協力する時が来た

第18話 イスカがそれを恐れる理由

何だこの状況は.....?

俺は一体何故、明日香さんにのし掛かられている!?

思いながら横になってのベッドに潜っている態勢、つまり仰向けになっている俺は目の前の明日香さんを見つめる。

そんな明日香さんは舌舐めずりしながら俺を見ていた。

ふふふ、と言いながら、だ。


「うふふ。これで絶対に逃げれませんね。いっすー先生。全てはこの為にやっていたんですから」


「あ、明日香さん。な、何をする気だ.....!?」


「.....そうですね。もしエッチな事ですって答えたらどうします?」


「.....!」


俺は慌てる。

すると明日香さんは俺の次の行動を見透かした様に、絶叫しても良いですよ?でも起きちゃいますよ皆さん。

それにこんな夜中だと近所迷惑になりますしね、とニヤニヤした。

私ですが襲われたって言いますし、と、だ。


月明かりが俺達をまるで舞踏会の会場の主演の様に照らす光の様な中。

本当に無情な言葉を掛けてくる明日香さん。

俺は.....必死に抵抗する。


「.....明日香さん。取り敢えず本気で落ち着いてくれ。君が何をしているか分かっているか!?.....かなりヤバいぞこれ!」


「もしかして生徒だから?いや。もういっすー先生の生徒じゃ無いんですよ私は。だから何をしても良いんです。ヤバいも何も無いですよ。アハハ」


俺は苦笑いを浮かべながら明日香さんを見つめる。

因みに何故この様な状況になったかって?

それは.....10分ぐらい前に遡る。


明日香さんは来なかったから安心してベッドで安心して寝たその時。

突然ドアが開いた思ったらいきなり襲われた。

どうやらずっと伺っていた様だ。

考えながら俺は目の前の明日香さんを見る。

明日香さんは俺に近付いた。


「ねえ。先生。私は貴方が好きです」


「.....だ、だから?」


「だからその、本気で付き合ってくれませんか」


「.....いや、だからそれは.....」


「一生のお願いです。私は貴方が好きなんですよ」


俺に顔を近付けてくるが本気で抵抗空しい。

逃げれない。

美少女の褐色肌と汗が伝うのが確認で、出来る。

これ本気でマズくね?


俺は心臓がバクバク高鳴っている。

困った今回ばかりは本気で参る。

今度ばかりはチェックメイトかもしれない。


どう考えても良い案は浮かばないし逃げれない。

マジに束縛されている。

思いつつ明日香さんを見ていると吐息をかけてきた。


「.....ねえ。先生。.....このままキスしても良いですか」


「止めてくれ。冗談でも駄目だ。俺は.....お前とはキスは出来ない!」


「.....何でですか?」


「俺は年上で。お前は年下だろ!女子高生だろ!まずいって!」


「でも私は身体はもう大人ですし?.....17歳ですし.....大丈夫です。身体は肉付き良いんですよ?これでも」


良くない!17才だったらギリギリのボーダーラインだろう!?

20歳以上じゃないんだから当たり前だが犯罪だ!

これは家庭教師とかの問題じゃ無く、だ!

誰か助けに来てくれ!


