悪意を植え付けられた者達3

 二人目、キンバリーナ・ヒュリオン

 キンバリーナはとある世界のとある国、その国の第一王女として生まれた

 優しく末っ子でもあったため可愛がられて育ってきた

 だがある時を境に彼女の境遇は一変する

 国が悪臣によって乗っ取られ、無実の汚名を着せられ王族はみな処刑ということになった

 一番幼かったキンバリーナは捕らえられ、目の前で両親、そして兄たちをむごたらしく殺され、そして心が壊れた

 そんな彼女を凌辱しようと迫る兵たち

 彼らはもともとキンバリーナや王たちをしたっていたはずだった

 しかしその悪臣に嘘を吹きこまれ、キンバリーナを出来るだけ辱めて処刑しようとしていた

 そんな中、彼女の力が目覚めてしまった

 その王国の王族は元々神の血族と言われ、神から人に成った者が作った王国との言い伝えがあり

 世代を重ねるごとに神の力は弱まって行ったものの、キンバリーナは先祖返りのように神力が非常に強かった

 それが命の危機に瀕し、目覚めたのだ

「よくも、よくも、お父様とお母様を、兄様たちを。くくく、許さないっち、あちしはずっと、お前たち人間をよりよく導くため頑張っていたっち。この子もそうありたいと願っていたっち。お前たちは、あちしたちの心を踏みにじった。こんな人間達なんて、滅んでしまえばいい」

 彼女の中にいた王族の始祖、女神が目覚め、心の壊れたキンバリーナと混ざり合い、一柱と一人は一つとなった

 大地は震え、山は燃え、空からは星が降りそそぐ

 一夜にして国どころかその世界がなくなってしまった

 人間も、その他の生物も何もかもが消滅した

「ああ、可哀そうなキンバリーナ。これからはあちしがお前の心になるっち。全部全部、ヒトは全部殺そう」

 女神ヒュリオン

 彼女は上位の女神にして、リディエラの母親であるシルフェインと同じく、自らの神としての力を犠牲に人々を守った大風の女神

 そして彼女はキンバリーナと一つになり、悪女神となった

「いいねぇ君、ねぇ、僕と一緒においでよ」

 そこに声をかけたのがアウル

 アウルはどこからともなく現れるとキンバリーナの手を取り

 キンバリーナもそれに答えた

「あんたからはとびっきりの悪意を感じるっち。元女神たるあちしが本来なら手を取っちゃいけない相手。でもあちしたちの目的のためならたとえそれがとんでもない邪悪でも、使わせてもらうっち」

 アウルに導かれるまま、キンバリーナはウルの五王として迎え入れられた

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