの威力になるなんて・・・自分も後で彼女にバフ魔法をお願いしようかな」そうぽつりと呟く。

樹は「これは派手にやっちゃったな」と笑い、

咲夜は「あのおっちょこちょいな見た目で・・・」と驚いていた。


人の数だけ存在すると言われている固有魔法には大きく分けて4種類存在する。物体を作ったりエネルギーを放出したりすることができる放出系、色々なものを操作することができる操作系、魔獣や魔人などを召喚する召喚系、そして身体などを強化する強化系の4種類が存在する。威力面で他を圧倒する放出系の第一段階に7つのバフがついた攻撃だったので当然と言えば当然の結果だった。

先生は2人に賞賛を送る。


「もの凄い威力そしてバフも素晴らしかった。まさか3組もこの私を倒すグループが現れるとはな。今年は豊作だ。ただこの魔法は他人にも被害が出る可能性が十分に考えられる。使うタイミングを考えるように。」


「「はい。」」


「以上で本日の授業を終了する、解散!」


「「「はい。ありがとうございました。」」」


授業が終わり多くの生徒が桐山さんと和良楢さんのもとに集った。

これから質問攻めにあうであろう2人を見ながら結人たちは自分の部屋に戻った。





「このところ例の物を使った事件が増えています、茜様」


「まぁ~た〜?例の中国の薬物か・・・そろそろ年貢の納め時かな・・・」


茜と話をしているこの男は結人の存在を知る限られた人物の一人”山本 金治”、茜の右腕で非常に優秀な人物だ。

最近多発している強制強化剤事件、2人はこの事件の解決に向けて動き出した。

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