生まれつき体が弱く病気がちな少女の、その人生の節目節目に現れる不思議な飲み物、「空っぽラムネ」にまつわるお話。
不思議なお話でした。なかなかひとことで言い表すのは難しいのですけれど、自己肯定感や他者からの承認のようなものをモチーフにした物語。悲劇的な運命のもとに生まれ、自ら命を断つことを考えるまでに追い詰められた少女が、しかしその苦悩を乗り越えて自分の後ろ向きな性格を克服してゆく、という、大まかにはそんな筋のお話です。
特徴的なのはやはり、「空っぽラムネ」という不思議アイテムの存在。結局、それが一体なんであるのか、具体的な正体は明かされていないのですけれど、少なくともお話の中心に大きく食い込んでいる存在には違いありません。
人生の重大な帰路には必ず現れ、そして「幼少期の自分」との対面が可能になる、不思議な飲み物。幻想的なだけでなく非常に象徴的で、しかしそれ以外はあくまで現実の現代社会であるところに、落差のような効果が生まれているように思います。
なかなかに独特の手触りを感じる、不思議な設定の作品でした。