選ばれた者たち1
アモンは無事仲間を見つけることはできた
だが小さな子供二人が攫われたままである
ビヨンドと名乗った男の正体は分からない
それどころか実を言うと男なのか女なのかも不明だった
フードを常にかぶり、声はまるで合成音声のような機械音がしている
直接会ったエーテたちもその正体を掴めていない
その時交わした会話も、来いだのこっちだだの本当に少ない
「ともかくだよ。私の鑑定にもまったく引っかからないから、あれは得体が知れないよぉ」
困った顔でエーテはため息をつく
マリーの力は時を少しだけ操る力
狙われるのも当然だろう
しかしりえの力は強力だが特に珍しいというわけでもない
ウルの大幹部なら同じような力を持つ者がいる
それなのにりえまで攫われていることにエーテは疑問を持っていた
まだ確信に迫っていないためそのことは自分の胸の内にしまっておく
「レノンナのおかげで転移はできたねぇ。でもここからが正念場ってとこだねぇ」
ここはビヨンドが作り出した世界
一つの世界を創り出すなどそうはいない
創造主という存在がいるが、大体が下位の世界しか作れないのだが、この世界は上位の世界と同じくらいの存在感がある
ビヨンドの正体がますますわからなくなった
「ここは恐らくウルの巣窟だ。気を付けて進もう」
今いる場所は廃墟が連なる街で、そこかしこに生体反応がある
もう見つかっているか、あるいわ囚われている誰かがいるか
エーテはさらに深く周囲を探知してみた
するとどうやらそこにいるのは子供達ということが分かる
「子供だよぉ。たくさんの子供がこの街にいるねぇ」
エーテは子供が好きだ
囚われているなら助け出したいといち早く走り出し、一番近くの廃墟へと乗り込んだ
「助けにきたよぉ!」
壊れかけのドアを開くとそこには信じられない光景があった
「あ、ああ、アアアアアア!! なんてことを! なんでこんなことができるんだ! 許さないぃ!!」
エーテが酷く取り乱し、アモンたちも慌てて中へ入った
そこにあるのは培養液に浸され、体をばらされて辛うじて生きているかのような、いや生かされている子供が浮かんでいる
「なんて酷いの・・・。うっぷ」
子供の内臓を見てレノンナはその場に吐いてしまった
「許せない」
この場にいる全員が怒りに心が満たされていく
今この子供を助け出すことはできない
培養液から出せばすぐさま死んでしまうだろう
「この子を元に戻すには奪われた体が必要だ。多分どこかへ持っていかれているはずだから探そう」
冷静だが静かに怒っているアモン
他の廃墟も見て回ったが、どこも同じような状態だった
子供達がばらされて培養液に浸かっている
エーテの怒りはもはや誰に止めることもできず、その体から金色の風のようなものが吹きあがっていた
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