守り人21

 目が覚めたメメナナは自分の肩が丁寧に治療されていることに気づいた

 再生力が強いためもう痛みはない

「目が覚めたのですね。あなたのおかげで我々は救われました」

 横に女性が立っていた

 見た目は二十代前半の美しい女性だが、エルフであったため実年齢は分からない

 その横にいるのは精霊の男性だ

「私達は夫婦なのですが、妻のエリーナがあのオブジェクトに変えられ、私はその妻のオブジェクトの中に閉じ込められていたのです。しかしあなたが助けてくれたおかげでこうして元に戻ることができました。感謝しています」

「気にしなくていいである。勝手にやったことなのであるからして」

 ムクリと起きあがるとメメナナは荷物を肩に背負って出て行こうとした

「待ってください! まだお礼が、街の人々もあなたに感謝しています」

 メメナナはその言葉も無視して外に出る

 そこでその気配にようやく気付いた

 目の前にいるのはかつての主

 しかし

「なるほど、どこの誰だかは知らないであるが、よくできた人形を造るである」

 メメナナは一瞬でそれが主ではないことに気づいた

 そして拳を構える

「街ごと消すつもりであろうな。だがさせぬ、せっかく守った命である。散らさせはしないである!」

 先ほどの戦いでの傷はまだ完全に癒えたわけではない

 だがこの街は自分が守り切った街

 そして自分の傷を治療してくれた感謝

 彼女は街の人々からの感謝を受け取りはしないが、自分がされたことへの恩義は絶対に裏切りたくない

「あの、大丈夫ですか?」

 家から出てきたエルフと精霊の夫婦

「出て来るなである! ここは危険なのである!」

 そこに光が飛んできた

「くぅ! MMNN、間に合うのである!」

 拳でその光を穿った

 光は弾けて消える

 だがその光の一部がメメナナの腹部を深くえぐった

「う、ぐぅ」

 肩の傷のせいであろう、メメナナの拳が上手く発動しなかったのだ

 腹部の傷から大量の血液と内臓らしきものがこぼれる

「これは、まずいであるな」

 こぼれた臓腑を手で納めなおすと拳の力で傷口を塞ぐ

 治ったわけではない。当然内臓も傷ついたままだ

 それでも少しは延命できている

「ここで我は脱落かもしれないである。すまない姉妹たち」

 痛みに耐え、メメナナは拳を空間に固定して空を駆けた

 そしてリルカクローンの後ろに回り込む

 クローンは振り向かない

 そこにさらに拳を固定してメメナナは瞬間移動のように様々な場所に飛び回って拳を固定していった

「さぁ準備はできたである! MMNN、絶空崩拳、満天星拳突き!」

 空間に固定していた幾千万もの拳が一斉にクローンに襲い掛かった

 それらが全弾命中

 だがクローンは涼しい顔だ

「く、そうか、その力で弾いたであるな。しかしそんなことはお見通しなのである!」

 大量の拳の中に紛れるかのように自身の拳を千切って飛ばしていた

 その拳はクローンの防御でも消されることなく、的確にクローンの核たる部分を撃ち抜いていた

 そして砂のように崩れ去るクローン

 しかしやはりメメナナもただでは済まなかった

「ぐふぅ! げぼぉ、ゲホゲホ、くふっ、ふぅふぅ、あ、これ、だめ」

 どさりとメメナナは倒れ込み、意識を失った

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