悪の花2

 ここがウルの本拠地

 あれだけ探してたのにあっさりじゃない

 フフ、これから姉さんとたくさん悪いことをしよう

 ・・・。違う

 私はそんなことがしたいんじゃない

 僕は

 私は

「こっちよリディエラ」

「うん」

 姉さんが案内してくれる

 ここにはたくさんの悪意が満ちていてすごく心地い

 そんなわけない

 苦しい、助けて

「アウル」

 姉さんは何の変哲もない部屋の扉を開け、中で椅子に座っている男に声をかけた

「来たね生田目。待っていたよ。で、そっちがリディエラだね」

「ええ、あんたがアウル? フフ、私を悪の道に引きずり込んでどうするつもり? 楽しいこと?」

「・・・。そうか、使ったんだね生田目」

「使った。それが正しかったのかは分からないけど、でもこれでアウルの願いは叶う」

「そっか、知ってたんだね」

「ごめんなさい。別に覗こうとは思わなかったんだけど、視えちゃって」

「いいよ別に。君にならばれてもいい」

 何の話をしているのか分からないけど、これから何か楽しいことをするのでしょう?

 ああ楽しみ

 今までいい子ちゃんで抑圧されていた私の悪意はどんどん膨れ上がっている

 それは今にも爆発しそうなほどに

 それなのに私の中の元の私がそれを押しとどめている

 鬱陶しい

 させない!

 僕は悪には染まらない!

「く、ああ! 姉さん、僕は」

 左目から涙が流れる

「あ、う、リディエラ・・・」

 姉さんは本当はこんなことをしたくないんだ

 だから今も悲しそうな顔で僕を見ている

「っち、邪魔よ!」

 こいつまだ私を抑え込もうとしてる

 なんて意思の強い

 でも私が主導権を握ってる今、こいつに体を取り戻させない

 暗闇に、沈みなさい!

「あぐ、ハアハア、ねえ、早く、悪いことしましょう」


 二人は驚いた

 リディエラの肌が褐色に染まり、目は赤く、髪の色は金から深淵のような黒に変わっていた

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