第6話 千佳、迫る

俺の名前は山寺イスカ。

とある女子高生の家庭教師をやっている俺だが.....馬鹿野郎だッ!!!!!

壁に頭をぶつけまくっても良いぐらいに、だ。

本当に馬鹿野郎な事をしてしまった。


その生徒と.....その。

間接キスを、デートの様な事をしてしまった。

今更ながら激しく後悔している。


せ、生徒に手出しをしてはならないというお達しだったのに。

これはいけない、と思いながら翌日。

大学に来た。


「イスカ。どうしたんだ?何だか汗が凄いぞ」


「何でもない.....ぞ。健介」


「.....ふむ?もしやレポートなどが?」


「違う。.....だがその、別の意味で追い詰められているのは事実だな」


「.....???」


俺に対して首を傾げる健介。

ガタイがゴリラの様なのにやけに可愛らしく見える。

俺はその事に苦笑いを浮かべながら.....講義を聞く準備をする。

すると.....速水がやって来た。


「.....」


「.....な、何でしょう」


かなりのしかめっ面になっている。

俺は少しだけ控えめに、は。速水さん?、と聞いた。

すると.....速水は少しだけ嫉妬した様な顔をしてからこんな事を話す。

見ちゃったんだけど、と、だ。

え?な。何をだ。


「あの女の子誰?あの.....黒髪の.....その。コンビニでの。やけに親しかったけど」


「.....」


「.....い、イスカ?お前.....まさか.....」


ドロドロと。

周りの空気が重たくなってきた。

霧がかかる様に、だ。

そして俺も胃痛がしてくる。


な、何で.....速水があの場所に居たってか!!!!?

俺は愕然としながら速水を見る。

そして金属バットを取り出す輩が.....おい!?


「速水。落ち着け。良いか。あの子は.....」


「義妹ちゃんじゃ無いよね。あんな顔じゃ無かった。美人だった」


「速水。落ち着け。それ以上言ったら俺が殺される」


「ふーんだ。殺されたら良いもん」


可愛らしく拗ねた様な顔を見せてから。

髪の毛を弄る速水。

俺は青ざめる。


バールまで取り出す輩が出始めた。

更に錆びた鉄の棒まで。

消火器を持ち始めた馬鹿まで現れた。

何処に置いて有ったんだそれは!!!!!


「良いか。速水。あれは.....そ。そう。親戚の子だ。良いか。俺は.....決してイチャイチャなんかしてない.....」


「そう?でも.....アイスを交換して食べていたよね。親戚の子でも親密なんだ。ふーん.....」


「..........」


何処まで見ていたのか知らないけど。

ヤバい。

地雷を踏まれてしまった。

すると周りが、やってやれ!ぶっ殺せぇ!!!!!、と声がしてバイオ6のゾンビみたく俺に襲い掛かって来た。

落ち着けお前ら!!!!!


「.....お前という奴は.....」


「健介。落ち着け。沈むな」


「俺は悲しいぞ。.....お前だけは味方だと思っていた」


健介はその場を後にしようとする。

俺は、ちょ。待て!健介!せめて俺を助けてからにしてくれぇ!、と絶叫する。

そして教授が来たが。

まるで反逆の様に静まる事は無かった。

教授もあたふたしながら俺達に、落ち着いてぇ、と涙目を見せている。



「酷い目にあった.....」


俺は学食でパンを購入してから小腹を満たそうと外で食べていた。

キャンパスの外で、だ。

そしてスマホを観ていると.....雪さんからメッセージが入ってきた。

俺はビックリしながら周りを見渡してから。

直ぐにメッセージを読む。


(先生。また問題が分からないので教えて下さい)


(あ、ああ。分かった。教えるよ。雪さん)


(はい。有難う御座います。その、先生)


(.....どうした?)


(こ、今度.....参考書を買いたいです。だから.....一緒に買い物に出て下さい)


それは.....友人と一緒に出たらどうだ、とメッセージを送る。

すると、夜空ちゃんも忙しいんです、とメッセージ。

いやその、俺も忙しいんだが。

と思ったが.....むげに断るのもな、と思う。

参考書ぐらいなら良いかな、と思う。


(分かった。でも.....参考書だけだよね?)


(は、はい!参考書だけです!)


