大勇者と悪意6

 二時間後

 テンは目を泣きはらし、ゆっくりと洞窟から出てきた

「トト様、死んじゃった」

「そうか・・・」

「トト様、俺の大事な、トト様が! ぐすっ、うぐ、ううううう、うああああああああん!!」

 大泣きし始めたテン

 先ほどまで洞窟内で泣いていたため声はかすれている

 そんなテンをアイシスはそっと抱き寄せた

「大丈夫だ。これからは俺が家族になってやる! 大丈夫だからな、な」

 アイシスの服が涙と鼻水でぐしょぐしょになった頃、テンは眠りについてしまった

 彼女の父親の遺言通り、テン、本名カテンを連れて行くことにしたアイシス

 彼女は天人最後の生き残り

 その力は大神ですら凌ぐと言われているとんでもない血族だ

「アン、この子の面倒を頼めるか?」

「うん大丈夫、どこか行くの?」

「ああちょっとな」

 アイシスは今しがた何かがこの世界に来た気配を察知した

 それは段々とこちらに近づいてきている

 アンやカテンでは気づけないほどに気配を隠すのが上手いようだが、警戒していたアイシスには分かった

「大丈夫?」

「ああ、必ず戻るからカテンを頼んだ」

「うん、気を付けて」

 アイシスは走り出した

 そして数キロ離れたところでソレと邂逅する

「気づいていたんだ」

「当り前だろう。どれだけ警戒していると思ってんだ」

 その男は両目とも閉じており、闇を纏っていた

「その気配、闇人に似ているが全然違うな。お前なにもんだ?」

「何って、僕は闇だよ。闇人? ああ、闇から生まれたヒト族か。そんなものと一緒にしないで欲しいな。僕は純粋な闇さ。正確には闇の生き残りって言った方がいいかな? まぁ滅んだあいつらとはまた違うんだけどね」

「まぁお前が何だろうと、その悪意は見過ごせない。カテンをどうするつもりだ?」

「もちろん、僕の作り出す魔物の素体にするのさ」

「素体だぁ?」

「そうさ! いろんな世界に解き放った僕の魔物たち。君も見ただろう?」

 今まで様々な場所で暴れていた巨大な魔物や黒い魔物

 それらは全てこの闇の男が作り出したものだった

 リディエラ達の世界に現れた魔物も同じくこの男の手によるもの

「そうか、お前が」

「フフ、いいねいいねその顔。君もいい素体になりそうだよ。名乗っておこう。僕はダーカー。闇の者にしてアウルの友人さ」

 男の纏った闇がさらに増幅する

 その力たるや、世界が震えるほどだった

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