最終決戦5

「だから何なの? あんたらが私の何かってのは元人格の記憶から分かるけど、それが何って感じ。腹が立つ、単純に。特にあんた。あんたが一番腹が立つ! あんた私の親友だったんでしょ? だからこそ殺したい。まだ奥底であがいてる私の元人格、こいつを完全に消すために」

「そんなことさせない。リディエラちゃんは私が助ける」

 小さくなってからどれだけ力を得ようとも子供のままだったハクラがようやく成長した

 クロハによく似ているが純白で、長く伸びる額の二本角

 その力はもはや鬼神の比ではない

 ここに召喚された全てのリディエラと縁を結んだ者達から力を借りたハクラは、新たな進化を迎えた

 天晴鬼白神(あまはれるきびゃくしん)

 見目麗しく、この世の美を体現したかのような女神

 その美しい体からは常に冷気が出ており、周囲の気温は氷点下まで一気に下がる

 シューと音が鳴る

 そのとたん絶対零度の凍える風が周囲の時間すら止めてしまう

 ハクラとリディエラ以外の時間が完全に止まり、二人だけの時間が流れる

「その体、元の持ち主に返してもらいます」

「出来ると思ってる? おあいにく様」

 二人は戦闘態勢に入り、いきなり見えなくなった

 見えないのは二人だけ時間が加速しているため

 ときおりちらりと姿が見えるが、また見えなくなる

 リディエラはニヤリと笑った

 力は大したことはない

 打ち合っていればすぐに相手の方が体力がなくなるだろうと思った

「ねえハクラ、あなたこの子のこと大好きなんでしょう?」

「分かってるなら早く返して下さい」

「だったら、こうするわね」

 なんとリディエラは突然自分の胸に向けて手をねじり込むと、そこから核を引きずり出した

「ガフッ」

 相当なダメージだろう

 その核をハクラに見せつける

「これ、この子の核よ。これ壊しちゃおっかなぁ」

 リディエラと、悪意のリディエラは既に核が分かれている

 そのためこのような芸当が出来たのだ

 先ほどまでは完全に分裂してはいなかったが、ハクラと打ち合っている間に本来のリディエラを分離した

「そーれ」

 ビキッと核にひびが入る

「やめて!」

 止めるハクラを尻目に、悪意リディエラは、リディエラの核を完全に砕いてしまった

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