悪魔の最後の抵抗
第53話 勇からイスカへの最後の死のプレゼント
「須崎さんと会ったそうですね」
「.....ああ。もう行っているのか。情報.....」
「はい。.....夜空ちゃんから聞きました」
雪さんの家庭教師をしながら。
俺にそう聞いてくる雪さん。
それから心配げな眼差しで俺を見てくる。
大丈夫なんでしょうか、的な感じで、である。
「.....私、正直不安です。定森先生が。.....彼女は.....」
「信じてみるのも一つの手かもしれない」
「.....え?」
「.....正直、簡単に変わるとは思ってない。須崎が、だ。だけど.....須崎は変わろうと努力はしているんだと思う」
「.....そうなんですかね」
雪さんは不安そうに見てくる。
ああ、と俺は返事しながら教える。
すると雪さんは、でも愛していた人を.....イジメていた。
これは許されない事ですよね。
しっかり反省してほしいです、と釘を打った。
俺はその姿に、だな、と返事する。
「私は、いー先生が心から好きです。だから.....そんな事をした須崎さんは許せないです」
「.....そうだな。有難うな。雪さん」
「しかも今は.....千佳さんと付き合っている。だからこの仲を裂くぐらいなら私は絶対に須崎さんを許せないです」
「.....有難う」
「いえ。本気ですから」
雪さんは俺に笑みを浮かべながら。
意を決する様な感じを見せた。
それから.....俺に、そういえば小テストがあったんです、と見せてくる。
その小テストの点数は英語だったが上がっている。
80点だ。
「凄いじゃないか。雪さん」
「これもいー先生のお陰ですね。ずっと見守ってくれたお陰です」
「そうなのか。そう言ってくれて.....有難うな」
「はい。当たり前です。いー先生は私の先生ですから」
「.....」
成長したよな。
俺も.....雪さんも。
全体的に、だ。
俺は.....涙が出てくる感じだ。
だけど泣く訳にはいかない。
「そういえば.....世間話になるんですけど」
「.....どうした?」
「速水勇はどうなったんですか」
「連絡は無いな。どうなったかも分からない」
「.....そうなんですね.....でもどっちみちにせよ許せないです」
そうしていると.....電話が掛かってきた。
あれま、また音を切るのを忘れているではないか。
俺は慌てて切ろうとしたのだが。
その相手の名前。
相手の名前は.....非通知だったのだが.....何か気になった。
「ごめん。雪さん。規約違反だけどちょっとだけ出て良いかな」
「あ。全然気にしないです。どうぞです」
「.....ゴメンね」
そして俺は電話に出る.....そして。
衝撃を受けた。
誰からの電話かと思ったが。
噂の主だった。
『やあ。久々だね。.....山寺イスカ君』
「.....貴方.....」
その言葉に雪さんがピクッと反応する。
それから顔を上げて俺を見てくる。
俺の反応が気になった様だ。
その事に俺はスマホを隠しながら話す。
『そっちには非通知で掛かってしまった様だけど.....ゴメン。それだけは調節が出来ないからね。.....突然掛けてきてすまない』
「.....正直言って貴方と話す事は何も無いんですけど」
『.....まあそう言うな。久々だから話そう』
「.....拘置所から掛けているんですよね。しかも俺の電話番号.....まあいいや。.....本当に忙しいんですが何の用事ですか」
『.....えっとね。.....私は捕まってしまったけど.....それなりに私もまだ千佳を手助けしたいんだ。.....だから.....』
切りますよ、と俺は告げる。
それから電話を切ろうとしたのだが。
まあ待て、と言ってくる。
何の用事だ。
暇じゃ無いんだが俺は。
『君は人の話を聞かない生意気な子だね。相変わらず』
「.....貴方の話は特に聞きたく無いです」
『.....じゃあ手短に。君の家に.....プレゼントを送った。贈り物としてね』
「.....住所を何で知っているんだ」
『そんなもの。私が調べたさ。.....私が刑務所に入っている間、千佳を守ってほしいからね』
「.....アンタ何を送った。うちには人がいるんだぞ」
そうだね。まあ中身はペットボトルに入ったガソリンとお手製の発火装置だよ。
と笑顔を浮かべた様に話す.....は?
今何つったコイツ。
がそ.....ガソリン!?
俺は青ざめる。
『私を散々無視した挙げ句の果てに君達は幸せになっている。それは許せないからそれなりにプレゼントさ。こうして捕まる前に時間指定して水として送ったんだけどね』
「.....!?」
「いー先生?」
コイツ.....コイツ!!!!!
マジかこのクソッタレ!!!!!
俺は直ぐに慌てる。
そして雪さんに向いて、すまない。帰らなくちゃいけなくなった、と言う。
それから駆け出す。
「いー先生!どうしたんですか!?」
「このままだと家が燃やされる。それも勇に」
「.....え.....」
俺は大慌て草薙さんの制止も振り切って急加速した車と共に家に帰って来た。
それから.....宅配便物を見る。
そこには確かに、水、と書かれた謎の段ボールが置かれている。
マジかよオイ.....。
こんな事までするとは.....。
「お兄ちゃん?帰って来たの?何かお兄ちゃん宛に宅配便が.....」
「夜空。.....この中身を見たりしたか」
「.....してないよ?.....え?何が入っているの?」
「.....この中身は.....ガソリンが入っているらしい」
「え.....えぇ!!!!?」
いやちょっと待て。
割とマジに燃えたらどうすんだ!
嫌がらせの限度を超えているんだが。
取り敢えずは近所の空き地に持って行こうか。
草が生えてない場所で開けてみるか。
俺はそう考えてそのまま荷物をゆっくり抱えるが.....え?
かなり軽い、って言うか。
中身が入っているとは思えないぐらいに軽い。
どうなっているのだこれは。
ガソリンが入っているとは思えないんだが。
考えその場でそのまま開ける事にした。
ガムテープをゆっくり剥がすと。
「.....これは.....」
「.....え.....」
そこには一匹の猫の死骸が入っていた。
心臓に何か刺さっている。
う.....嘘だろ、と思うレベルだ。
夜空は涙を浮かべて去って行く。
俺は直ぐに非通知に折り返し電話した。
『やあ。受け取ってくれたかね。最愛のプレゼントを』
「お前!嫌がらせにも程がある!!!!!」
『君達が幸せになるのは絶対に許されないからね。.....それなりに天罰として受け取ってくれたまえ。.....私がこの場から離れたら早く君達の元に行くよ」
「.....!.....クソッ」
この野郎.....最後の最後まで.....!
と思いながら俺は額に手を添える。
そしてその事件は.....俺達の間で駆け巡り。
噂になった。
だがそれから数日後。
事態は急展開する。
それは何故かと言えば.....。
勇は.....拘置所内のドアノブでタオルで首を吊って自殺した。
まさかと思ったが。
その勇の遺書が残されており。
そんな遺書にはこう書かれていた。
『これが最大の報復です』
と。
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