第2話 異世界人の番 side テオ

パッと目の前が明るくなり目を細めた。光が静まると目を真ん丸に見開いた女がたっていた。見慣れない洋服でスカートをはいているが膝が見えている。この国では女性が膝を出すことはそうない。ルイに目で合図を送ると『分かっている』というような視線が投げられた。



「あっ……間違えました……」



彼女は手をバタバタさせて顔がどんどん青くなっていた。腕に目をやると何かを呟きながらバックをゴソゴソあさりはじめた。ポカンとしていた周囲も少しざわつき始めた。まだ朝も早い時間だからそれほど人がいないが、彼女の存在が知られてしまうのは何かと都合が悪い。


早く彼女を隠さねば。



「ちょっと失礼」



顔をあげた彼女と目と目があったとき、後ろからガツンと殴られたかのような衝撃がはしった。肩をすくめてプルプル震える姿を見ると、まるで狩りで獲物を仕留めるときのような高揚感がある。ルイが『早くしろ』と目で合図するがちょっとくらいいいだろう。ルイに向いた視線を俺に向けさせたくて唇を奪った。


「んぅっ……」


なんて甘い声なんだろう。


もっとこの声をききたい。


彼女を隠したらまた……



「……合格。」



俺たちの花嫁は彼女しかいない。

騒ぎが大きくなる前に彼女を抱えたルイと共に屋敷へ戻った。




◇◇◇




くたっとしたレイナを彼女のために用意したベットに寝かせると静かに広間に戻った。



「驚きましたね」


俺が戻るとルイが待ちきれないとばかりに話し始めた。


「まさかあんな場所に現れるとはな」

「あの目を丸くして見開いた顔といったら……」

「真っ青になっていたな」


口元を抑えて笑いをこらえるルイを見て自分の顔も緩んでいるんだろうな。


「さて、このあとどうなると思う?」

「そうですね……案外すんなり受け入れるかもしれませんよ?」

「逃げそうじゃないか?」

「逃がしませんよ」


ルイが指をさした先に眠っているレイナがうつる。


「ほんと……お前は悪趣味だな」

「いつでも彼女を愛でたいと思って何が悪いんですか?そんなこというならテオには見せません」

「おい!こら……」

「テオだって離したくないんでしょう?素直じゃないですね」

「俺はのぞきは趣味じゃない」

「覗きじゃありません。見守っているんです。」


ニヤつきながらレイナを見る姿を見たらルイを慕う女たちはどう思うのだろう。


「彼女たちはお友達ですよ」

「お友達ねぇ……」

「レイナは私たちのツガイですから」

「そうだ」


レイナは俺とルイの番だ。この世界に呼ぶ前から決まっている番、ずっとずっと待ちわびた大切な番だ。


レイナには、異世界から迷い込む人間が数十年に一度現れると話したが事実とは少し異なる。実際はこちらの世界から祈りを捧げ、こちらの世界と向こうの世界がつながった時にこちらの世界へ引っ張られてやってくる。


ただ、それができる力を持つものはそうそういない。それこそ数十年に1人いるかいないかだから、異世界人が現れるのも必然的にそうなる。


俺とルイはその力を持っている。


やっと手に入れたレイナを手放す気はさらさらない。



「……テオはどう思います?」

「ん?」

「レイナは処女だと思います?」

「……経験なさそうだが、年齢的にあるんじゃないか?」

「まだ23~24ってとこでしょう?」

「いや……案外もっといってるんじゃね?」

「他の雄を受け入れていたらと思うとムカつきます」

「これからは俺たちだけだろ」

「いろいろ教えて差し上げたいです」

「……」


胡乱げにレイナを見る目が怖い。まだレイナと会ったばかりだしそんなに急ぐ必要もあるまい。


「ケーキでも用意するか」

「それなら今話題の菓子店があるようですよ」


レイナが喜びそうなものを話しているとあっという間に夜も更けていった。


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