「.....いっすー先生。覚悟して下さい。私、もう我慢出来ないですから。.....全てにおいて」


「本気でエッチだなお前!でもお前が良くても俺は良くない!駄目だ!絶対に駄目だからな!」


俺は明日香さんの肩をようやっと掴んだ。

そしてそのまま下に降ろしての逆回転。

その状態で俺が明日香さんを見下ろす形になった。


俺は.....ジッと明日香さんを見る。

明日香さんは赤くなりながら、やれば出来るじゃ無いですか、とからかう。

真っ赤になる俺。


「大丈夫です。私は何も言いません。警察のお世話になりませんよ」


「そういう問題じゃ無い。こういう事は本当に好きな人と.....」


「貴方がそうですが.....何か問題が?」


「.....」


明日香さんの艶かしい赤い言葉に俺は汗を拭う。

それからベッドから降りた。

このままでは本気で理性を失ってしまう。

明日香さんは俺の腹に手を回した。

抱き締める形だ。

そして俺に顔をくっ付けてくる。


「いっすー先生。私は貴方が好きです。本気の本気で、です。だから誰にも取られたく無いんです。分かる?」


「分かる。心の底から、だ。だけど無理なものは無理だ」


「.....根性無いですね。もう。何でそんなに否定するんですか!?」


「.....まあ.....その」


理由を語る時が来たかな。

俺は誰も好きになっちゃいけない、という事を。

じゃ無いと明日香さんは分からないだろうな。

たまたま.....定森先生の場合は好きになったのだ。

本当なら恋をしたら駄目なのだ、俺は。


「.....俺な。.....これから先もずっと恋をする気は無い。.....怖いんだよ」


「.....何で?」


明日香さんは手を離して目を丸くした。

そうしてから見てくる。

俺はその事に前を見ながら苦笑いで答える。

そうだな、と、だ。


「.....理由は簡単だよ。俺な。.....好きな女友達の女の子に裏切られたんだ」


「.....え?」


そうだな。

あれは確か.....中学1年の時だな。

イジメが酷くなる前だ。


俺自身が.....その。

その女の子を好いていたんだ。

そしたらその女の子が告白して来たんだけど罰ゲーム感覚でやっていたみたいでな。


それで.....デートと偽って俺を呼び出してから.....俺に水を掛けられた。

結局イジメって分かってな。

俺は人を信じれなくなったんだ。

人の思いを踏み躙られたから、な。

心に傷を負ってしまったんだ。


「.....それで恋をしなくなったの?」


「.....そうだ。俺は.....もう怖いから恋をする気は本来なら無いんだ」


「.....そうなんですね」


「御免な。お前の期待も。.....それどころか俺を好いているみんなの期待にも答えれないかもしれないんだ」


「.....じゃあ分かりました」


私、アタックして好きになってもらうの止めます、と俺を放しながらグッと握り拳を両腕で作ってから宣言した。

俺は、!?、と思いながら明日香さんを見る。

明日香さんは.....、私.....好きになるんじゃ無いです。

自然と振り向いてもらいます。

と、語る。


「.....それってどういう.....ってか同じだろ」


「言葉が違うよ。いっすー先生。自然と振り向いてもらうのとアタックして無理矢理好きになってもらう。これってかなり違うから」


「.....いや。だから俺は.....」


「じゃあその怖さを私、取り除きます」


「.....え?」


私の事を好きになってもらう為に.....その怖さを一緒に取り除きます。

と、笑顔で俺に向いてきた。

それから俺の手を握ってくる。

俺はビックリしながら明日香さんを見る。

明日香さんは小さな手を動かしながら俺の手を摩ってきた。


「.....私、無理矢理ならいっすー先生を落とせると思っていました。だけどそれは違うって事に気がついた。.....いっすー先生。一緒に怖さ。取り除こう?」


「.....お前が当時居れば良かったのにな。.....悲しいよ」


「それはもう叶わないけど.....ここからだよ。いっすー先生。アハ」


「義妹にも少しだけ話したけど.....こんだけおおっぴらに話したのはお前が初めてだな。.....有難う。明日香さん。胸の内を色々と話せた」


「いっすー先生は良い人なのに.....何でそんな事をするのか分からないよ。私」


プンスカ怒る明日香さん。

俺はその姿を見ながら.....笑みを浮かべる。

それから.....それに気が付いた様に明日香さんが俺を見てくる。

そして柔和な顔をした。


「.....まあでも実は私もイジメられていました。いっすー先生に話すのが初めてだけど.....」


「.....え?」


「知らなかった?私、電車自殺未遂したの.....イジメが原因だから」


「.....知らなかった。そうなのか」


「はい。私、頭が馬鹿だから.....イジメられていたんです」


俺は愕然としながら話を聞く。

そして明日香さんは寂しそうに俺を見てくる。

お天気キャラだったら.....生き残れないって事を学校で思い知りました。

だから自殺しようと思った。

だけどあの日に貴方が居たんです。

と俺に花咲く様な笑顔を浮かべた明日香さん。


「.....私は.....自殺しなくて済んだ。貴方のお陰で。だからそんな貴方が悩んでいるなら私.....手を貸すのは当たり前ですよね」


「明日香さん.....」


「私はもう元気。だから.....貴方が笑顔になる様に.....動きたいです」


「.....すまないな。弱音を見せてしまって」


「.....それが人間だよ。先生」


明日香さんは俺に対して笑顔を見せた。

それから.....俺の背中を摩りながら月を見る。

今日は良い満月だね、と、だ。


俺は、そうだな、と回答しながら.....空を見上げる。

そして思った。

いつか語れるだろうか。

俺の中の全てを、と、だ。


「いっすー先生。寝ましょう」


「.....そうだな。寝るか。お前も寝室に戻ってくれ.....」


「え?戻りませんよ?私ここで寝ます」


「ハァ!?じょ、冗談だろ。俺の寝る場所が無い」


「一緒に寝れば良いじゃ無いでしょ。ね?先生」


何を言ってんだコイツは!?

思って逃げようとしたのだが明日香さんは俺の腕を離さなかった。

それからガバッと毛布を俺に掛ける。


そして明日香さんも潜り込んで俺を見てくる。

えへへ、と、だ。

吐息が近い!胸が当たっている!


これって眠れないだろ!

考えながら明日香さんを見るが。

明日香さんは嬉しそうに俺を見ていた。


「先生には確かにちょっかいは出しませんが.....誘惑するぐらいなら良いかな。えへへ」


「いやいや、明日香さん。勘弁してくれ.....」


「大丈夫です。一緒に寝れば眠れます」


「.....」


まあでも確かにな。

何だかその、ねむ.....ぐう。

夜中に叩き起こされたせいか.....最も簡単に眠ってしまった。


そして朝、夜空に叩き起こされてぶっ叩かれたのは言うまでもない感じだが。

だけど何だか.....その。

何時もよりもずっと爽やかな朝に感じられた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る