第9話 夜空とのお試しデート

合コン場所のカフェ。

その場所に田辺さん、俺、速水、そして.....何故か夜空が居る。

とは言っても司会が居なくなった合コンだが俺は首を傾げながら.....見ていた。


何だかその.....周りに華、と言える状況ではあるがかなり火花が散っている。

田辺さんは目をパチクリしながら.....夜空を見る。

そして、もしかしてこの子が山寺さんの義妹さん?、と聞いてくる。

俺は頷いた。


「そうです。俺の義妹です」


「そうなんだね。.....ふむふむ?」


興味深げに夜空を見つめる田辺さん。

因みに今、佐藤さんと健介はデート中だ。

その為に俺達しか居ないのだが.....速水が手を叩く。


そしてこの様に言ってきた。

夜空ちゃんとイスカ君が次はデートしてきて、と、だ。

え?何で夜空とデート?


「え.....は、速水さん.....」


「良いから。夜空ちゃん。行って来て」


「は、はい」


「.....ちょ、ちょっと待て。どうなっている?何がどうなっているんだ」


詮索しないのー、と速水は頬を膨らませる。

そしてニコニコし始めた。

俺は目をパチクリする。

何だかさっきより気楽になっている感じはするが。

俺はさっきから疑問符ばかりだ。


「.....私はちょっと田辺さんと秘密の話が有るからね。宜しく」


「え?え?.....マジか」


「じゃあ行ってらっしゃい」


速水は俺達を見送る。

そうして俺は何故か夜空とデートをする事になった。

それから.....俺は夜空を見る。

夜空は.....俺をモジモジしながら見上げていた。

何だか雰囲気が違う気がする。


「夜空?どうしたんだ」


「.....な、何でも無いけど.....」


「.....?.....しかしお前がつけて来ていたとはな。どういうつもりだったんだ?」


「.....心配だったから」


「.....何が?」


い、良いから。

と俺から視線を外して髪の毛を整える夜空。

その度にハーブの香りがした。


良い香りだな。

思いつつ、まあ田辺さんと速水が秘密に話すっていうなら仕方が無いか、と考え。

そのまま俺は夜空とデートをし始めた。

予想外の介入だな。


「ね、ねえ。イスカ」


「.....何だ?」


「.....私、綺麗になったでしょ」


「それは確かにな。成長したよなお前も。美人になった」


「え、エヘヘ。有難うね」


本来なら速水と田辺さんとのデート終わる筈だったのだが。

何故か夜空が介入し、デートをしている。

思ったけど夜空とこうして歩くの久々だな。

何処かに連れて行ってやろうか。


「この近くに.....絵の個展を開いている場所が有るんだが.....行ってみるか?」


「そうだね。お兄ちゃんが行きたいなら」


「.....え?お兄ちゃん.....?」


「あ」


夜空は真っ赤に頬を染める。

そして俺から目線を外してから。

ゴホンと咳ばらいをしてから。

俺を見てくる。


「.....お、お兄ちゃんでしょ?.....イスカは」


「.....そ、そうだが.....そんな簡単に呼ばれると.....」


「.....何?何か文句あるの?」


「な、無い」


何だコイツの可愛さは。

俺は赤面を隠す様にしながら歩く。

そうしていると.....目の前に個展会場が見えてきた。

俺は夜空を見る。

夜空は、楽しそうだね、と笑顔を見せる。


「じゃあ行こうか」


「そうだね」


そして俺達は個展会場を見て回る。

その際に.....俺の手のひらをジッと何故か夜空が見ていた。

俺は?を浮かべながらも詮索はせず。

そのまま個展会場から.....カフェに戻って来た。

お試しデート終わりだ。



「イスカ君」


「.....何だ速水?」


「あのね。ちょっと田辺さんと相談したんだけど.....私達、同盟を結ぶ事にしたの。不利が無い様に、ね」


「え?ど、同盟?同盟って何だ.....?」


俺は目を丸くする。

うん。同盟だよ、と、だ。

田辺さんも納得する様に頷く。

すると夜空の手を速水が握ってからニコッとする。


「.....不利が無い様にしないといけないからね。やらないと夜空ちゃんみたいな不利が出るから」


「.....ちょっと待て。同盟って俺の事に関してか?」


「うーん。秘密だよ。アハハ」


「.....!?」


何だか教えてくれない。

だけど.....何だか悪い気はそんなにしなかった。

良く分からないけど、だ。

そうして速水が俺の手を握ってくる。


「女の子同士の秘密だからね」


「.....わ、分かりました」


意味が分からないままだが。

こうして.....合コンは幕を下ろし。

因みに速水とのデートはお預けになった。