(分かった。付き合うよ。教師として)


(あ、有難う御座います!た、楽しみです!)


雪さんは本当に積極的だな。

思いながら成長を見守る自分としては相当に嬉しかった。

そして.....メッセージをにこやかに見ていると。

嬉しそうだね、と声がした。


「さっきぶり」


「は、速水!!!!?」


速水が俺を見ている。

そして横のベンチに腰掛けた。

俺は席を空ける。

そして.....速水を見る。

石鹸の良い香りがした。


「で。また.....親戚の子に?」


「.....そ、そうだな。うん」


「.....怪しいな。親戚の子ってそんなに親密にするものかな?」


「親戚の子だって」


「本当かな.....」


もしかしてだけど生徒さんじゃないの?

と速水は察しの良い事を言う。

俺はギクッとしながら.....、そ。そんな事は無い、と弁解する。

これでバレたらマズい。

かなりマズい。


「まあでもこれ以上.....踏み込んだら怒られそうだから止めるけど。でも.....やり過ぎない様にね。どっちにしても」


「お、おう」


「.....で。その.....」


「な、何だ」


指をくるくる回転させて俺を見てくる速水。

何だ一体.....?

その様に考えながら見ていると。

速水がこの様に言葉を発した。


「私.....合コンの服装、可愛い服装で行く事にした」


「.....そ、そうか?それは良いんじゃないか?振り向いてもらえるだろ。沢山の男子に」


「.....鈍感」


「.....え?今何つった?」


べっつに。

と横をプイッと向く速水。

どん、まで聞こえたが。

その後の言葉が聞こえなかった。

何つったんだよ。


「.....まあ良いけど。.....ねえ」


「.....何だ」


「.....食堂でご飯食べない?.....一緒に」


「何でだよ。俺は一人が好きなんだ。健介以外だと」


「良いから。食べるの」


ムッとした速水。

そして俺は無理矢理、引っ張られた。

そうして連行される形で食堂に向かう。

な、何だってんだよ!?



「食堂って良いよね。色々メニュー有るし。女の子は助かる」


「まあそうだが.....。じゃあ俺は生姜焼き定食でも食べるか」


「流石、ザ・男の子って感じだね」


「お前が無理矢理、連れて来たんだぞ.....」


アハハ。確かにね。

とおちゃらけた感じでニコッと俺を見てくる速水。

俺は、意図が全く分からない、と思いながらオボンを持つ。

すると食堂のおばちゃんが、あれ?恋人同士かい?、と話してきた。

俺は真っ赤になる。


「いえ!違います!」


「え?そうなのかい?.....でもお相手も真っ赤になっているけど.....アハハ。良いわねぇ。若いって」


「.....速水!?」


「.....」


速水は赤面でその場をそそくさと後にした。

俺は???を浮かべながら追う様に食堂のおばちゃんに会釈だけして席に座る。

流石に早めの時間とあって人が少ないな。

これを狙ったのだろうか、速水は。


「で、話があるのか?」


「そう。.....話」


「何の話なんだ?」


「.....私、可愛い?」


「.....いきなりだな。可愛いよ」


その言葉にボッと赤面した速水。

温水でも被った様に、だ。

そして、そ。そうなんだ、と俯いた。


どういう事だ?

そしてもごもごしながら目の前のうどんを見る速水。

意を決して顔を上げる。


「こ、今度.....買い物に一緒に出て」


「.....え?な、何でだ?」


「良いから!付き合って」


「.....それって友人とやれば良いじゃないか」


「.....」


俺の言葉に悲しげな顔をする速水。

その事に、わ。分かった、と俺は慌てて返事をする。

その瞬間、ぱぁっと顔が明るくなる速水。

まるでスロットマシンの様だ。


しかしそれは良いが次から次に忙しいな!

どうなっているんだ!?

考えながらも.....まあ良いか、と思う。


「有難う。.....その、イスカ君」


「.....イスカ君!?」


「うん。だって.....こんなに親密なら下の名前で呼んでも良いでしょ?」


「え!?いやいや!!!!?」


速水はニコニコする。

何でこんなに距離を詰めて来るんだコイツ!?

俺は愕然としながら真っ赤になる。


答えが分からずそのまま飯を食べる羽目になった。

取り合えず.....何だか。

モヤモヤするのだが.....。

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