大勇者と悪意3

「あれ? 何で寝てるんだ?」

 目覚めた少女はキョロキョロと周りを見る

 そして獲物として襲おうとしたアイシスたちを見つけた

「獲物!」

 自分で作ったであろう武器の石斧を探す少女

 しかし危険と判断したアンがそれを隠していたため見つからない

「ない、ないぞ! テンの斧がない!」

「落ち着け、俺たちはお前に危害を加えるつもりはない」

「んが? 喋ってる? 獲物違う? しゃべるやつ食べちゃ駄目ってとと様言ってた」

「とと様? 他に人がいるのか?」

「うん、お前たちどこから来た? テンの住処案内するぞ」

 ぴょんぴょんと飛び跳ねるテンと名乗る少女

 そこで彼女は自分が綺麗になっていることに気づいた

「あれ? 服が綺麗になってる。クンクン、花の匂いがする!」

 洗剤などはないため、洗った後はアイシスが持っていた花の香りの香水を振りかけておいた

 汚れは落ちて綺麗になったため、テンはかなり可愛らしい印象になっている

「なーアイシス、こいつの住処とやら、我も興味がある。行ってみるのじゃ!」

「お前が指図するな。まあ確かに気になるから行ってみるか」

 自分の住処にアイシスたちが来ることを聞き、バモはかなり喜んだ

 聞く限り、彼女以外にここに住んでいるのはそのとと様と呼ばれる男性だけのようだ

 他に知的生命体はいないらしい

「こっちこっち! はやくこい!」

 はしゃぐテンはかなり子供っぽい、というより正真正銘子供だ

 見た目は大人びているが、実年齢は十代前半といったところだろう

「あの山の下だ! テンのとと様最近疲れてるから寝てる。起きれないんだ。だからテンが獲物取ってくる! それをとと様と食べる!」

 山へ向かう道中テンは父親のことを色々と話してくれた

 かなり博識な人物のようで、獲物を取り方や言葉なども彼が教えたらしい

 母親はテンが物心つくより以前にすでにいなかったようだ

 たった二人でこの地に住んでいる

 アイシスは寂しくないのだろうかと思ったが、それは口出しすることではないとも思った。なにせこのテンという少女は天真爛漫で、非常に大切に育てられていたことが分かるからだ

「ついたぞ! ここがテンととと様の住処だ!」

 山肌に掘られた洞穴。小さいが二人が住むには十分な広さがある

 そして中に入ると、かなり温かいことが分かった

「この気温でなぜ洞窟内がこんなにあったかいんだ? 焚火をしていたとしてもこの暖かさはおかしい」

 その疑問は、彼女の父親に会ったことで解決した

 彼らは、既に滅んだと思われていた種族だったからだ

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