色々計画がある様だが。


そのタイミングで健介も戻って来た。

健介は.....茹でだこの様になっており、佐藤さんと結ばれた様だ。

後の.....そうだな。

富樫は拗ねていた。



「同盟ですか?」


「ああ。何だか良く分からん」


「.....それ私も入れるかな.....」


「.....え?」


雪さんの家庭教師をまたやっていると。

その様に雪さんが話してきた。

俺は目をまた瞬きしながら見る。


そうしていると雪さんはハッとした様にしてから。

な、何でも無いです、と首を振った。

コロコロ表情が変わる。


「と、とにかく。お勉強を教えて下さい」


「そ、そうだね。教えるよ」


「この場所とこの場所なんですけど.....」


「あ、ああ」


何だかどんどん凄まじい方向にいっている気がしてならない。

俺は思いつつ.....赤面を隠す様にしながら。

同盟の事を忘れつつ.....雪さんに勉強を教えた。

今は煩悩を掻き消さないと、と思う。


「でも.....そうなんですね。同盟かー」


「.....雪さん?」


「モテモテですね。アハハ」


「も、モテモテなのか?俺.....」


「ですです。アハハ」


何で同盟がモテモテになるのか。

それはちょっと意味が分からなかったが。

でも何だか触れても教えてくれなさそうだったので俺は押し黙った。

それから.....また勉強を3時間教えてから。

そのまま会社に帰宅し、自宅に帰った。



『本当によくやってくれているね。君は』


「大谷さんのお陰です。良い会社ですね」


『僕は特に何もやってないさ。若い社員の君が頑張っているんだ。有難う』


俺はレポートやらの課題をこなしながら。

大谷さんと電話をする。

その大谷さんは嬉しそうだった。

俺も少しだけ嬉しくなる。

本当に幸せになる。


『今の仕事は満足かい?』


「とても充実しています。感謝です」


『そう言ってもらえると嬉しい。私も頑張らなくては、と思うよ』


「アハハ。無理をせずに」


『そうだね』


君の給料を上げておくから。

本当に良く働いてくれている。

有難う、と頭を下げる様にする大谷さん。

俺も、有難う御座います、と感謝の言葉を述べた。


「.....非常に助かります」


『聞いたよ。君は困窮しているそうじゃないか。.....どうかな。もし良かったら担当を増やしてみるかい?係を。更に給与を上げる事も出来るんだが』


「.....有難う御座います。でも今はこれで充実しています。今は.....良いです」


『何かあったら言うんだよ?僕に』


はい。何かありましたら。

では失礼します。

と俺は電話の主に話した。

すると大谷さんは、はい、と電話を切った。

それから俺は天井を見上げる。


「あの時よりかは遥かに幸せだよな」


そう。

親父を.....失った。

そしてイジメを受けたあの日を。

あの日よりかは遥かにマシだよな今が。

と思える。

目を閉じて考えた。


「.....一人前にしないとな。雪さんを。.....こんな優しい会社なんだ。それぐらいは恩返しでしてやらないとな」


そうしていると。

電話が掛かってきた。

その電話の主は.....速水だ。

速水?

俺はスマホに手を伸ばす。


「もしもし?どうした」


『もしもし。ねえイスカ君ってサークル入ってる?』


「.....入って無いぞ。それがどうした」


『一緒にサークル活動しない?』


「どういうサークルだ?」


うん、えっとね。

色々な研究会のサークルだよ、と話した。

俺は見開きながら、時間帯が曖昧になるがそれでも良いなら、と言葉を発する。

エンジョイする気持ちも大切かと思ったのだ。


『あ、有難う。アハハ』


「.....ああ」


『あ、それはそうと夜空ちゃんは大丈夫?』


「アイツは部屋で漫画を読んでいるぞ」


『.....じゃあ大丈夫だね。良かった』


俺はホッとする速水に対して、有難うな。速水。お前のそういう優しい所が俺は好きだ、と話した。

すると速水は、ふぇ?、と言葉を発してから。

数秒間.....途切れた。

え?何これ?


『いきなり何を言うの!もー』


「.....お、おう」


『も、もう。そういう所が.....』


「え?そういう所が.....なんだ?」


俺はその様に聞き返したが。

えっと、何でもない!、と速水は言う。

それから、とにかく待ってるから!、と電話が切れた。

え?


俺は眉を顰めてからスマホを見る。

最近俺って.....女性からこんな扱いばっかりじゃないか?、とも思ってしまった。

俺、何かしたっけ.....?

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