第19話:救援準備

「そうですか、分かりました。

 チビちゃんが言った事が正しいのなら、国民を助ける事を許可します。

 ですがその確認のためにグレアムが同行するのです。

 グレアムが許可しない限り王国に助けに行く事は許しません」


 全ての話を聞いたシンシアは決断した。

 まずは領主として領民を護る事を最優先にした。

 愛する娘ソフィアが助けに行くことを望んでも、領民が最優先だった。

 だが、ソフィアが幼い頃から努力し目指していた大聖女という目標を、完全に諦めさせることは母としてできなかった。


 その苦悩の狭間で出てきた答えがチビちゃんの縄張り効果のある間の救助だった。

 だがその縄張り効果がどれほどあるのかが分からない。

 正確な縄張り効果が分からなければ、使える日数が分からない。

 チビちゃんの言う事を鵜呑みにもできないし、甘い考えのソフィアの判断に任せきる事もできなかった。


 そこで目付け役に選ばれたのがグレアムだった。

 誰よりもソフィアを愛し大切にするグレアムならば、ソフィアが不利になる判断は絶対にしないというのがシンシアの考えだった。

 そしてその考えは正しかった。

 ソフィアを傷つけた存在、これから傷つける存在を絶対に許さない。

 それがグレアムの揺らぐことのない考えだった。


「チビちゃん、シンシア様の領地に縄張りを主張してくれ。

 属性竜だけでなく、純血種竜や古竜、古代竜だって逃げ出す臭いを付けてくれ」


 ソフィアと一緒に、二人きりでチビちゃんに騎乗できたグレアムはご機嫌だった。

 騎乗できる程度に大きくなった伝説の龍に前後で二人乗りしているのだ。

 ご機嫌にならない方がおかしかった。


「えええええ、そんなことしたら獲物が近づいて来なくなるじゃないか。

 俺様はもう二度と空腹に耐える気などないぞ。

 ソフィアを傷つけた連中を全員喰い殺したら、領地に戻ってくる心算だったんだ。

 あの程度の連中を喰い殺すのなら、これ以上縄張りを主張する必要はない。

 これで十分魔獣を追い返せるぞ」


 チビちゃんは自信満々だった。

 それに気持ちは基本グレアムと一緒だった。

 だがシンシアの気持ちを大切にするかどうかの点で違っていた。

 今後の事もあるので、グレアムはチビちゃんにソフィアの気持ちを理解してもらうべく、説得に努めた。


「チビちゃん、従魔のチビちゃんならソフィアの気持ちが分かるだろう。

 ソフィアは母親であるシンシア様の事をとても大切にしている。

 シンシア様の気持ちを踏み躙ったら、ソフィアが哀しむぞ。

 ここは多少手間や時間がかかっても、領地の安全は完璧にするんだ」


「ちっい、仕方がないな、だったらやってやるよ」

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