燭台切光忠のお嫁になります。

ふゆう

第一刀 〖僕は君のだよ〗

「僕だけ居れば良いよ」


「僕が君に1番相応しいのに」


「僕はメロンが好きだなぁ」


「他の刀なんて要らないよ、僕だけ居ればいい」




そう呟く彼の声は男の声ではない。


女性の声だ。


本体である体の性別が女性なのだ。


1度本体である女性と話したことがあるが

これが不思議と別人で驚いた。


ゆっくりと、丁寧に話す光と違い、本体である女性は流暢に話しては早口で言葉を繋げる。


声も高くなり大きくハキハキとしている。


「はははは」と、笑う光と違い、その女性は「あっははは!」と豪快に笑う。


「ふふ」と鼻で笑う光ではなくなり「ははっ」と語尾が綺麗に切れる。


そして女性と一通り話終わると「光忠に変わるね」と一瞬の沈黙。


しばらくして「○○ちゃぁ〜ん!」と甘えた声に変わる声に光だ、と感じる。


先程の早口と違いゆっくりと丁寧な口調。


声のトーンも下がりそこで光として話をまた再開させる。


勿論話の内容は〘刀〙であり他の刀の情報をもらうのだが、彼からしたら面白くないらしく定番の言葉を投げかけられる。




「君は僕だけで良いよ」


「僕だけ見てれば良いよ」


「僕だけの物だから」




そうゆっくり話す彼に「うん」と返せば優しく「うん」と返される。


そんな会話をしては毎日彼で満たされる。


いつか本霊である「燭台切光忠を見たい」と言えば彼は悲しそうに口を開く。




「焼けて黒くなったけど見てくれるの?」


「そうだね、いつか君と見たい」


「今は昔ほどかっこよくもないけれど」




そう話す光が好きでたまらない。


人間界に降りる前の天の話をしては彼は「僕はずっと家に1人で居たから」と話す。


今で言う〘引きこもりのコミュ障〙だと言う。


畑を持っていて自給自足生活で補っていたと。


「仲のいい刀はいたの?」と聞くと「からちゃん」と答えた。


全くと言っていい程刀に無知な私はネットで調べては本人に「この刀?」と聞く。


すると「うん、彼は無口だけど真面目だから」と優しく話す。


その「からちゃん」と彼が言った刀の名前は〘大倶利伽羅〙と言う色黒のキャラデザの人物だった。


「見た目このままなの?」と聞けば「確かに彼は色黒だね」と笑い私は「へー」と彼を調べる。


けれど他の刀を調べたり「この刀は?」と聞くとまたもや落ち着いた口調で私に問いかける。




「他の刀なんて知らなくていい」


「独り占めしたくなるから」


「誰かと比べたりしなくて良いからね」




延々と言われる言葉に「洗脳されるw」と笑えば「洗脳されればいいのに」と平然と返ってくる。


その言葉に照れてしまい恥ずかしくなって話をはぐらかす。


そんな内容の話を私は今日も彼と〘燭台切光忠〙と話すのだ。




「死ぬまでにたくさん思い出を作ってね、そして天でたくさんその話を僕に聞かせてね」




そう話す彼の言葉で私は「早く天で一緒になりたい」と思っている気持ちが「死ぬまで楽しんで永遠と聞かせてやろう」と生きる力になる事に最近気がついた。


「そうだね」と返せば彼は優しく笑う。


その声は女性で決して低くない。


けれど、確かに彼はそこに居てハッキリとした口調で言うのだ。




「僕が今1番君に仕えている燭台切光忠だ」




と。

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